セーヌ川(読み)セーヌガワ(英語表記)Seine

翻訳|Seine

デジタル大辞泉 「セーヌ川」の意味・読み・例文・類語

セーヌ‐がわ〔‐がは〕【セーヌ川】

Seine》フランス北部を流れる川。長さ780キロ。ラングル準平原に発し、パリを貫流してルアーブルイギリス海峡に注ぐ。

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共同通信ニュース用語解説 「セーヌ川」の解説

セーヌ川

パリを流れ、英仏海峡に注ぐ川。長さ約780キロ。パリ中心部シテ島サンルイ島が浮かぶ。付近にノートルダム大聖堂ルーブル美術館オルセー美術館エッフェル塔などが位置し、パリ観光の中心となっている。遊覧船バトー・ムーシュも有名。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は1991年、ノートルダム大聖堂を含む「セーヌ河岸」を世界遺産に登録した。来年のパリ五輪では、夏季五輪史上初めての競技場外の会場として開会式が実施される。(パリ共同)

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精選版 日本国語大辞典 「セーヌ川」の意味・読み・例文・類語

セーヌ‐がわ‥がは【セーヌ川】

  1. ( セーヌはSeine ) フランス東部のラングル山地に発し、パリ市中を流れて、イギリス海峡に臨むセーヌ湾に注ぐ川。ゆるやかな流れと豊かな水量に恵まれ、他の河川とは運河で結ばれて内陸水路を形成している。全長七七六キロメートル。

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改訂新版 世界大百科事典 「セーヌ川」の意味・わかりやすい解説

セーヌ[川]
Seine

パリ盆地を貫流するフランス第3の長流。全長776km,流域面積7万7800km2。パリ盆地南東部のラングル台地,標高471mの地点に水源をもち,シャティヨネーからシャンパーニュにかけての石灰岩台地を深く刻んで北西に流れる。オーブ川を右岸から合わせると,イル・ド・フランスのケスタに沿って南西に転じ,ケスタを横切るモントローでは左岸からヨンヌ川が合流する。ヨンヌ川は標高700mをこえるモルバン山地から流下するため水位変動が大きく,水力発電も盛んである。ヨンヌ川の影響を受けて,合流点より下流では流量の季節変化があらわれ,パリでは冬から春の融雪期にかけて,セーヌ川沿いの自動車道路が水没することもある。しかしパリ盆地の比較的乾燥した気候と,透水性の高い石灰岩が広く露出する地質を反映して,大きな洪水は生じない。水位が最も下がるのは夏である。イル・ド・フランスに入るとセーヌ川は北西に向きを変え,フォンテンブローの森と小麦の穀倉地帯であるブリ台地を分けてパリに向かう。パリ南東端のシャラントン・ル・ポンでは右岸から最大の支流マルヌ川が合流する。河床標高はパリでわずか26mにまで低下するので,下流側の勾配は著しく小さくなり,オアーズ川との合流点付近から下流部のルーアン周辺にかけては蛇行が最も激しい。また河口からルーアンまでは感潮河川となる。河口のキルブフからはエスチュアリー(三角江)となり,右岸には大貿易港ル・アーブル,左岸には古くからの港町オンフルールが開ける。

 勾配がゆるやかなこと,水量が豊かで安定していることから,セーヌ川は水運に重要な役割を果たし,とくにルーアンからモントローまでは川に並行する運河もつくられて,3000トンまでの船の航行が可能である。パリのやや下流にあるパリ港はフランス第1の河港であり,ルーアン,ル・アーブルも河港としてパリ港に次ぐ重要性をもつ。しかし上流部では,運河によってソーヌ川,ロアール川と結ばれているものの,水門が多く水路も狭いためにその利用価値は限られている。セーヌ川はパリ盆地を東西に貫く交通・エネルギーの大動脈であり,とくにパリとその下流部の諸都市を関連づける上で大きな役割を果たしている。パリとル・アーブルとの間のセーヌ河谷に沿うベルト状の工業地域(自動車・電機・石油化学工業など)の発展がめざましい。またル・アーブルからパリにかけてのセーヌ川沿いにはパイプラインが設置されている。

 パリを中心とするイル・ド・フランスの歴史はセーヌ川と不可分であり,パリはセーヌ川の渡河点であったシテ島を発祥の地としている。中世以来,パリはセーヌ川を航行する積荷船の交易を支配することによって繁栄した。川沿いに並ぶポプラの影を映しておだやかに流れるセーヌ川は,モネやルノアールをはじめとする印象派の画家たちに豊かな画題を提供したばかりでなく,パリに集まる作家や詩人たちにもさまざまな影響を与え,パリ,ひいてはフランスの芸術をはぐくんできた。セーヌ川の左岸と右岸とではパリの都市空間にも大きな違いがある。セーヌ川はパリを構成する最も重要な要素であったし,これからも常にパリを活性化し続けることであろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セーヌ川」の意味・わかりやすい解説

セーヌ川
せーぬがわ
la Seine

フランス北部、同国の心臓部であるイル・ド・フランス地方を潤し、首都パリを貫流するフランスの代表的河川。全長776キロメートルで、ロアール川に次ぐフランス第二の川である(ローヌ川は全長812キロメートル中290キロメートルがスイス領)。流域面積7万8650平方キロメートルは全国土の約7分の1を占める。コート・ドール県のラングル高地の標高471メートル地点に発し、西北流してシャンパーニュ地方の南部を流れる。トロアを経てオーブ川(右岸)をあわせ、西南流してモントロー付近でヨンヌ川(左岸)を合流、西北流してイル・ド・フランスに至る。パリの上流でマルヌ川(右岸)、下流でオアーズ川(右岸)と合流、イル・ド・フランス地方を抜けてノルマンディー地方に入り、ルーアンを経、ル・アーブル(北)とオンフルール(南)の間に大きな三角江(エスチュエール)をつくって、イギリス海峡に臨むセーヌ湾に流れ込む。パリ付近より下流はとくに蛇行(メアンダー)が著しい。

 流域はトロアで標高113メートル、モントローで50メートル、パリで25メートルと緩傾斜で、流量もパリで1、2月毎秒500立方メートル、8月100立方メートルと季節的な違いが大きい。そのため水力資源としては大きな価値をもたないが、水運の大動脈としては重要で、パリまでは4800トン、モントローまでは3200トンの船が遡航(そこう)できる。運河により、ソンム、エスコー(スヘルデ)、ムーズ、ライン、ソーヌ、ロアールの各河川と結ばれ、その水運網はフランスの全河川交通量の3分の1を占める。また、パリ―ル・アーブル間は、自動車、石油化学、セメント工業を中心とする大工業地帯で、近年は公害問題もおこりつつある。1966年トロアの東20キロメートルにセーヌ貯水ダム(水面2300ヘクタール、貯水量2億0500万立方メートル)が完成、セーヌ川の流量の調節や水力発電のほかに、観光やレクリエーションにも利用されている。

 セーヌ川はパリの地形や風景に大きな影響を与えている。南東方向からパリ市に入ったセーヌ川は、中心部をほぼ東から西へ流れ、南西で市外へ流れ出たのち、南北に大きく蛇行する。中心部にはサン・ルイ島とシテ島の両川中島があり、シテ島はパリ発祥の地である。市はセーヌ川を挟んで大きく右岸と左岸に分けられる。両岸と二つの川中島を結ぶ橋の数も多く、河岸は市民や観光客のかっこうの散策地となっている。

[高橋 正]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セーヌ川」の意味・わかりやすい解説

セーヌ川
セーヌがわ
Seine

フランス東部,ラングル高原に発し,パリ盆地をほぼ北西流してイギリス海峡に注ぐ川。全長 776km。コートドール県のほぼ中央,ディジョン北西の標高 471mに発し,シャティヨン山地を刻んで北西流し,肥沃な湿潤シャンパーニュ地方を横切り,トロアからは乾燥シャンパーニュ地方に入って緑地帯を形成し,マルシーでオーブ川と合流。さらに西流してモントローフォーティヨンヌでヨンヌ川と合流して北西に向きを変え,イルドフランス地方に入る。パリ付近で大きく曲流し始め,下流から細長い三角江にかけてのノルマンディー地方では,沿岸にルーアン,ルアーブルなどの工業地帯,港湾都市を形成し,イギリス海峡のセーヌ湾に注ぐ。セーヌ川は全体として落差が少なく,水量も比較的安定しているため,船運に便利で,パリはフランス第1の河港都市となっている。川と並行してオートセーヌ運河が通じるなど,多数の運河,支流によってライン,ロアール両水系などと結ばれ,ヨーロッパ大陸中部の水運網のかなめの一つとなっている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「セーヌ川」の解説

セーヌ川(セーヌがわ)
la Seine

フランス第3の長流。コート・ドール県に発し,フランス北部を北西に流れイギリス海峡に注ぐ。全長776km。19世紀に大規模な河線の改修が行われ,多くの運河が連絡して,セーヌ川を中心とする水路網が完成した。ルーアン,ル・アーヴルとパリ間の舟運は特に活発で,パリ港は活況を呈する。パリをはじめセーヌ川に依存しながら発展した大都市は多い。

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世界大百科事典(旧版)内のセーヌ川の言及

【王政復古】より

…フランス南部からの輸送は,海路ジブラルタル海峡を通ってフランス北西部の海港にいたっていた。パリの場合,セーヌ川は大動脈であり,セーヌの河岸の荷揚量はフランスのどの海港より多かったという。水運のために利用された水路は1830年で8225km,舟は岸をいく馬によってひかれた。…

【パリ】より

…行政上は1市1県で,面積105km2,人口213万(1994)。フランス北部,イギリス海峡に注ぐセーヌ川の河口から直線距離で約170km,イル・ド・フランス地方のパリ盆地の中央,セーヌ川とマルヌ川の合流点の西に広がる。パリ盆地は東西400km,南北350kmで,セーヌ川とその支流が蛇行しながら流れ,古くから水上交通路として利用されてきた。…

※「セーヌ川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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