日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルセー美術館」の意味・わかりやすい解説
オルセー美術館
おるせーびじゅつかん
Musée d'Orsay
フランス、パリ市中央部、ルーブル美術館のセーヌ川斜め対岸に位置する国立美術館。フランスに二月革命が起きた1848年から第一次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)した1914年までの絵画・彫刻・工芸・建築・デザイン・写真などの芸術作品を収集展示している。古代から19世紀前半までのコレクションを誇るルーブル美術館と20世紀の現代美術を対象とするポンピドー・センターの国立近代美術館をつなぐ美術館としての役割を担う。コレクションはルーブル美術館、印象派美術館として親しまれていたジュ・ド・ポーム美術館(現代美術専門に1991年再オープン)、装飾美術館などから集められた。クールベ、マネをはじめとして日本で人気の高いモネやルノワールなどの印象派、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホらの作品が鑑賞できる。「19世紀の都」としてパリが開花させた文化を多面的に紹介し、たとえば、館内に設けられたオペラ座のコーナーには、1875年に竣工(しゅんこう)したシャルル・ガルニエ設計のオペラ座とその界隈(かいわい)の100分の1の模型が展示されている。
美術館の建物自体は、パリで万国博覧会が開催された1900年、トゥールやボルドー方面へ向かう鉄道の起点としてビクトール・ラルーVictor Laloux(1850―1937)が設計した旧国鉄オルセー駅の駅舎を改造したもので、この改造計画は大統領ポンピドーのもとで構想された。開館したのは1986年12月、大統領ミッテランの政権下であった。イタリアの建築家ガエ・アウレンティGae Aulenti(1927―2012)が、元の駅舎の構造や装飾を生かす方針に基づいて内装を担当し、館内の大時計などに駅舎当時のおもかげが残されている。
[吉川節子]
『吉川逸治編『ルーヴルとパリの美術5 オルセー美術館1』『ルーヴルとパリの美術6 オルセー美術館2』(1985/1986・小学館)』▽『丹尾安典ほか編『NHKオルセー美術館』全6巻(1990・日本放送出版協会)』▽『ロバート・ローゼンブラム著、高階秀爾監訳『オルセー美術館の絵画』(1993・中央公論社)』