ロシア・デカダン派の代表的な小説家,詩人。デカダン派のなかでは最年長で,貧困のなかで育ち,30歳を過ぎてから文壇に登場した。本格的な作家活動に入ったのは,長編小説《小悪魔》(1905)が大成功を収めてからである。彼の作品には,現実嫌悪,死への憧れ,悪魔主義,サディズムが見られるが,デカダン派の他の作家よりもはるかに感覚的で,そのために同時代の人々から〈生まれつきのデカダン詩人〉と呼ばれた。詩作品の特徴は,平明さと簡潔さと脚韻の明確さで,ロシア詩史上,重要な地位を占めている。代表作には,短編《毒の園》,戯曲《死の勝利》(ともに1908)などがあるが,《小悪魔》が群を抜いて優れている。十月革命後は忘れ去られ,亡命することもできず,孤立無援と貧窮のうちに死去した。
執筆者:鈴木 晶
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ロシアの小説家、詩人。本名テテールニコフ。ペテルブルグの貧しい職人の子として生まれ、長く貧困と無名に苦しんだのち、長編小説『小悪魔』(1905)で一躍名声を得た。叙述のなかに超現実的な要素とエロティシズムとを取り入れた彼の小説手法には、ロシア散文芸術に伝統的な写実主義を脱しようとする意図がうかがわれる。詩ではあいまいな表現を嫌い、短く簡潔な形式のもとに、内容の象徴性を求めた。自由と美へのあこがれ、性と死の賛美という理想主義と悪魔主義との微妙な混交である彼の作品は、デカダン派の青年たちの人気を博し、象徴主義の代表者として影響力をもったが、革命後、失意のうちに世を去った。詩集のほか、戯曲『死の勝利』(1908)、小説『亡霊の魔術』(1908)が名高い。
[沢崎洋子]
『青山太郎訳『小悪魔』(1972・河出書房新社)』▽『昇曙夢訳『毒の園・死の勝利』(創元文庫)』
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[旧ソ連邦]
かつてロシアでは,A.S.プーシキンが民話に取材して《金のニワトリ》(1834)などを書き,エルショフP.P.Ershovが《せむしの小馬》(1834)を作り,I.A.クルイロフはイソップ風の寓話を,V.M.ガルシンは童話的な寓話を書いたが,いずれも権力に刃向かう声であった。F.K.ソログープは暗い影の多い不思議な小説を作り,L.N.トルストイはおおらかな民話と小品を発表した。革命後の新しい児童文学の父はM.ゴーリキーであったが,彼はとくに子どものものを書かずに,V.V.マヤコーフスキーやS.Ya.マルシャークやK.I.チュコフスキーにその実りをゆずった。…
※「ソログープ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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