ゾーシチェンコ(その他表記)Mikhail Mikhailovich Zoshchenko

改訂新版 世界大百科事典 「ゾーシチェンコ」の意味・わかりやすい解説

ゾーシチェンコ
Mikhail Mikhailovich Zoshchenko
生没年:1895-1958

ソ連邦作家ポルタワの画家の家に生まれ,ペテルブルグ大学法学部に進む。第1次世界大戦に志願,1918年には赤軍にも参加した。除隊後,職を転々とし,21年に短編を発表,〈セラピオン兄弟〉のグループに入った。出世作は《ナザール・イリイチ・シネブリューホフの物語》(1922)で,これはロシア革命後の新旧交替期に貴族にあこがれる矮小な現代版〈ドン・キホーテ〉の物語である。その後も一貫して,ソ連社会のたてまえと本音のギャップ,日常の不合理,小市民的な俗物性庶民の精神的貧しさなどをテーマに,ゆがんだユーモアの鏡に現実を映し出し,20年代の最も人気ある作家となった。《尊敬する市民諸君》(1926),《鶯は何を歌ったか》(1927)などの短編集が有名。作風ゴーゴリ,レスコフの伝統を受けて,〈語り〉とパロディの独特のスタイルに特色がある。30年代には《回春》(1933),《青表紙の本》(1934)などで,科学や歴史のパロディ化を試みたり,《ケレンスキー》(1937)など,伝記物にも手を染めた。43年に発表した森鷗外の《ヰタ・セクスアリス》風の中編《日の出前》(1943)が第2次世界大戦下に物議をかもし,戦後は短編《猿の冒険》(1946)で,〈ソ連社会より動物園の檻の中のほうが暮らしよい〉と託宣を下したために,46年,アフマートワとともに〈ジダーノフ批判〉の槍玉にあがり,ソビエト連邦作家同盟を除名された。スターリン批判後に復権,作品集も大量に出版されて,再評価の気運が高い。
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百科事典マイペディア 「ゾーシチェンコ」の意味・わかりやすい解説

ゾーシチェンコ

ロシア(ソ連)の作家。ポルタワ生れ。庶民感覚に根ざしたユーモア風刺文学の名手で,《シネブリューホフ物語》(1922年)で認められた。俗語を生かした独特の語り口で知られる。第2次大戦後,短編《猿の冒険》がジダーノフから批判され,晩年は不遇だった。

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