タカサゴ(読み)たかさご(英語表記)doublelined fusilier

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タカサゴ」の意味・わかりやすい解説

タカサゴ
たかさご / 高砂
doublelined fusilier
[学] Pterocaesio diagramma

硬骨魚綱スズキ目フエダイ科に属する海水魚。若狭(わかさ)湾以南の日本海沿岸、駿河(するが)湾以南の太平洋沿岸、琉球(りゅうきゅう)列島、台湾などの西太平洋、オーストラリア西岸に分布する。体は長楕円(ちょうだえん)形で、体高はやや低く、体長は体高の3.4倍以上ある。目はやや大きく、吻(ふん)は短い。口は小さく斜位で、眼下幅は狭い。前上顎骨(ぜんじょうがくこつ)に2個の後方突起がある。上下両顎に1列の円錐歯(えんすいし)とその内側に絨毛(じゅうもう)状歯がある。背びれは10棘(きょく)14~16軟条、臀(しり)びれは3棘11~12軟条。背びれと臀びれの基部は鱗(うろこ)をかぶる。背部は体色変化が著しく、水中では緑色~青色であるが、水揚げされると紫赤色になる。腹部は白色~淡紅色。体側には2条の幅広い黄色縦帯がある。上部のものは背面に沿って走り、下部のものは目の上方から背びれ軟条部中央下まで側線下方、そこから側線の上方を走り、尾柄(びへい)後端上部に至る。背びれは赤褐色、ほかのひれは淡紅色。尾びれ両葉の先端にはそれぞれ1個の黒斑(こくはん)がある。最大全長は約30センチメートル。産卵(飼育観察)は5~7月で、1000尾を超える大群が垂直運動し、そのうちの雌雄ペアで行われるが、ペア外の10~15尾の雄もこの産卵に加わる。受精卵は直径約0.8~0.9ミリメートルの分離浮性卵。潮通しのよい沖合いの瀬や離島周辺の深い30~50メートルの層に大群をなして遊泳する。追込み網、刺網(さしあみ)などで漁獲される。淡紅色の肉で淡泊な味をもち、刺身煮つけ焼き物などで広く賞味される。南西諸島では漁民にもっとも愛好される魚の一つで、漁獲量も多く、産業的に重要な魚である。沖縄ではグルクンといい、県を代表する魚に選ばれている。ニセタカサゴに似るが、ニセタカサゴは第2番目の黄色帯が側線上を走ることで、タカサゴと区別できる。

[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年4月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「タカサゴ」の意味・わかりやすい解説

タカサゴ
Caesio chrysozonus

スズメ目フエダイ科の海産魚。従来,タカサゴ属を分けて1科としていたが,科とするほどの違いはないとして,現在はフエダイ科に入れられている。熱帯性で,西部太平洋からインド洋に広く分布する。南日本で見られるが,伊豆諸島,小笠原,沖縄に多く,沖縄ではグルクンの名で親しまれ,県魚に指定されている。追込網の主対象である。タカサゴは東京,小田原の呼名であるが,ハナムロ(紀伊,長崎),アカムロ(高知,紀伊)などの名もあるように,ムロアジを思わせる体型だが,もう少し太い。腹部,各ひれが薄く赤みを帯びる。尾びれは深く二叉し,先端が黒い。薄青い地に2本の金色の縦帯が体側を走る。島のまわりの潮通しのよい水深30m前後のところにすむ。プランクトン食性。全長30cmに達する。春生れの稚魚は夏に10cmくらいになるが,この大きさのものはカツオ釣りの活餌に使われる。
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