日本大百科全書(ニッポニカ) 「たたり」の意味・わかりやすい解説
たたり
たたり / 祟り
神仏や怨霊(おんりょう)などが人の行動に対して禍(わざわい)をもたらすことをいう。かかる禍をなす神をたたり神といっている。一般に神に対して不敬な行動をすればそのたたりを受けるものとされている。全国各地の山間などに、たたり地、くせ地といわれている場所があり、そこへ入るとたたりを受けるとされている。千葉県君津郡亀山村(現袖(そで)ヶ浦(うら)町)に、くせ山という地があり、それを所有すると死人が絶えないといって、買い手がつかないという。埼玉県や東京都の山間に、いはい山という地があり、その形が位牌(いはい)の形をしているので、その山を所有したり、木を切ったりすると家に死人が出るという。山のみでなく田んぼにもその例がある。信州(長野県)には、やんまい田、くせ田というのがあり、その田を所有したり、耕作したりすると家に死人が出るという。また山には山の神や天狗(てんぐ)の遊び場といわれる地があり、そこへ人が入るとたたりがあるとして警戒されている。
また老樹がたたったという伝説が各地にある。本来、神が神木といわれる木に天降(あまくだ)るのがたたりであった。長野県上伊那(かみいな)郡南箕輪(みなみみのわ)村に霊松(れいしょう)といわれる老一本松がある。土地の人の話によると、昔この木を切ろうとして斧(おの)を当てたところ切り口から血が流れ出て、村に災害異変が起きたので、切るのを中止し、そこに小祠(しょうし)を建てて祀(まつ)ったという。岐阜県高山市中切(なかぎり)町に、おいの木という欅(けやき)の名木があり、それを切ろうとしたら血が流れ出たので中止してしまったという伝説が語られている。
たたり神としてよく知られているのに金神(こんじん)がある。これは屋敷神として祀られているが、方位にやかましい神で、それを犯すとかならずたたりがあるとされている。また氏神など本宮に対してその御子神(みこがみ)を若宮として祀っているが、この若宮には人にたたる話が多い。水神のたたりもよくあり、これは子供に及ぶことがある。そのほか、ヘビやキツネなど動物のたたりを受けることもあり、法師や易者にみてもらったりすることがある。
[大藤時彦]