フランス出身の画家でシュルレアリスムを代表する一人。1月5日パリに生まれ、幼年期をブルターニュ地方で過ごし、10代で船員として各地を航海した。その後、兵役を終えて1924年にパリに出るが、画廊で偶然目にしたデ・キリコの形而上(けいじじょう)絵画に衝撃を受け、独学で絵画の道を志した。シュルレアリスムの芸術家との交流を深め、27年に最初の個展をパリで開いて、この運動の一翼を担う有力メンバーとなった。砂漠か海底を連想させる茫洋(ぼうよう)たる無限空間に、奇異な物体が投げ出されて地表に濃い影を投げる幻想的作風を展開した。風化した骨か貝殻の化石に似て有機的な形態をもつこの物体は、現実との対応をもたず、荒涼とした内面の心象風景のなかで増殖を続ける。39年アメリカに移住、42年には市民権を得てこの地の前衛芸術家に影響を与えたが、55年1月15日、最後の大作『孤の増殖』を残してコネティカット州ウッドベリーで没した。
[石崎浩一郎]
シュルレアリスムの代表的な画家。パリに生まれ,幼年時代を北フランスのブルターニュ地方ですごす。船員見習として世界各地を航海したのち,1923年パリでキリコの絵から衝撃をうけ,独学で絵を描きはじめる。茫漠たる空間に心霊的な幻像を精妙に描く。無機的とも有機的ともつかぬ神秘的な画面が特徴。39年第2次大戦の災禍を避けて渡米。コネティカット州ウッドベリーで没。
執筆者:岡田 隆彦
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