チベット語(読み)チベットご(英語表記)Tibetan language

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

チベット語
チベットご
Tibetan language

中国のチベット自治区を中心に,青海,甘粛,四川,雲南の各省およびネパール,ブータン,インドのシッキム州などで約 450万人に話されている言語。一般にチベット語というときは,特にラサ方言を中心とする中央方言をさす。ほかに3つないし4つの方言群が設定されている。ビルマ語と親族関係を有し (→チベット=ビルマ語族 ) ,さらにシナ=チベット語族を形成するとされるが,特に後者に関しては言語学的証明は未確立である。7世紀につくられたチベット文字は,音素文字兼音節文字であり,有頭体と無頭体をもつ。最古の文献は8世紀で,この時代のものを古典チベット語 (古期チベット語) という。現代チベット語 (ラサ方言) は著しい音韻変化を受けたため,正書法と発音が非常に違ったものになっている。現代語では声調の点で高調と低調の音韻的対立が生じているが,古典語の語頭子音の無声・有声の差および接頭辞の有無の差によるもので,この時代には声調は非弁別的なものであった。文法では孤立語的性格が強い。語順は主語-目的語-動詞が普通。語彙面ではサンスクリット語からの借用語が多い。また仏教関係のチベット語文献が多数あり,貴重な文化資料となっている。

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百科事典マイペディアの解説

チベット語【チベットご】

チベット高原とその周辺に分布するチベット人の言語。東は中国四川省,雲南省,西はカシミール北東部,北は青海省,甘粛省,南はブータン,インドのシッキム州,ネパールにわたって用いられる。チベット・ビルマ語派に属する。話し手は300万人。北方インド系文字に基づいて成立したチベット文字により書写され,7世紀以来豊富な文献,特に仏典を伝える。文語・口語の差異,方言差が大きいが,ラサ方言が標準とされる。
→関連項目タイ諸語中国語ビルマ語

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世界大百科事典 第2版の解説

チベットご【チベット語 Tibetan】

中華人民共和国のチベット(西蔵)自治区(主都ラサ),青海省,四川省西部,甘粛省南部,雲南省北部,およびブータン,ネパール,インドのヒマラヤ地帯に分布するチベット族の言語。チベット語(ラサ方言)ではプケェbod skad(ローマ字は原則としてチベット文字によるつづりのローマ字転写)という。プゥbodは〈チベット〉,ケェskadは〈言語〉の意。パキスタンのカシミール地区,バルーチスターン地方のバルティーBalti語もチベット語の方言と認められる。

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大辞林 第三版の解説

チベットご【チベット語】

チベット-ビルマ語派に属する言語。中心はラサ方言。インド文字にならって七世紀頃に作られた左横書き文字体系を今日も用いる。仏教関係に豊富な歴史的文献をもつ。西蔵語。

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世界の主要言語がわかる事典の解説

チベットご【チベット語】

チベット族の言語。中国のチベット自治区・青海(せいかい)省・四川(しせん)省・甘粛(かんしゅく)省・雲南(うんなん)省、ブータン、ネパール、インドのカシミール地方に分布し、話者数は600万人。シナチベット語族チベットビルマ語派に属し、ギャロン語、チャン語などとともにチベット語群を構成するとされる。歴史的には、7世紀にインド系の文字をもとにチベット文字がつくられて仏典のチベット語訳が始められ、9世紀に「チベット大蔵経」の主要部分が成立、その文語が古典チベット語となった。一方、口語はいくつもの方言に分化し、現在はそのうちのラサ方言が標準的とされる。言語的には、声調がある(ない方言もある)、単語は多くが1音節からなる、語順は「主語-目的語-述語」を基本とする、などの特徴をもつ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

チベット語
ちべっとご
Tibetan

チベット地方、カシミール地方、ブータン、ネパールなどに住むチベット人の言語。系統的にはビルマ語などとチベット・ビルマ語族をなすとされる。話し手人口は300万を超え、バルティ語、ラダック語(以上カシミール)、ラサ方言、ツァン方言(以上チベット中部)、アムド方言(中国青海省)、カム方言(中国貴州省南東部)その他数多くの方言に分かれる。文字は、7世紀にインド系文字に倣ってつくられた表音文字であるチベット文字を用い、正書法は現代ラサ方言などの発音とはかなり食い違っているとはいえ、明確な対応関係を示す。『西蔵(チベット)大蔵経』など膨大な文献が残っている。諸方言中、ラサ方言はその中心的なものであり、研究ももっとも進んでいる。以下、ラサ方言について述べる。
 音韻的には八つの母音、日本語などよりかなり数の多い子音を有し、後者のなかには、無声流音や無声鼻音といった比較的珍しい音が含まれる。ただし、3種類ある無声鼻音はそれぞれただ一つの単語(または形態素)にしか出てこない。閉鎖音や破擦音は有気・無気の対立であるが、ほかに有声音を有する方言もある。音節構造は(子音+)母音(+子音もしくは同一母音)であるが、音節末子音の種類は少数に限定されている。アクセントは高低アクセントである。文法的にみると、文節のレベルでは、語順は日本語に酷似している。すなわち、述語が文末にたち、それ以外のものは述語の前にたつが、それらの間には文法的に決まった順序というものは認められない。形容詞はそれが修飾する名詞に後続するが、名詞を修飾する関係節は前にも後ろにもたちうる(若干、形が変異する)。助詞が名詞(句)に後置される点は日本語と同様である。述語の構造はさして複雑ではないが、用いられる助動詞のたぐいの意味はかなりむずかしい。これまた日本語に似て終助詞のたぐいがかなり豊富である。名詞は一音節語、二音節語が基本であり、動詞は複合語を除いて一音節語幹である。敬語が発達しており、名詞についてはその一部に存在するだけであるが、動詞については原則としてどの動詞にも対応する敬語動詞が存在する(ただしその多くは複合語となる)。日本語と異なり、話し相手を含む集団の行為を表す場合には、その集団に話し手本人が含まれていても、敬語表現を用いることが可能である。なお、チベット語をいわゆる能格言語に数える人がいるが、少なくとも現代ラサ方言に関する限り、それは皮相な見方である。[湯川恭敏]

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世界大百科事典内のチベット語の言及

【格】より

…第3に,単語を用いるといってよいのか語形変化であるといってよいのか判然としない場合がある。たとえば,チベット語では,〈…の〉を表す場合,名詞が子音または長母音で終わっている場合には単語といえるものがつくが,短母音で終わっている場合には融合長母音に変化することによってそれが表される。kong(彼)→kong gi(彼の);nga(私)→ngää(私の)。…

【シナ・チベット語族】より

…ミャンマーのチン特別地区に住むチン族の言語も動詞は面倒な形態変化や人称接辞をもち,また一部のチン語では口語体と文語体で違った構造を示している。漢語(中国語)は殷・周時代までさかのぼる記録をもつが,それ以外はチベット語が7世紀,ナム語(死語)が8世紀,西夏語(死語)が11世紀,ビルマ語が12世紀,シャム・ラオス語が13世紀までさかのぼれるのみで,ほとんどの言語は20世紀に入って文字言語となった。言葉の実態と歴史がよくわからなかったのが大きな原因となって,この語族の比較研究はなかなか進展しなかったが,最近は種々の報告が公にされ,研究が著しく進んだ。…

【チベット・ビルマ語派】より

…漢字で蔵緬語派と書く。
[分類]
 シナ・チベット(漢蔵)語族に属し,数個の語群,さらに語系に細分されるが,その分類にはまだ定説がない。かりに五つの語群と下位語系に分類し,代表言語とおもな分布地を以下にあげる。…

※「チベット語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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