文法用語。一まとまりの意味を表す2文節以上の連接において,一方が他方に従属しつつその意味内容をいい定めているとき,前者は後者を〈修飾する〉といい,前者を修飾語,後者を被修飾語という。言語によっては,修飾語が後行する場合もあるが,日本語では修飾語は常に被修飾語に先行する。日本語の修飾語のうち,体言を修飾するものを連体修飾語,体言以外(おもに用言)を修飾するものを連用修飾語とよぶ。
連体修飾関係において,〈黒き(瞳)〉〈悲しむ(人)〉などは〈瞳黒し〉〈人悲しむ〉という叙述を一つの観念に凝縮したもので,〈黒き〉〈悲しむ〉という修飾語は,被修飾語の性質状態を記述説明している。〈私の(父)〉〈作家(志賀直哉)〉などの場合もこれに準じうる。しかし〈ある(人)〉〈この(本)〉などの修飾語は被修飾語の体言を外面的に特定化するのみであって,ここに用いられる連体詞なるものは連体修飾語たることを唯一の機能とする品詞である。
一方,連用修飾語たることを本来の機能とする品詞は副詞であるが,そのうち〈ゆっくり(歩く)〉などの状態副詞は,連用修飾語として用いられた形容詞・形容動詞(各副詞形),動詞(+助動詞・助詞)などと同様に,自らある性質・状態を表して,被修飾語である動詞の動作の様態を説明する。これに対し〈はなはだ(美しい)〉〈もっと(ゆっくり)〉などの程度副詞は,被修飾語の表す性質・状態の程度を示す。
このほかに動詞による叙述の意味を完全ならしめるものとして説かれる補語または述詞predicative(〈(This is)a book.〉〈(顔)サルに(似る)〉)のたぐいや,また動詞の表す動作・作用の及ぶ対象を表すものとして説かれる目的語〈手紙を(書く)〉の類も,以上に述べた連用修飾語の類と厳密に区別することは,日本語の場合ことに,形態的にも機能的にも無理であって,要するにこれらは用言の意味内容を詳しくして,その叙述の明確化を助けるものとして,すべて広義の補足語とすることができ,連用修飾語として一括しうるものである。この意味では,いわゆる主語(主語・述語)もまた述語に対して連用修飾語の位置に立つといいうる。さらにまた,句がいわゆる条件の接続をなすとき,原因,理由,条件などを示して後件の句に従属する前件の句は,やはり連用修飾語(部)である。この接続関係を明らかならしめるものとして用いられる接続詞なるものも,上の句(文)の意味を受けて下の句(文)の意味を修飾するものとして,連用修飾語の一種とも考えられる(接続副詞とよぶことがある)。これまではいずれも述語の用言の実質的な意味内容を修飾するものであるが,これに対して〈けっして(来ない)〉〈たとえ(きても),……〉などは用言に伴う陳述のしかたを規定するもので,これも一種の連用修飾語といえる(陳述副詞とよぶ)。
以上,単語のなかでもっぱら修飾語としてのみ用いられるものを副用語という。またある文節(連文節)が他の文節(連文節)に対して修飾・被修飾の関係(主述関係をふくむ)または対立の関係をもたないとき,これを独立語(部)という。
執筆者:阪倉 篤義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
文の成分の意味を限定して述べるのに用いる語。「ある日」「春の花」「美しい人」のような連体修飾語と、「道に捨てる」「早く起きる」「ゆっくり走る」などの連用修飾語とがある。連体修飾語としては、連体詞、体言+の、形容詞、形容動詞、動詞の連体形があり、連用修飾語には、体言+格助詞、形容詞や形容動詞の連用形、副詞がある。「父が 突然 大声をあげた」の場合、「突然」「大声を」と同じ資格で「父が」も「あげた」を修飾しており、連用修飾語としては同じに扱うべきだという考え方と、「父が」は連用修飾語ではなく、主語として別に扱うべきだとする説とがある。また、連用修飾語には、「兄弟とだけ遊ぶ」「のんびりはできない」のように、副助詞や係助詞が下接する場合や、「突然のできごと」「父との対話」のように、「の」をつけて連体修飾語として用いる場合もある。
[鈴木英夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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