日本大百科全書(ニッポニカ) 「チンゲンサイ」の意味・わかりやすい解説
チンゲンサイ
ちんげんさい / 青梗菜
[学] Brassica rapa L. var. chinensis (L.) Kitam.
Brassica campestris L. var. chinensis (L.) Makino
アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の中国野菜で、ツケナの類。中国読みはチンコンツァイ。別名青茎(青軸)パクチョイ。パクチョイは葉柄が白色だが、本品種は浅い緑色であることから、「青梗(チンコン)」の名がついた。中国では青菜(チンツアイ)ともよばれ、もっとも広く普及している葉菜の一つ。葉は杓子(しゃくし)形で、長さ20~30センチメートル。葉身は倒卵円形で、やや直立、すこし帯粉し、縮れはない。葉柄はやや厚く、基部は茎を抱き、もっとも幅広く、漸次狭まる。花は淡黄色で長さ1.5センチメートル。果実は長さ2~6センチメートルで種子は10~20粒。中国各地で多数の品種があり、生育日数、抽薹(ちゅうだい)の時期、耐寒・耐暑性などに差がある。
代表的な品種は抽薹期によって二月慢、三月慢、四月慢、五月慢、生育が40~50日と短い矮箕青菜(アイチーチンツアイ)、葉色の濃い青帮油菜(チンパンユーツアイ)や黒葉四月慢(ヘイイエスーユエマン)、耐暑性のある黒葉中箕(ヘイイエチュンチー)などがある。一般に零下5℃に耐え、日本では80~100グラムで収穫、周年出荷される。葉身、葉柄とも柔らかく、葉柄は歯切れがよく、あくはない。油炒(いた)めや油に通すと、色合いよく仕上がり、煮くずれしにくい。中国の分析では100グラム中、カロチン0.86ミリグラム、ビタミンB10.25ミリグラム、B20.67ミリグラム、C30ミリグラム、鉄1ミリグラムを含む。
[湯浅浩史 2020年11月13日]
日本の食品成分データベースによると100グラム中、β(ベータ)-カロチン2000マイクログラム、ビタミンB10.03ミリグラム、B20.07ミリグラム、C24ミリグラム、鉄1.1ミリグラム、カリウム260ミリグラム、カルシウム100ミリグラムを含む。
[編集部 2020年11月13日]
文化史
チンゲンサイの基本種はアブラナB. rapa L. var. oleifera DC.(B. campestris L.)で、原産地は従来、地中海地域からパキスタンとされていたが、近年、中国の西南地方の亜高山帯に自生する地豇豆(テイーチヤントウ)がその原種であるとの見解が中国で出されている。蕓苔(ユンタイ)(アブラナの総称)は3世紀の『名医別録』に野菜としてあがるが、カブやカラシナも含めた中国名の葑(フオン)は約3000年前の『詩経』にすでに取り上げられている。アブラナ類の葉を食用とする類は、中国では菘(ソン)とよばれ、3世紀の『呉録』に名がみえ、陶弘景は5世紀に「菜中有菘、最為常食」と書き、当時すでにもっとも重要な野菜であったことが知れる。
[湯浅浩史 2020年11月13日]