抽薹(読み)チュウダイ(その他表記)bolting

デジタル大辞泉 「抽薹」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐だい〔チウ‐〕【抽×薹】

植物の茎が、日照時間温度変化により、急速に伸びること。とうだち。

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精選版 日本国語大辞典 「抽薹」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐だいチウ‥【抽薹】

  1. 〘 名詞 〙 植物で薹(とう)が立つこと。日照時間や温度の変化のために茎が急速に伸びること。

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改訂新版 世界大百科事典 「抽薹」の意味・わかりやすい解説

抽薹 (ちゅうだい)
bolting

ホウレンソウレタスキャベツなどでは,通常,ごく短い茎の上に多数の葉が密生し節間が短いが,生長点部に花芽分化すると,やがて花蕾(からい)をつけた茎(花茎,とう)が伸長し,葉の節間も長くなる。この現象を抽だいといい,〈とう立ち〉ともいう。これが起こると,葉菜類では結球しなかったり,根菜類では根の肥大が停止して,商品価値のあるものを生産できなくなる。しかし種子収穫が目的の採種栽培では,抽だいさせることが必要である。

 花芽が分化しなければ抽だいも起こらないが,花芽の分化に必要な日長,温度条件は種類によって異なる。ダイコンハクサイ,キャベツなどは一定期間低温に遭遇することが必要である(ダイコン,ハクサイは種子のうちから低温に感応するが,キャベツは苗がある程度大きくならないと感応しない)。またホウレンソウなどは長日条件下で,レタスは高温条件下で花芽が分化する。抽だい(花茎の伸長)はいずれも長日で温暖な条件下で促進される。

 一般に,ホウレンソウを春まきすると,生育時期が長日となるために抽だいしやすく,ダイコンやハクサイを春まきすると,春先の低温に感応して花芽が分化し,抽だいしやすい。またキャベツを秋まきし,苗を大きくしすぎると,冬の低温で花芽が分化し,翌春抽だいしてくることがある。しかし,温度や日長に対する反応品種によって著しく異なるので,品種を選ぶことにより,ある程度抽だいを防止できる。例えば,ホウレンソウの春まき栽培では日長が15~16時間にならないと抽だいしない北ヨーロッパの品種が用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「抽薹」の意味・わかりやすい解説

抽薹
ちゅうだい

ロゼット型成長をしていた植物が、日長や温度などの環境刺激に反応して、急速な茎(節間)の伸長成長を始めることで、「とう立ち」ともいう。越年性長日植物に多くみられ、抽薹に伴って花芽形成もおこり、開花に至る。抽薹は、内生の植物ホルモンの量的変化に対応している。ジベレリン投与によって、非誘導条件下で一般に抽薹をおこさせることができる。

[勝見允行]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抽薹」の意味・わかりやすい解説

抽薹
ちゅうだい
bolting; seeding

ロゼット型の短い茎に温度や日照の変化によって催花が起り,同時に節間部が急速に伸長すること。これにより植物の花茎はぬきんでてくる。いわゆる「とうが立つ」現象である。

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世界大百科事典(旧版)内の抽薹の言及

【ロゼット】より

…ふつうは,根出葉を出す短い茎から,花茎が長く伸び出し,花茎には根出葉と異なった形態の葉(茎葉という)をつけるが,葉を全然つけない場合もあり,タンポポのように花梗に頭状花をつけるだけという姿のものもある。越年性の長日草では,冬の間は根出葉だけで過ごし,春になると温度や日長などの環境の変化に応じて,それまで伸長しなかった茎の頂端に花芽が誘導されるいわゆる抽だいboltingによって急速に伸長するようになる。頂芽が花芽になると節の分化が乏しくなるか,まったくなくなってしまい,ロゼットの形状はなくなってしまう。…

※「抽薹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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