ツバキ(椿)(読み)ツバキ

百科事典マイペディア 「ツバキ(椿)」の意味・わかりやすい解説

ツバキ(椿)【ツバキ】

北海道を除く日本全土と中国,朝鮮半島に分布するツバキ科の常緑高木。日本の代表的な花木で,500余りの園芸品種があり,庭木として世界各地でも栽植されている。日本に自生するのは,海岸地方に分布するヤブツバキヤマツバキとも),東北〜北陸地方の多雪地帯の山中にはえるユキツバキ,屋久島などにはえるリンゴツバキヤクシマツバキ)の3系統が知られる。 樹形は一般に円錐形になり,樹皮はなめらかで灰白色,枝は太く多い。葉は柄が短く楕円形,濃緑色光沢があり鋸歯(きょし)は細かい。花期は普通2〜4月だが,早咲は11月から,おそ咲は5月に至る。野生種の花は紅色で半開し,花弁は5〜9枚で,その基部がヤブツバキでは癒合して白色の花糸のおしべと合着しており,ユキツバキでは花弁の癒合している部分が短く,おしべは筒形にならず開き,花糸は黄色である。ヤクシマツバキはヤブツバキに似るが,果実が径5〜7cmと大きい。 園芸品種は室町時代に基礎がつくられ,江戸時代に作出が盛んになったと考えられる。花色に白〜濃紅,また白と紅のたて絞りや斑紋が入ったもの,花型には一重・半八重・八重・千重(せんえ)・牡丹(ぼたん)咲・獅子(しし)咲・二段咲・唐子(からこ)咲・抱(かかえ)咲等があり,これらの花色と花型の組合せで多くの変異がみられる。肥後ツバキはおしべの配列ウメの花に似た一重咲の地方的な品種群。半開小輪の花の〈佗助(わびすけ)〉や花に芳香のある〈有楽(うらく)〉(〈太郎冠者〉とも)は,系統のはっきりしない園芸品種である。近年は中国原産のトウツバキサルウィンツバキとの交雑による品種育成も盛ん。また,外国で同属の異種間交雑によって作出された品種も多い。ツバキの繁殖は実生(みしょう)にもよるが,園芸種では挿木,接木が主。生長は遅いが土質をさほど選ばず,肥沃な半日陰地がよい。観賞用のほか,種子からツバキ油をとり,材は折尺や楽器,農具等にする。
→関連項目指標植物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツバキ(椿)」の意味・わかりやすい解説

ツバキ(椿)
ツバキ
Camellia japonica

ツバキ科の常緑高木または低木。北海道を除く日本各地の,おもに海岸付近の照葉樹林中に自生するヤブツバキC. japonica var. japonicaから改良された園芸品種の総称で,古くから広く各地の庭園に栽植され,明治以降は欧米でも多くの品種がつくられている。母種のヤブツバキは高さ 10mに達する高木となる。葉は互生し,楕円形で両端がとがり,細かい鋸歯があって質厚く,表面に光沢がある。春,枝先に無柄の大きい赤い花を開く。花冠は深く5裂し,多数のおしべは花糸の基部で合着し,単体おしべとなる。花の底部に蜜を分泌し,メジロがこれを吸い受粉の媒介をするので,鳥媒花の例とされる。球形の 蒴果は堅く,成熟すると3つに開裂する。種子から椿油をとる。材は堅く緻密で,農工具の柄,ろくろ細工,印材などに用いられ,また良好な薪炭材である。園芸品種は花が大型で,花の色,斑紋,咲き方,一重,八重,葉の形などにさまざまなものがある。日本海側の山地には近縁の別種ユキツバキ C. rusticanaがあり,背丈が低く花はほぼ平開して,単体おしべの筒も浅い。この種をもととした園芸品種もある。

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