テニス肘(読み)テニスヒジ

  • (運動器系の病気
  • )
  • Tennis elbow
  • テニスひじ〔ひぢ〕
  • テニス肘 Tennis Elbow
  • 外傷を含む

百科事典マイペディアの解説

上腕骨外上顆(じょうか)炎の一般的な呼び方。上腕骨外顆に付着する,手首や指を曲げ伸ばしする働きをする手指筋外筋が,肘や手首の使い過ぎ,とくに反復する同一動作によって慢性炎症を起こすもの。テニスをする人にこの障害が多く見られることから,この名がある。肘関節外側の痛み,とくに前腕をひねるときの痛みが特徴。治療は局所の安静,サポーターなどによる肘の固定,痛みが強いときは消炎鎮痛薬や,副腎皮質ホルモン剤の関節内注射など。
→関連項目ランナーズ・ニー

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 手関節を急速に掌(しょう)(手のひら)側に屈曲(くっきょく)(うなずかせるように曲げる)させるために、前腕伸筋群(ぜんわんしんきんぐん)に力が加わっておこる損傷です。
 テニス肘には、上腕骨外顆部(じょうわんこつがいかぶ)に付着した腱(けん)が損傷を負い、肘の外側が痛むバックハンド・テニス肘(ひじ)(上腕骨外上顆炎(じょうわんこつがいじょうかえん))と、上級者がフォアハンドでトップスピンをかけて打つときに、手関節が急激に掌側に屈曲して前腕屈筋群に力が加わり、上腕内顆部(じょうわんないかぶ)に付着した腱が損傷を負い、肘の内側が痛むフォアハンド・テニス肘(ひじ)(上腕骨内上顆炎(じょうわんこつないじょうかえん))とがあります。
●原因となるテニス以外のスポーツ
 スカッシュ、ラケットボールなどのラケットを使用するスポーツなどでおこります。
[症状]
 バックハンド・テニス肘では肘の外側の隆起に、フォアハンド・テニス肘では肘の内側に痛みがおこります。
 ドアのノブを回したり、握手をしたりすると、痛みが強くなります。
 手関節を背屈(はいくつ)(手のひらを下に向け、上にそらせる)させると、肘の外側の隆起に痛みがおこります。これがテニス肘の特徴です。
 押すと痛む部位が、肘に存在することもあります。(図「テニス肘」
[治療]
 安静を保つために肘にテーピングをし、抗炎症薬や鎮痛薬を内服します。
 最初の数日は肘のアイシング(冷却)を行ない、そのあと温湿布(おんしっぷ)にきりかえます。
 痛みがとれたら肘のストレッチを開始します。
 重症のときは、肘に副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬を数回、注射することもあります。
 テニス肘は治りやすく、治療に手術が必要になるようなことはめったにありません。
[予防]
 テニス肘は、40歳以上の人におこりやすいものです。40歳以上の人は、つぎのような予防策を講じましょう。
●フォームの正しくない人は、正しいフォームを会得する。
●肘や前腕にサポーターやマルチプロテクターを使用する。
ガットをややゆるめにする。
●柄の太い、軽めのラケットを使う。
●弾みの悪い古いボールは使わない。
●テニス後、入浴後にアイシング(冷却)かアイスマッサージを行なう。

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世界大百科事典 第2版の解説

上腕骨外上顆炎のことで,ひじの外側の骨の突出部に付着する伸展筋を中心とした炎症とされている。テニスを愛好する人にみられるのでこの名があるが,40~50歳の家庭の婦人でテニスをしない人にも同じ現象がみられる。ひじの外側を押したら痛い,ひじを伸ばしたままで手首を上に曲げると痛い,中指を抵抗に反して伸ばさせると痛いなどのテストでわかる。テニスではバックハンドストロークやボレーが痛くてできないことがあり,また日常生活では急性期には電話の受話器やコーヒー茶わんすら持てないこともあり,手ぬぐいを絞ったりするときにも痛い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

硬式テニスでバックハンド・ストロークやフォアハンド・ストロークを行うと、腕回外筋と手関節伸筋を強力に使ったり、手関節を伸展位に固定したまま衝撃を受けることによって発症することが多いところからよばれたスポーツ障害の一つである。整形外科学では上腕骨外上顆(がいじょうか)炎といい、上腕骨の外側上顆部を中心とする疼痛(とうつう)や著明な圧痛のあるもののうち、骨折など骨に直接変化のある場合や肘(ちゅう)関節炎による場合を除いたものをいう。

 日常生活では、重い物を持ったりして発症する主婦が多く、40歳代にもっとも多い。硬式テニスの愛好者についても、40歳以上に多くみられる。肘関節の屈伸は比較的楽にできるものの、ポットを持ったり、タオルを絞る動作で疼痛が誘発されるほか、握力も低下する。前腕外側背部や橈(とう)骨手背部にしびれ感や知覚鈍麻がみられることもある。急性、亜急性、慢性に分けられるが、慢性型は職業的にみられ、再発を繰り返す。高年齢者では退行変性も関連している。簡単な装具によって局所の安静を図る保存療法で大部分は治癒するが、再発例も少なくない。少なくとも2、3週間は疼痛の誘因となるような動作を避ける。温熱療法や消炎鎮痛剤も用いられる。難治例には手術療法が行われるが、少ない。

[永井 隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな障害か

 テニス肘とはテニスのストロークを繰り返し行ったことで肘が痛くなる障害で、バックハンドストロークで肘の外側を痛めるバックハンドテニス肘と、フォアハンドストロークで肘の内側を痛めるフォアハンドテニス肘があります。

 どちらもボールがラケットに当たる時の衝撃が、手首を動かす筋肉の肘への付着部に繰り返し加わることによって、微小断裂や損傷を来し発生するものと考えられます。

 前者では手首を背屈する(甲側に曲げる)筋肉がついている上腕骨外側上顆(がいそくじょうか)(肘の外側のでっぱり)に、後者では手首を掌屈(しょうくつ)(手のひら側に曲げる)する筋肉がついている上腕骨内側(ないそく)上顆に発生するため、それぞれ上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎ともいわれます。

 バックハンドテニス肘(上腕骨外側上顆炎)の発生頻度については、若年層で少なく、30代後半から50代に多いことがわかっています。

症状の現れ方

 バックハンドテニス肘ではバックハンドストロークのたびに肘の外側に、フォアハンドテニス肘ではフォアハンドストロークのたびに肘の内側に疼痛が現れます。また、テニス以外の日常生活でも、タオルを絞る、ドアのノブをまわすなどの手首を使う動作のたびに同部位に疼痛が現れます。

検査と診断

 肘の外側または内側に圧痛が認められます。バックハンドテニス肘では手首を背屈させる動きで肘の外側に運動痛を生じます。抵抗を加えた状態で手首を背屈させたり、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げさせると痛みが誘発されます(トムセンテスト、チェアーテスト)。

治療の方法

 症状の程度によっては、局所を安静にするためテニスを完全に休ませます。その一方で、前腕ストレッチング、筋力トレーニング、温熱、低周波、レーザー光線などの理学療法、テニス肘用サポーター、消炎鎮痛薬の内服や外用などを組み合わせて行います。場合によってはステロイドホルモンの局所注射をすることもありますが、急性期にとどめるべきでしょう。

 また、手術については保存療法が無効な際に有効とされています。手術方法としては、伸筋腱起始部解離術、伸筋筋膜切開術、輪状靭帯や関節包の部分切除術、関節内の滑膜切除術などがありますが、成績にはっきりした差は認められていません。

予防対策

 再発予防も含めたテニス肘の予防法としては、ラケットのガットを緩めにするなどのラケットの選択やフォームの改良、前腕のストレッチング、サポーターの活用、テニス後の肘のアイシングなどがあげられます。

加藤 公

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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