芳香族ジカルボン酸の一つ。1,4-ベンゼンジカルボン酸ともよばれる。フタル酸(1,2-ベンゼンジカルボン酸)およびイソフタル酸(1,3-ベンゼンジカルボン酸)はテレフタル酸の異性体である。実験室的には、p(パラ)-キシレンを過マンガン酸カリウム、三酸化クロムなどにより酸化すると得られる。以前は、フタル酸または安息香酸のカリウム塩を二酸化炭素と加圧・加熱するヘンケル法(ドイツのヘンケル社Henkel & Cieが開発)により工業的に製造されていたが、今日では、コバルトなどの重金属触媒を用いるp-キシレンの空気酸化により製造されている。常圧では300℃付近で昇華する。白色の結晶で、水、エタノール(エチルアルコール)にはほとんど溶けず、ベンゼン、エーテルにも溶けないが、アルカリ水溶液には塩を生成して溶解する。テレフタル酸とグリコールのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)は、日本では「テトロン」の商品名で知られ、合成繊維として多量に生産されているほかに、飲料容器用の合成樹脂(ペットボトル)として広く用いられている。また、1価の脂肪族アルコールとのエステルはプラスチックの可塑剤として用いられている。
[廣田 穰]
テレフタル酸
分子式 C8H6O4
分子量 166.1
融点 425℃(封管中)
沸点 -
比重 1.510
解離定数 K1=2.88×10-4
K2=3.47×10-5(25℃)
1,4-benzenedicarboxylic acid.C8H6O4(166.14).p-ジアルキルベンゼンを酢酸溶媒中,酢酸コバルト-酢酸マンガン触媒と促進剤の臭素化合物を用いて液相空気酸化するか,フタル酸のジカリウム塩を高温で異性化させると得られる.白色の結晶.融点425 ℃(封管中).300 ℃ で昇華する.pK1 3.54,pK2 4.46.普通の有機溶媒や水に不溶,熱濃硫酸,ピリジン,ジメチルホルムアミドに可溶.エチレングリコールと縮重合させて,ポリエステル系の合成繊維または樹脂とする.そのほか,高級アルコールエステルは可塑剤に用いられる.LD50 4390 mg/kg(ラット,経口).[CAS 100-21-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…ベンゼン環に2個のカルボキシル基をもつ芳香族ジカルボン酸で,o‐,m‐,p‐の3種の異性体がある。通常フタル酸といえばo‐体をさし,m‐体はイソフタル酸isophthalic acid,p‐体はテレフタル酸terephthalic acidと呼ばれる。
[フタル酸]
融点191℃(封管中)の無色の結晶で,融点付近で脱水されて無水フタル酸を生じる。…
※「テレフタル酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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