ディスプレーデバイス(その他表記)display device

改訂新版 世界大百科事典 「ディスプレーデバイス」の意味・わかりやすい解説

ディスプレーデバイス
display device

文字,数字や図形,画像などを表示(ディスプレー)する働きをもつデバイス(素子,機能部品)の総称ウォッチ電卓の数字表示板,家庭用テレビの受像管コンピューターのデータ表示装置に用いられるディスプレー管などの陰極線管などなじみ深いものをはじめ広く使用されている。

 ディスプレーとは,一般には品物や美術品などを展示することであるが,情報科学や電子工学の分野では人間に特定の情報を表示,伝達することを意味している。情報の表示,伝達の方法には聴覚触覚によることも考えられるが,通常は視覚ディスプレーを意味する。また視覚的情報表示といっても,書籍,新聞などの印刷物や写真などは通常ディスプレーとはいわない。また映画やスライドなどはディスプレーには違いないが,ディスプレーデバイスというときふつうこれらは対象とならない。すなわち,ディスプレーデバイスは通常やや狭義に,原則として電気信号の形になっている情報内容を,直接視覚に訴える形で表示する機能をもつデバイスを意味すると考えられる。

 ディスプレーデバイスの空間的な情報表示の機能は,明暗,色などの光情報の表示と点,線,形状などの位置の情報の表示とが二大要因となる。光情報の表示方式からディスプレーデバイスを大別すると,自発光型(能動型)と光制御型(受動型)とに分かれる。自発光型の例としては,陰極線管の大部分プラズマディスプレー発光ダイオードエレクトロルミネセンス素子など,光制御型としては,ライトバルブ用陰極線管,液晶,エレクトロクロミック素子などがある。また位置情報の表示には,ごく少数の文字・数字表示のものでは各文字を構成する素子それぞれに結線して制御信号を全並列に印加するが,ある程度以上文字数が多いときには,それらを順次切り替えて時分割に制御信号を加える。このような切替え動作をアドレス(表示位置指定)または走査と呼んでいる。陰極線管では蛍光面上を電子ビームによって連続的に走査しているが,液晶や発光ダイオードのように個別の素子を並べたような構成のものでは,各素子への配線接続をスイッチング回路によって順次切り替える。この場合,数字表示専用のものでは,1文字を七つのセグメントで構成し,文字ごとに順次切り替えるが,さらに複雑な文字や図形の表示には,素子を行列状に配列したドット・マトリクス・ディスプレー方式が用いられる。

以下に代表的なデバイスをあげる。

(1)陰極線管 電子銃から放出された電子ビームを,信号によって変化する電界,磁界で制御し,蛍光面に像を描かせるもの。現在,もっとも一般的に使用されている。

(2)プラズマディスプレーパネル 気体中の放電による発光を利用する平板形ディスプレーの総称。現在,実用されているのは,ネオンガス中の放電による赤橙色発光を利用するものであるが,多色化も可能である。

(3)発光ダイオード 半導体のp-n接合に順方向電流を流して注入された少数キャリアの再結合に伴う発光を利用する。小型堅牢で信頼性が高く2V程度の低電圧で明るい発光が得られる。赤がもっとも一般的だが,黄や緑のものも実用化されている。

(4)エレクトロルミネセンス 粉末または薄膜で形成された蛍光体の薄い層を挟む電極間に電圧を加えたときの発光を利用する。数十V程度で交流で明るい橙色の発光が得られる硫化亜鉛とマンガン薄膜による平板ディスプレーが実用化されている。

(5)蛍光表示ディスプレー 酸化物陰極を塗布した細いタングステン線フィラメントからの熱電子を,それに対向して平行に構成されたメッシュ・グリッドおよび蛍光体を塗布した陽極パターンに印加する電圧で制御するものである。電圧は数十Vで,蛍光体は低電圧で明るく光る青緑色の酸化亜鉛がもっとも多く用いられている。

(6)液晶ディスプレー 光制御型(受動型)の代表的なディスプレーデバイスとして,電卓やウォッチをはじめ広く実用化されている。液晶というのは,ある種の有機化合物に見られる現象で,液体状でありながら分子配列が規則的な形態を示す状態のことで,この分子配列の状態が,電界または電流によって変化し,光学的性質がかわる点がディスプレーに応用されている。いろいろな動作モードが知られているが,一般に印加電圧が数V以下と低く,消費電力が抜群に小さいのが特徴である。

(7)エレクトロクロミックディスプレーelectro-chromic display ECDともいう。通電による可逆性の電気化学反応(酸化還元)による着色を利用するもので,液晶と同じく受動型のディスプレーである。記憶表示機能をもち1V程度の低電圧で動作するが,書込み時にかなりのピーク電流が流れる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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