化学式ZnS。2種の結晶形を有するが,それぞれ天然に産し,またその結晶構造を代表する名称となっている。転移点は1020℃で,低温形が立方晶セン亜鉛鉱型,高温形が六方晶ウルツ鉱型である。立方晶はセン亜鉛鉱として天然に産する。硫黄原子が六方最密パッキングをしているとみなされる。格子定数a=5.4093Å(26℃)。Zn,Sともに相手の原子が正四面体配位をしている。Zn-S原子間距離は2.36Å。白色,比重4.08,屈折率2.368。Zn2⁺水溶液に硫化水素を通ずると沈殿する。これを窒素気流中で650℃に加熱して得られる。六方晶はウルツ鉱として天然に産する。硫黄原子が立方最密パッキングをしているとみなされる。a=3.811Å,c=6.234Å。Zn,Sともに相手の原子が正四面体配位をしている。Zn-S原子間距離は2.36Å。白色,比重4.09,屈折率2.356,2.378。電子過剰の真正半導体で,エネルギー帯は368kJ/mol(3.81eV)である。紫外線(335nm以下),陰極線,X線,γ線照射により光を放出し,その波長は添加剤によって変化する。水に対する溶解度の測定値はばらつきが大きいが,だいたい10⁻6~10⁻7g/100g(25℃)となっており,不溶性である。酸には溶ける。700℃以上で酸素と反応すると主としてZnO,SO3を生ずる。白色顔料としてきわめて広く利用される。胃液の酸に溶かされないので,とくに子ども用玩具の塗料に適している。CaS,ZnSeとつくる固溶体に銅,マンガン,銀などを添加したものは,多くの色調の蛍光性あるいはリン光性を示し,蛍光体としてテレビジョンのブラウン管や,蛍光塗料,リン光塗料に用いられる。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
亜鉛の硫化物。天然には閃亜鉛鉱(せんあえんこう)として、またまれにウルツ鉱として産する。硫酸亜鉛水溶液に硫化アンモニウムを加えるか、酢酸酸性亜鉛塩水溶液に硫化水素を通ずると沈殿する。無色の粉末。結晶は2変態があり、低温型(β(ベータ)型)が閃亜鉛鉱型構造で、結合間隔Zn-S 2.35オングストローム、高温型(α(アルファ)型)がウルツ鉱型構造で、結合間隔Zn-S 2.36オングストローム。これらの間の転移温度は1020℃。水にほとんど不溶。新しくつくった沈殿は希無機酸によく溶けるが、古いものは溶けにくくなる。硫化水素を含む水で長時間処理するとコロイドとなって分散する。水を含んだ状態では空気中で徐々に酸化されて硫酸亜鉛を生ずるが、灼熱(しゃくねつ)乾燥すると空気中で安定。
人工でつくったものは粒子が細かく白色顔料として用いられる。とくに硫酸バリウムと混ぜリトポンとしてペンキ、リノリウム、ゴムなどに広く用いられる。また硫化亜鉛に微量のラジウムを加えて広く蛍光体として用いられる。
[中原勝儼]
硫化亜鉛(α型)
ZnS
式量 97.4
融点 1850℃(150気圧)
沸点 ―
比重 4.06
結晶系 六方
溶解度 0.688mg/100mL(水18℃)
ZnS(97.47).天然には,せん亜鉛鉱として産出する.ウルツ鉱としてもまれに産出する.室温では,ウルツ鉱型構造よりもせん亜鉛鉱型構造のほうが安定である.転移温度1020 ℃.亜鉛と硫黄の直接結合または亜鉛塩水溶液に硫化アルカリを加えると得られる.酢酸イオンの存在下で酸性で硫化水素を通じても白色沈殿(無晶形)として得られる.新しい沈殿は希薄な強酸に溶けるが,放置すれば重合して不溶となる.せん亜鉛鉱型は密度4.08 g cm-3.ウルツ鉱型は密度4.09 g cm-3.水にほとんど不溶.空気中で赤熱するとZnOとZnSO4との混合物となり,空気の流通を十分にするとZnOだけが生じる.白色顔料リトポン(ZnSとBaSO4の混合物)の原料や蛍光体として蓄光顔料,夜光塗料,光触媒,殺真菌剤,X線蛍光画面,半導体レーザー結晶材料などに用いられる.[CAS 1314-98-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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