デービー(読み)でーびー(英語表記)Sir Humphry Davy

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

デービー(Sir Humphry Davy)
でーびー
Sir Humphry Davy
(1778―1829)

イギリスの化学者。コーンウォール県ペンザンスに木彫師の子として生まれる。5人の兄弟姉妹のなかの長子であった。弟のジョンJohn Davy(1790―1868)は医師となり、若干の化学上の発見で知られるようになった。
 1794年に父親が死んだために、ハンフリー・デービーは医師のもとへ修業にやらされた。この時期に彼は、のちに有名になった、摩擦の熱だけによって氷を融解させる実験を行った。彼はこの実験から、当時の一般の見解に反して、熱を特殊な物質とみることはできないということを結論した。
 やがて彼は、ベドーズThomas Beddoes(1760―1808)がブリストルに建てた「気体研究所」に助手として勤めるようになった。この研究所は、プリーストリーをはじめとする化学者たちによって当時発見された種々の気体の、治療への応用を研究することを目的としたものであった。ここでのデービーの仕事としては、亜酸化窒素(一酸化二窒素)の生理作用についての発見がある。
 1801年にデービーは、ロンドンに当時創設されたロイヤル・インスティチューションの准教授に任命された。この研究所は自然科学の保護育成を目的とし、ランフォード伯爵が中心となり創設されたものであった。デービーは1年足らずのうちにロイヤル・インスティチューションの教授に昇進した。この職にあった間に、彼は農業における化学の応用に興味をもち、また、皮なめしにオークの樹皮を用いるのにかえて阿仙薬(あせんやく)(インド産のマメ科植物から製した、褐色または暗褐色塊状の薬剤。主成分はカテキン)を用いるようにし、この方法を普及させた。これらの実際的関心を示す仕事に加えてロイヤル・インスティチューション教授時代の彼の重要な仕事として、ボルタが発明した電堆(でんたい)の化学的作用に関する研究がある。なかでも電解によってアルカリ金属を初めて単離した仕事は、とりわけ重要な意義をもつものである。これらの研究の内容を、彼は1806年またその翌1807年、ロイヤル・ソサイエティーのベーカー講義において述べた。さらに1808年には、シェーレが最初に得た塩素が元素であることを明らかにし、塩酸が塩素のほかに水素しか含んでいないことから酸の水素説を提唱した。
 1812年に彼は爵位を与えられ、「卿(きょう)」の称号を得た。この年に結婚し、また、ロイヤル・インスティチューションの教授職を辞したが、ロイヤル・インスティチューションの実験室における仕事はこのあとも続けた。ファラデーがデービーの実験室の助手となったのは、1813年である。
 1815年までの大陸旅行の途次、デービーはパリでヨウ素に関する研究に従事した。彼は当時みいだされたこの新しい物質を塩素と類似の新元素とみなした。しかし、この新元素に関する化学的研究を、当時として完全に成し遂げたのはゲイ・リュサックであった。
 ロンドンに帰るとすぐにデービーは別の方面の研究を依頼された。それは炭坑での爆発を防ぐための研究であった。彼は炎の性質について詳しく調べ、それについて明らかにしたことに基づいて、安全灯をつくった。彼の発明した安全灯は実際に採用されてたいへん役だった。
 1820年に彼はロイヤル・ソサイエティー会長に就任した。しかし、彼の健康はすでにひどく衰えてきていて、脳卒中の発作をおこしたあと、転地療養中の1829年、ジュネーブで50歳で没した。
 デービーの科学的業績のなかでとくに重要で注目すべきものは、1807~1808年にかけての彼の電気化学に関する業績である。当時、両極の間に水しか存在しない場合に、両極にそれぞれ酸とアルカリが出現する現象を説明することができなかった。彼はこの現象が不純物によっておこることを示した。水素で空気をまったく追い出してつくった真空の中で金製の容器を使って実験することによって、そのことをはっきり示した。また、彼は、のちにイオン概念によって説明されるようになる溶液内の物質移動過程を、きわめて多くの巧妙な実験を行って初めて組織的に明らかにした。
 次に、デービーは、金属酸化物と似ている性質をもっている点で注目されてはいたが、これまで金属を単離することはできていなかったアルカリ(アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物)を、強力な電堆による作用を利用して分解することに成功した。カ性カリの表面だけを水にぬらして電流を通じたところ、純粋カリウムの小球を得た。このものは爆発してただちに燃えた。彼が電解によって初めて単離した元素は、カリウム(1807)のほか、ナトリウム(同)、カルシウム(1808)、バリウム(同)、ストロンチウム(同)、マグネシウム(同)である。[山口宙平]

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