翻訳|safety lamp
爆発性のメタンガスが存在する炭鉱の坑内で使用する照明具。蓄電池を腰に携帯し、安全帽に灯部を装着するキャップランプ形安全電灯は電気的、物理的にメタンガスに着火しないように作られていて、明治後期に輸入されて普及、1933年(昭和8)ごろから国産化された。それ以前は揮発油安全灯が使用された。19世紀の初期、イギリスの炭鉱では坑内照明具が着火源となってガス爆発が多発して困っていた。イギリスの化学者デービーはガスの炎の上に目の細かい金網をかざすと、たとえ金網より上に燃焼性のガスが存在していても、網を通してこれに着火することはないという現象を観察し、これに基づいて1815年に、揮発油の炎を金網の筒で包んだ安全灯を発明した。同じころデービーとは独立にクラニーW. R. ClannyやスティーブンソンG. Stephensonらも同様な原理の安全灯を発明した。デービー灯は金網だけを用いていたので照明具としては暗く不十分であったが、クラニー灯は腰ガラスと金網からなり照明具として優れていた。のちにこれをドイツのウルフ社が改良し日本にも導入され、ウルフ灯は安全灯の代名詞のようになった。メタンガスが安全灯の灯内に入ると、ガスの濃度に比例して炎が伸びるので、炎の長さを測ってガス濃度を知ることができる。安全灯は現在照明具としては使用されていないが、簡易可燃性ガス検知器として認められている。
[房村信雄]
炭鉱の坑内で照明に用いられる灯で,メタンガス爆発に対して安全な構造になっているもの。以前は揮発油を燃料とするウルフ安全灯を用いていたが,現在では電気安全灯が広く用いられ,日本では,軽便で光力が強く,つねに顔の向く方向が照らされるので作業上便利なキャップランプcap lamp(帽上電灯)が広く普及している。ウルフ安全灯は,ドイツのウルフC.Wulfによって1883年に考案されたもので,灯内部での燃焼によって発生した熱が,周囲に設けられた金網を通る際に奪われて,外気流の着火温度以下になるように設計されている。キャップランプの主要部分は,小型電球と反射鏡を備えた頭部と蓄電池部とからなる。使用するときは頭部を保安帽の前部に取り付け,蓄電池部をベルトで腰に固定するので両手が自由に使える。最近では,金属鉱山やトンネル掘削作業等においても使用されている。
執筆者:大橋 脩作
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