トランスバール(英語表記)Transvaal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

トランスバール
Transvaal

南アフリカ共和国北東部にかつてあった州。当時の州都はプレトリアドラケンスベルク山脈が東部を南北に走り,その西方はサバナ状の高原(標高 1000~1500m)をなし,気候は快適。バンツー語系諸族が半遊牧生活を送っていたが,1835年からイギリス領ケープ植民地からのボーア人の大移住が始まり,独自のトランスバール共和国を建設。1852年サンド川協定によってイギリスが独立を認めた。しかしその後も宗主権を要求するイギリスと独立を要求するボーア人との間で争いが続いた。1886年ウィットウォーターズランドに金鉱が発見されると,大量のイギリス人が流入,緊張が高まり,1899年に勃発した南アフリカ戦争に敗北して,1902年イギリス領植民地となった。1910年南アフリカ連邦の成立に伴い州となった。高原は農牧業に適し,中南部のヨハネスブルクを中心とするウィットウォーターズランドはアフリカ最大の鉱工業地帯だった。1994年北トランスバール州(→リンポポ州),東トランスバール州(→ムプマランガ州),プレトリア・ウィットウォーターズランド・フェレーニヒンク州(→ハウテン州),および北西州の一部へと分割された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

トランスバール(Transvaal)

南アフリカ共和国南西部にあった州。州都プレトリア。世界有数の鉱石の産地で、金・ウラン・ダイヤモンドなどを産出。19世紀にボーア人が移住し、1852年にトランスバール共和国を建てた地。1993年に北部州(のちにリンポポ州に改称)、ムプマランガ州、ハウテン州、北西州東部に分割された。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

トランスバール

南アフリカ共和国北東部の旧州名。1994年,ノース・ウェスト,リンポポ(2003年までノーザン・プロビンス),ムプマランガに分割された。全般に高原地帯で,南東部にはドラケンスバーグ山脈が走る。世界的な鉱産地帯で,鉱産額は南ア全体の80%以上を占める。ヨハネスバーグを中心とする金鉱をはじめ,ウラン,ダイヤモンド,銅,鉄,石炭などの産出も多い。もとはソト人,ヌデベレ人,ズールー人などが居住していたが,1836年にボーア人の移住が始まり(グレート・トレック),1852年にトランスバール共和国が成立。1877年英国に併合されたが,のち自治権を回復,1886年ウィットウォーターズランドの金鉱の発見により急速に発展。1902年ボーア戦争の結果英領となり,1910年南ア連邦の一州となった。主都プレトリア(ツワネ)は南ア共和国の行政上の首都。ノース・ウェスト州350万9953人,リンポポ州540万4868人,ムプマランガ州403万9939人,ハウテン州1227万2263人(2011)が含まれる。
→関連項目クリューガー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トランスバール
とらんすばーる
Transvaal

南アフリカ共和国北東部の旧州名。1993年の暫定憲法成立により、従来の4州は9州に再編され、トランスバール州は、北部州(2003年リンポポ州と改称)、ムプマランガ州、ハウテン州の3州と北西州の東部地域に4分割された。ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、スワジランド(現、エスワティニ)、クワズールー・ナタール州、自由州に囲まれ、バール川とリンポポ川に挟まれる。面積33万6650平方キロメートル、人口1880万4400で、内訳は白人約287万、黒人約1537万、アジア系19万7100、カラード36万2500(1995)。州都はヨハネスバーグであった。ちなみにヨハネスバーグはトランスバール州4分割後、ハウテン州の州都となっている。
 1835年ケープ植民地でのイギリスによる支配を嫌ったブーア人(オランダ系移民)の一行は内陸に北上(グレート・トレック)し、バール川以北に定着し1852年トランスバール共和国を建国した(サンドリバー協定)。1877年同共和国は一時イギリスに併合されたが、ブーア人はそれに反対し武器をもって立ち上がり独立を回復した(第一次ブーア戦争)。しかし1886年ウィトワーテルスランドに金の大鉱脈が発見されると、ケープ植民地の首相セシル・ローズはその領有のためジェームソン侵入事件(1895)、ついで第二次ブーア戦争(1899~1902)を起こした。ブーア人側はトランスバール共和国大統領クリューガーの下に団結し戦ったが敗れた(フェレーニッヒング条約)。その結果トランスバールはイギリス直轄領となったが、1906年自治政府が認められ、1909年の国民会議で連邦化が決議され、1910年南アフリカ連邦が成立し、その一州に編入された。なお同国民会議で、行政府をトランスバール州、立法府をケープ州(現、西ケープ州など3州および北西州の西部地域)、司法府をオレンジ自由国州(現、自由州)に置くことが決められ、プレトリアが首都となった。南アフリカ連邦成立後も金鉱業は引き続き発展し、とくに第一次世界大戦以降の同国の工業化、第二次世界大戦後のウェストランドでの新鉱脈の発見により、プレトリア・ウィトワーテルスランド・フェレーニッヒング地域(通称PWV)は同国の商工鉱業、金融の中心地となった。とくにヨハネスバーグは鉱業会議所、商工会議所をはじめ高層ビルの建ち並ぶ経済の中心地で、その近郊には同国最大の黒人居住区であったソウェトがある(1993年以降ヨハネスバーグ市の行政区に組み込まれた)。そのほかの主要都市としては、西部の柑橘(かんきつ)類栽培の中心地ゼールスト、リヒテンバーグ、北部の鉱山都市メッシーナ、農牧畜地域のルイス・トリハルト、北部の中心地ポロクワネ(リンポポ州州都。旧名ピーターズバーグ)、東部のネルスプライト(ムプマランガ州州都)、コマティ・ポールトなどがあり、北東部には南アフリカ共和国最大の動物保護区クリューガー国立公園がある。[林 晃史]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

トランスバール

(Transvaal) 南アフリカ共和国北東部の州。州都プレトリア。一九世紀にブーア人が移住・定着して共和国を建設したが、イギリスに併合され、その植民地となる。一九一〇年南アフリカ連邦の一州となり、六一年南アフリカ共和国の一州となった。金・ウラン・ダイヤモンドの世界的産地で、銅・鉄・石炭も産出。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

未必の故意

犯罪事実の発生を積極的には意図しないが、自分の行為からそのような事実が発生するかもしれないと思いながら、あえて実行する場合の心理状態。→故意[補説]作品名別項。→未必の故意...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android