メキシコで主食とされている、トウモロコシの練り粉マサmasaでつくられた丸い煎餅(せんべい)状の食べ物。トルティーリャ、トルティージャともいう。トルティーヤは、スペインでは卵焼きを意味するが、この卵焼きはメキシコではトルティーヤ・デ・ウエボ(卵のトルティーヤ)とよばれる。近ごろは小麦粉製のトルティーヤ・デ・アリナがしだいに多くなってきている。つくり方は、乾燥したトウモロコシの粒を石灰をいれた水に浸し、メタテ(皿状の石臼(いしうす))とマノ(石棒)ですりつぶしマサをつくる。これを両方の手のひらでたたいて、適当な大きさの薄い円盤状にする。これをコマルという平たい土製、または鉄製の鍋(なべ)で軽く焼く。円板状にのばすプレス機も普及していて、大量生産の製品も多い。トルティーヤは、焼きたての温かいものでないと味がおちるため、布に包むか、チキウィテという籠(かご)に入れて保温し、テーブルに出される。食べ方は、パンのようにそのまま食べる方法が基本であるが、ソースなどをつけて食べることもある。薄くて丸い形を利用し、材料を中に巻き込んだり、上にのせたり、二つに折ってはさんだり、ちぎって使ったりもする。これに焼く、煮る、揚げるなどの調理法と多くの材料を組み合わせると、トルティーヤ料理には多くの種類ができる。タコスtacosはその代表的なもので、肉、魚貝類、野菜などなんでも包んで食べる方法である。また、エンチラーダスenchiladasといい、トルティーヤで具を巻き、キャセロール(洋風の蓋(ふた)付き陶製焼き鍋)に並べて、チリ(とうがらし)ソースをかけてオーブンで焼く料理も人気が高い。
[田中伶子]
『繁盛店メニュー戦略編集部編『エスニック料理』(1988・同明舎出版)』▽『『食材図典』(1995・小学館)』▽『主婦の友社編集部編『料理食材大事典』(1996・主婦の友社)』
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