トートロジー(英語表記)tautology

翻訳|tautology

デジタル大辞泉 「トートロジー」の意味・読み・例文・類語

トートロジー(tautology)

同語反復
命題論理で、要素となる命題真偽がいかなるものであっても、常に真となるような論理式恒真式

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精選版 日本国語大辞典 「トートロジー」の意味・読み・例文・類語

トートロジー

〘名〙 (tautology tautologie)
① 同じことを表わすことばの無用な繰り返し。同語反覆。類語反覆。
懐疑告白(1909)〈島村抱月〉中「それを哲学上の標準論に何度持って来てもトートロジーに過ぎない」
論理学の命題論理で、定理となる命題。

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改訂新版 世界大百科事典 「トートロジー」の意味・わかりやすい解説

トートロジー
tautology

同語反復命題ともいう。恒真命題と同じ意味で使われることが多い。ある種の命題(記述文)は,言語外の世界と照合することなしに,文字づらの上から真となることができる。例えば〈父親は男である〉〈地球は太陽よりも小さいか,小さくないかのどちらかだ〉〈もしソクラテス哲学者でありかつソクラテスが刑死したなら,刑死した哲学者が存在する〉等である。こういった命題のうちとくに,その論理構造のゆえに真となるものをトートロジーという。後2者の例がそれにあたる。トートロジーはその性格からして,いかなる情報も言葉の聞き手に与えない。ところで,第2の例がトートロジーであるのは,それが〈Aであるか,Aでないかのどちらかだ〉という型にはまっているからにほかならない。このように,すべてのトートロジーは,それがトートロジーであることを保証する命題の型(論理法則)をもつ。この型を恒真式と呼ぶことがある。

 演繹的推論正当性は,トートロジーの概念によって説明される。すなわち,前提P1P2,……,Pnから結論Cが演繹的に推論されるとは,

 〈(P1かつP2かつ……かつPn)ならばC

という命題全体がトートロジーだということにほかならない。そこで例えばわれわれは,〈ソクラテスが哲学者である〉〈ソクラテスが刑死した〉という二つの前提から,〈刑死した哲学者が存在する〉という結論を演繹的に推論することができる。なお,トートロジーを恒真命題よりさらに狭く解釈して,命題論理の論理構造にもとづいて真となる命題と定義することもある。この場合には,命題がトートロジーか否かを,機械的な計算によって確かめることができる。
命題論理学
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トートロジー」の意味・わかりやすい解説

トートロジー
とーとろじー
tautology 英語
Tautologie ドイツ語
tautologie フランス語

ギリシア語での「同語反復」に由来することばである。正しいことがすぐにわかるような単純な命題のことを「それはトートロジーにすぎない」ということがある。「犬が西向きゃ尾は東」などは、この意味でトートロジーである。

 命題論理では、命題論理の記号と文変項とを連ねてつくった合成文の形式のうち、文変項に代入される文の正しさをどのように決めてもつねに合成文が正しくなるようなものを「トートロジー」という。簡単な例として「A∨(¬A)」をあげることができる。ここで「∨」は選言記号、「¬」は否定記号である。これは伝統的論理学でいう排中律にあたる。トートロジーの形式の実例になる文のことも「トートロジー」とよぶことがある。文変項や論理記号を何回も繰り返すことによりつくられた長い合成文の形式になるとトートロジーであるかどうかが一目ではわからないこともあるが、時間をかけることをいとわなければ、それを決定するための機械的な判定法が存在している。

[吉田夏彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トートロジー」の意味・わかりやすい解説

トートロジー
tautology

文法的には同じ語の無意味な反復をいうが,論理学では,経験的知識の内容とはかかわりなく,必然的に真として成立する命題,ないしその関数関係をいう。常に無条件的に真であるから,恒真式とも呼ばれる。また命題構造としては,主辞に含まれている内容を賓辞がただ析出するだけであるから,分析文とも呼ばれる。トートロジーの論理学的重要性は現代論理学の発展によって認められるようになった。記号論理学は結局,数個のトートロジーの公理式と,これらの公理からほかのトートロジーを導き出すための規則とによって構成された,巨大なトートロジーの体系である。

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世界大百科事典(旧版)内のトートロジーの言及

【命題論理学】より

…しかし実際に彼らが考えていたものは,今日われわれの理解する恒真式にほかならない。なお,恒真式の型にはまっている命題を恒真命題,あるいはトートロジーと呼ぶことがある。述語論理学【坂井 秀寿】。…

※「トートロジー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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