ドレートン(英語表記)Michael Drayton

改訂新版 世界大百科事典 「ドレートン」の意味・わかりやすい解説

ドレートン
Michael Drayton
生没年:1563-1631

イギリス詩人。つねに宮廷に近いところに位置して,時代の感情や思想をたくみな詩句に表現した。《イデア》(1593)はスペンサー牧歌詩に触発された作品。ソネット集《イデアの鏡》(1594)は,理想化された女性への憧憬を14行詩に盛って,当時絶頂期を迎えていたペトラルカ風ソネット大流行の一つの里程標となっている。彼の中期作風は,国王ジェームズ1世が政策的に高揚せしめた愛国心を反映している。大作《ポリオルビオン》(1612,22)は〈うるわしの国イギリス〉の意で,当時のイギリスの美点(と思われるもの)を,地誌的・博物誌的・歴史的視点から,えんえんと歌い続けている。しかし個々のイメージの扱い方には,当時の詩壇の一部に独自な地歩をかためていたジョン・ダンと共通する側面も見られる。反対にベン・ジョンソンの詩風にも共感していたらしく,古いエリザベス朝の感性を表す面も強い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドレートン」の意味・わかりやすい解説

ドレートン
Drayton, Michael

[生]1563. ウォリックシャー,ハーツヒル
[没]1631.12.23. ロンドン
イギリスの詩人。常に実験を重ね,改訂を加えて,ソネット,オード,劇,叙事詩風刺詩,牧歌,宗教詩,書簡詩,哀歌など,各種の作品を試みた。牧歌集『イデア』 Idea (1593) ,ソネット集『イデアの鑑』 Idea's Mirror (94) ,歴史詩『ピアス・ガベストン』 Piers Gaveston (93) ,『マチルダ』 Matilda (94) ,英雄詩『モーティマー物語』 Mortimeriados (96,改訂版『貴族の戦い』 The Barons' Wars) ,好評を博した長編愛国詩『多幸の国』 Polyolbion (1612~22) ,擬英雄詩的おとぎ話『妖精の宮廷』 Nymphidia (27) がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドレートン」の意味・わかりやすい解説

ドレートン
どれーとん
Michael Drayton
(1563―1631)

イギリスの詩人。ウォーリックシャー商家に生まれ、長じてサー・ヘンリー・グッディア家に仕えるが、生涯の多くは不詳。詩集『イデア』(1593)のモデルは主家の娘といわれる。頌歌(しょうか)、ソネット、風刺詩、宗教詩、歴史詩と多方面に及ぶが、祖国の栄誉をたたえる風土記(ふどき)風叙事詩『多幸の国』(1612、13)がとくに知られる。

[玉泉八州男]

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世界大百科事典(旧版)内のドレートンの言及

【エンディミオン】より

…1817年4~11月執筆,18年出版。オウィディウスの《転身物語》,M.ドレートンの《月影の人》(1606)などを材源とするこの詩で,牧者エンディミオンが第1部において夢の中で出会う月の女神シンシアを求めて,地下(第2部),海底(第3部),空(第4部)と彷徨し,最終部で出会う〈インドの少女〉が実はシンシアへと変身する。理想美と現実,想像力と真理との相互関係を寓喩化した作品である。…

※「ドレートン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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