ドンソン(その他表記)Dong-Son

改訂新版 世界大百科事典 「ドンソン」の意味・わかりやすい解説

ドンソン
Dong-Son

ベトナム北部,タンホアの北4km,ソンマ川右岸の支流ハムロン川岸の遺跡。1924-30年にフランス人パジョL.Pajotが調査し,ゴルーベフV.Goloubevがその資料をもとに研究,紹介した。その後,ヤンセO.Janseが3次にわたる発掘調査を行い,大部の報告書を公刊した。遺構としては銅鼓をもつ土坑墓や杭上住居址などが発見され,遺物には青銅器鉄器石器がともに見られた。鏡や貨幣などには中国のものがあり,時代的には戦国時代から後漢に及んでいる。土器には縄蓆(じようせき)文と印文のものがある。それらからみて,この遺跡は紀元前後の数世紀にわたるものと考えられ,この地の初期金属器時代を代表する遺跡である。

 この時期の調査された遺跡が少なかったこともあって,ドンソンの名は東南アジア全体にわたる青銅器~鉄器時代初期の文化に冠せられ,〈ドンソン文化〉と称せられることになった。その特徴を示すものとしては,青銅器類,特にF.ヘーゲルの編年による第Ⅰ型式最古の型式)の銅鼓や靴形斧などがあげられ,さらにそれらの青銅器の共通した装飾文様である鳥人文や鋸歯文,また接線で連続させた円などがあり,これらはインドシナ半島のみならず,中国西南部から島嶼(とうしよ)部までの広範囲に広がっている。しかしながらあまりにも地域的・時代的に広いものを包括したこの文化名称は,調査の進展につれ当然細分化されねばならない。ベトナムではすでに,青銅器文化をフングエンPhung Nguyen,ドンダウDong Dau,ゴームンGo Mun,ドンソンの4期に分割しており,さらにドンソン的な器形・文様の影響は,より後代まで続くと考えられている。〈ドンソン文化〉は文化名称としてより,むしろ様式的なものとしてとらえた方が賢明であろう。なお東南アジアの青銅器の起源については,ハイネ・ゲルデルンの民族移動説以来,諸説あい乱れていまだ決着はついておらず,したがってその年代観もさまざまである。
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百科事典マイペディア 「ドンソン」の意味・わかりやすい解説

ドンソン

ベトナム北部,タンホア北東4kmにある青銅器時代の遺跡。1924年発見。この遺跡を標準として,ドンソン文化を設定。この文化は,前4世紀―前3世紀ごろより,戦国時代(春秋戦国時代),代の中国文化の影響を受けて,インドネシア系の住民が形成したもので,銅鼓,銅斧(どうふ)などに大きな特徴が認められる。

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