フローレンス・ナイチンゲール 英国の看護師。1820年、イタリア生まれ。ウクライナ南部クリミア半島を舞台にした19世紀のクリミア戦争で、負傷兵の手当てに力を尽くし、「クリミアの天使」と呼ばれた。看護分野の初の職業訓練校をロンドンに設立。「近代看護教育の生みの親」とも称される。国際看護師協会は誕生日の5月12日を「国際看護師の日」と定め、日本政府も1990年「看護の日」に制定した。(ロンドン共同)
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スズメ目ヒタキ科の鳥。サヨナキドリと呼ばれることも多い。全長約17cm,全体に褐色のじみな羽色をして尾が強く赤みを帯びる。西ヨーロッパおよび北アフリカから中央アジアに繁殖し,秋・冬季にはアフリカに渡る。落葉広葉樹林や大きな庭園などにすみ,おもに地表付近を移動しながら昆虫をとって食べる。美しい声でさえずることでよく知られ,ヨーロッパの三名鳥の一つに数えられている。ヨーロッパの文学作品に登場することも多い。さえずりは春から初夏にかけて,昼間だけでなく夜にも聞かれる。巣はイバラやイラクサなどの中の地表近くにつくり,4~5個の卵を産む。抱卵は雌だけが行い,育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。近縁種のキタサヨナキドリL.lusciniaは,形態や習性は前種によく似ているが,分布が北方に偏っていて,スカンジナビアの南部および東ヨーロッパから中央アジアにかけて繁殖している。
執筆者:樋口 広芳
中世ドイツの抒情詩で,夜の歌姫ナイチンゲールは愛する若い男女の恋の点景をなしているが,透明で美しい歌声をもつこの恋の使者は古来多くの詩や民謡にうたわれてきた。したがってこの鳥をめぐる伝説も多い。ギリシア神話ではフィロメラあるいはプロクネがナイチンゲールに姿を変えられたという。北欧神話では,フレイヤが長旅に出た夫を慕って探し回ったとき,哀愁をおびた歌をうたって慰めたのは彼女のお気に入りのこの鳥だったという。愛の鳥としてこの鳥との出会いが吉兆とされる一方,民間信仰では〈墓場鳥〉と称されて,死と結びつけられている。南ドイツでは病床にある病人にナイチンゲールは歌をうたいながらおだやかな死をもたらすとか,窓をつついて異国で死んだ者のことを告げ,家の近くで鳴いて,その家の凶事を知らせるといわれる。
執筆者:谷口 幸男
看護婦で病院改良家。イギリス人の裕福な両親がフィレンツェに滞在しているときに生まれ,それにちなんでフローレンスと名づけられた。諸国の病院を訪れ,ことにドイツのデュッセルドルフ郊外にフリードナーTheodor Fliedner(1800-64)の設立したプロテスタント婦人奉仕団病院で正規の看護婦訓練を受け,当時看護活動が技術無視の召使仕事と解せられた時代にあって,高度訓練を受けた看護婦がいかに重要であるかを学んだ。1853年,ロンドンの病弱婦人病院長に任ぜられたが,54年のクリミア戦争勃発には38名の看護婦を率いてトルコのスクタリ基地に従軍し,低劣をきわめる衛生条件で伝染病の続発する陸軍病院の改善に奔走した。イギリスへ帰還して後は,ロンドンでも著名な聖トマス病院にナイチンゲール看護学校を設立し,看護婦の社会的地位の飛躍的向上に貢献した。1907年,婦人最初の勲功章(Order of Merit)を授けられ,世界看護婦界の模範と仰がれている。なお,赤十字国際委員会では20年以来,顕著な働きを示した看護婦に対してフローレンス・ナイチンゲール記章を授与している。
執筆者:嶋田 啓一郎
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イギリスの看護婦。富豪の家に生まれ、よい家庭環境のなかで高い教育を受けた。生来、看護、衛生、社会問題に深い関心をもち、幼時からおりに触れて病人に接していた。種々の難関をくぐり短期間ながらカイザースウェルト学園に学び、念願の看護婦になれたのは30歳のときであった。クリミア戦争(1853~1856)においては患者の側にたつ野戦病院の改革を行い、わずか数か月で死亡率を半減させ「クリミアの天使」と賞賛された。この活動は、デュナンの赤十字創設の起因ともなった。帰国後もらった表彰金および国民からの寄金を基に、ロンドンの聖トーマス病院内に看護学校を設立した。細心、節制、公平、忍耐をモットーに看護教育を体系化し、看護婦の教育は看護婦が行い、看護を宗教から独立させた。この制度はイギリスから世界各国に広がり、現代の看護教育の基礎となった。クリミアから帰国後は病身となったが、文筆活動は盛んで著作約200、書簡約1万2000通があり、その内容はイギリス陸軍の改革、看護、公衆衛生、衛生統計、インド問題、婦人問題など多岐にわたっている。また、彼女の意見に従って建てられたナイチンゲール病棟は現在の建築界においてその優れた居住性が見直されている。それらの点から現在では看護婦の母というよりも健康を守る母という声も高い。
[山根信子]
『湯槙ます監修、薄井担子他訳『ナイチンゲール著作集』全3巻(1974~1977・現代社)』▽『吉岡修一郎著『もうひとりのナイチンゲール――誤解されてきたその生涯』(1966・医学書院)』▽『ハクスレー著、新治弟三・嶋勝次訳『ナイチンゲールの生涯』(1981・メヂカルフレンド社)』
鳥綱スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。アフリカの地中海沿岸からイギリス南部まで、東はカザフスタンまで繁殖分布し、冬はアフリカ中部で過ごす。全長約16センチメートル、上面暗褐色、下面は灰色のじみな姿をしており、低地の広葉樹林、茂ったやぶなどにすみ、地上か地上近くで行動しているので姿は目だたないが、昼夜とも美しい声で鳴くので知られ、ヨーロッパでは多くの文学や音楽作品に取り上げられている。詩などが邦訳されるときには、サヨナキドリ、ヨナキウグイスなどさまざまに訳されている。行動圏内の枝に巣をつくり、4、5卵を産み、雌だけが13~14日抱卵する。育雛(いくすう)は雌雄で行い、雛(ひな)は2週間ぐらいで巣立ちする。イギリスを除くヨーロッパ北部にはよく似たスラッシュナイチンゲール(別名キタサヨナキドリ)が繁殖分布している。
[竹下信雄]
ナイチンゲールは、ヨーロッパでは春の鳥として知られ、鳴き声が愛好された。ナイチンゲールの声をめでる人を主題にした物語も古くからあり、妻がナイチンゲールの声を聞くために夜起き出すので、嫉妬(しっと)した老騎士がその鳥を殺す話がある。夜も鳴くところに特徴があり、古代ギリシアでは、ナイチンゲールの肉を食べると、眠りの妨げになるといわれた。中世の物語では、ナイチンゲールはヘビを恐れて一晩中とげに胸を押し付けて目を覚ましているといい、鳴くのはその痛みのためであるという伝えもある。
[小島瓔]
「サヨナキドリ」のページをご覧ください。
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…面積98km2,人口298(1995)。アフリカの喜望峰と南米大陸のほぼ中間,南緯37゜6′,西経12゜15′の大西洋中央海嶺上に位置し,付近の無人島イナクセシブル島,ナイチンゲール島などと群島を形成する。最高2060mに達する円錐形の島で,偏西風のため気候は温和である。…
…これら看護学の三つの領域は独自に発展するものではなく,相互に影響を及ぼし合っている。 欧米における看護学の発展の歴史をみてみると,1859年にF.ナイチンゲールが《看護覚書》を著し,それまでの経験主義的看護に科学性を追求し,看護を学問として構築する礎を築いた。その後アメリカにおいて,1950年代から,看護を学問として理論化する動きが幾人かの看護研究の先駆者たちによって行われてきた。…
… 産業革命以降,機械工業の発達は職種,職業をあらわす制服や作業衣の普及を促した。女子労働者の制服の先駆けをつくったのはナイチンゲールで,1860年ころ,彼女の病院で働く看護婦に当時流行していたクリノリンの着用を禁止し,スカートの上から白いエプロンをつけさせた。また医師や料理人の白衣は,その清潔なイメージから20世紀に入って広まった。…
※「ナイチンゲール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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