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赤十字 せきじゅうじRed Cross

翻訳|Red Cross

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

赤十字
せきじゅうじ
Red Cross

世界最大の組織網をもって活動する人道機関。「人道,公平,中立,独立,奉仕,単一,世界性」という基本原則にのっとる。赤十字国際委員会国際赤十字・赤新月社連盟および各国の赤十字社赤新月社の三つの組織よりなる。スイスの実業家アンリデュナンの提案に基づき,1863年武力紛争時における傷病者の保護を目的とする人道主義的民間団体がスイスに設立されたのに始まる。1864年には,ジュネーブ条約 (赤十字条約) が採択され,条約加盟国は政府公認の 1国1社の篤志救護協会 (赤十字社) をつくることが決められた。第1次世界大戦後は平時においても,災害救護,病院,輸血センターの経営,看護師養成などの活動を行なっている。日本では 1877年の西南戦争の際に博愛社が創立され,1887年に日本赤十字社となった。国際赤十字諸機関の記章はスイス国旗の配色を逆にした「白地に赤十字」。赤新月,赤水晶も同様に取り扱われる。

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デジタル大辞泉の解説

せきじゅうじ〔セキジフジ〕【赤十字】

戦時に、敵味方の区別なしに傷病者の救護、捕虜や避難民の保護を行う目的で設立された国際協力組織。現在では平時においても災害救助・病院経営・感染症の予防・衛生思想の普及などの事業を行っている。1863年、スイス人アンリ=デュナンの提唱によって翌年に発足。
赤十字社または衛生・医療機関の記章。赤十字組織の創設に尽力したスイスの国旗の配色を逆にしたもので、白地に赤い十字を描いたもの。→赤新月

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世界大百科事典 第2版の解説

せきじゅうじ【赤十字】

当初,戦時における戦傷病者などの救護活動を目的として設立された機構で,その後,捕虜・文民の保護や,平時における傷病者の救護などをも行うようになっている。国際組織と各国の国内組織とがある。国際赤十字International Red Crossとは後出の赤十字国際委員会,赤十字社連盟,各国赤十字社の総称である。1996年現在,赤十字加盟国(赤十字国際委員会の承認を受けている国)は170ヵ国である。
[歴史]
 ジュネーブに生まれたJ.H.デュナンは青年実業家として早くから宗教活動や慈善活動に参加していたが,1859年,イタリア統一戦争にさいし,ソルフェリーノの戦場を旅行したとき,多くの戦傷病者が医療を受けられないでいる悲惨さに深い衝撃を受けた。

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大辞林 第三版の解説

せきじゅうじ【赤十字】

戦時に傷病者を救護する目的で設立された国際組織。現在では災害救護・病院経営・衛生思想の普及なども行う。スイスのデュナンの尽力により1863年創設のための国際会議が開かれ、翌年国際的に承認され発足。 → 日本赤十字社
赤十字の組織の記章。白地に赤色の十字で表す。創設に貢献したスイスの国旗の配色を逆にしたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

赤十字
せきじゅうじ
Red Cross

傷病者救護の組織と、その記章である白地に赤十字を一般に意味している。[宮崎繁樹]

発祥

クリミア戦争(1854)におけるナイチンゲールら篤志看護師の傷病者救護活動に刺激され、イタリア統一戦争(1859)の際の救護体験とそれに基づく傷病兵救護策を記述したアンリ・デュナンの『ソルフェリーノの思い出』の出版が契機となって、ジュネーブ公益協会が各国の有力者に呼びかけ、1863年10月29日、赤十字国際委員会(ICRC:International Committee of the Red Cross)が創立された。同委員会はスイス法人で、スイス国民により構成され、委員の数は25名以下で、本部はスイスのジュネーブに置かれた。紋章は白地に赤十字、標語はinter arma caritas(戦いのなかにも博愛を)とされた。
 委員会は、各国に傷病者救護のための組織(各国赤十字社)の設立を呼びかけ、翌1864年には戦時傷病者救護のための赤十字条約(ジュネーブ条約)が作成された。
 1867年のパリ万国博覧会のおりに、第1回赤十字国際会議が開催されて赤十字の活動も展示され、日本から訪れた医師で社会事業家の高松凌雲(りょううん)(1837―1916)、佐野常民(つねたみ)らもそれを見聞した。1870年のプロイセン・フランス戦争の結果、赤十字とジュネーブ条約の成果が実証され、1873年のウィーン万国博にもその模様が展示され、赤十字活動が普及した。
 1880年、赤十字国際委員会は、加盟を認めたすべての救恤(きゅうじゅつ)協会に「赤十字社」の名を与えることにした。その活動は、戦場における傷病者の救護から、救恤品の送付、捕虜の情報の伝達、文民の保護へとその範囲を広げた。[宮崎繁樹]

日本における沿革

日本では、1868年(明治1)の箱館(はこだて)戦争のおりに榎本武揚(えのもとたけあき)軍に従軍した高松凌雲が赤十字の精神に基づき、初めて洋式の野戦病院をつくって敵味方の区別なく傷病者を救護した。また、1877年(明治10)の西南戦争のおりには、佐野常民、大給恒(おぎゅうゆずる)(1839―1910)らが博愛社を組織して敵味方の区別なく傷病者の救護にあたった。この博愛社が日本赤十字社の前身であり、1887年5月22日社名を日本赤十字社と改称した。
 日本赤十字社が傷病者救護にあたったのは、1894年の日清(にっしん)戦争が最初であり、広島陸軍予備病院に看護婦が派遣された。『婦人従軍歌』(火筒(ほづつ)の響き遠ざかる……)は、このとき新橋駅に整列して出発した救護班の姿に感じて作詩されたものである。同戦争では108名の看護婦が救護にあたった。[宮崎繁樹]

組織と活動

第一次世界大戦(1914~1918)後、赤十字の事業を、平時における、肺結核・伝染病の予防、公共衛生、衛生教育などに広げるため、英米仏伊日の五大国赤十字社代表会議(1919)が開催された際、アメリカから「赤十字社連盟」の設立が提案された。そして、同年5月5日同連盟が設立された。
 その結果、「国際赤十字」は、各国赤十字社、赤十字国際委員会および赤十字社連盟を包含することとなった。「国際赤十字」の最高議決機関は、原則として4年ごとに開催される国際赤十字会議とする。同会議は、各国赤十字社、ジュネーブ諸条約加盟諸国、赤十字国際委員会ならびに赤十字社連盟の代表者によって構成される。
 ジュネーブ条約には、当初は赤十字の活動は明確化されていなかったが、1949年の戦争犠牲者保護条約では、利益保護国が条約に基づいて行う人道的任務を十分行いえない場合には、被保護者の抑留国は、赤十字国際委員会のような人道的団体にその任務を引き受けるよう要請し、その役務提供を承諾すべきものとしている。また、各国赤十字社に所属する衛生要員(医師、看護師など)についても、各国軍の衛生要員と並んでその活動、保護が規定されている。
 第二次世界大戦においても、各国赤十字社、赤十字国際委員会の活動は目覚ましく、日本赤十字社では、960の救護班、3万3156名が救護にあたった。戦死戦病死者は1356名に上った。赤十字国際委員会では、中央補虜情報局が取り扱ったカード約4000万枚、捕虜収容所訪問1100回、委員会が輸送し収容所に分配した救援物資45万トンであった。日本においては、戦闘終了後も、中国大陸、シベリア抑留者の帰還問題など、国交のない国との交渉、救援活動につき政府にかわって赤十字社が果たした役割は大きい。
 赤十字は、その後も世界各地で起こった武力紛争時における犠牲者の保護に加えて、難民の保護救済などにおいても、人道的活動を行っている。[宮崎繁樹]

記章

赤十字の記章は、赤十字の創設に貢献したスイスに敬意を表するため、スイスの国旗の赤地に白十字の配色を反転してつくられたもので、二つの意味がある。一つは、武力紛争時における傷病者の救護活動を示すものであり、ほかの一つは、赤十字国際委員会、赤十字社連盟、各国赤十字社という赤十字組織とその構成員を示すものである。前者の意味で、赤十字社と直接関係はない軍隊の衛生機関や衛生要員も赤十字記章を使用している。
 赤十字記章には宗教的意味がないことが繰り返し確認されている。しかし、イスラム教諸国は赤十字記章にかえて赤新月(赤色の三日月)を使用することを主張し、現在では、条約上赤十字のかわりに赤新月を使用することが認められている。したがってその各国では国内組織を「赤新月社」とよび、本項目で「各国赤十字社」と述べてきたことは、そのまま「赤新月社」にも適用される。
 赤十字記章は、前記の衛生機関・要員、赤十字諸組織の活動以外に用いてはならない。しかし、赤十字社の許可を得た救急車と無料救護所については、例外的にその使用が認められている。[宮崎繁樹]
『ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー編、小山千早訳『武器を持たない戦士たち――国際赤十字』(2003・新評論) ▽北野進著『赤十字のふるさと――ジュネーブ条約をめぐって』(2003・雄山閣) ▽吹浦忠正著『赤十字とアンリ・デュナン――戦争とヒューマニティの相剋』(中公新書) ▽井上忠男著『戦争と救済の文明史――赤十字と国際人道法のなりたち』(PHP新書)』

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世界大百科事典内の赤十字の言及

【デュナン】より

赤十字の創立者。スイスのジュネーブに生まれる。…

※「赤十字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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