ナクソス島(読み)ナクソストウ(英語表記)Náxos

デジタル大辞泉 「ナクソス島」の意味・読み・例文・類語

ナクソス‐とう〔‐タウ〕【ナクソス島】

NaxosΝάξος》ギリシャ南東部、エーゲ海にある島。キクラデス諸島の中で最も大きく、パロス島の東に位置する。主な町はナクソス。島の中央にそびえる標高1004メートルのゼウス山は同諸島中で最も高い。オリーブワイン、良質な大理石産地ギリシャ神話で、テセウスの命を救ったアリアドネが置き去りにされた島として知られる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ナクソス島」の意味・わかりやすい解説

ナクソス[島]
Náxos

エーゲ海のキクラデス諸島中最大の島。面積428km2,人口1万7000(1971)。緑が多く,ギリシア神話では,クレタのミノタウロスを退治したテセウスが,協力した同伴のアリアドネを置き去りにしたとされる島。アリアドネと結婚したディオニュソスの祭りと特産ブドウ酒で名高い。また研磨用エメリーと大理石を産し,石切場,彫刻場として古代に栄えた。ナクソス人が奉納したデロス島のアポロン像,デロス島のスフィンクスをはじめ初期アルカイク期の大理石彫刻に多量に使われた。前6世紀後半僭主リュグダミスのもとで全諸島に君臨した。イオニア人の反乱に加担して前490年ペルシア艦隊の略奪を被るが,サラミスの海戦(前480)にはギリシア側に船を拠出した。ペルシア戦争後,デロス同盟加入するが,アテナイへの反抗に敗れて従属。ローマ支配時代,4世紀以後はコンスタンティノープルから統治される。キリスト教が早くから広まり,やがて隣のパロス島,アンティパロス島とともに,東方正教会パロナクシア府主教区を構成。第4回十字軍の際ベネチア貴族マルコ・サヌードが同島本拠地エーゲ海公国建設(1207),ローマ・カトリック教会所属のナクソス大司教座が置かれた。スペインのユダヤ教徒迫害を逃れイスタンブール(コンスタンティノープル)に亡命し,オスマン帝国スルタンの寵臣となったナシはこの島を支配し(1566-79),その後同島は最終的にオスマン帝国領に編入された。ギリシア解放戦争後ギリシアに帰属し(1832),現在に至る。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナクソス島」の意味・わかりやすい解説

ナクソス島
なくそすとう
Náxos

ギリシア南東部、エーゲ海南部のキクラデス諸島中最大の島。面積428平方キロメートル、人口1万7646(2001)。東半分は険しい山地で大理石を産する。最高峰ジアZiá(別称ドリオスDríos)山は標高1002メートル。西側に沃野(よくや)が開け、柑橘(かんきつ)類、オリーブ、良質のワインなどの産地で、畜産も盛んである。中心市は北西岸のナクソス。ミケーネ時代末期にギリシア人の集落が形成され、紀元前11世紀にイオニア人に占拠され、前735年ごろシチリア島の植民市ナクソス建設に参加し、前6世紀後半に僭主(せんしゅ)リグダミスのもとで繁栄した。前490年ペルシア軍に破壊され、デロス同盟に加盟し、前470年ごろ加盟国中最初に離反して失敗し、前4世紀には第二次アッティカ海上同盟に加わった。中世には、第4回十字軍(1202~04)を機にベネチア人のエーゲ海支配の拠点として栄えたが、1566年オスマン帝国の支配下に入った。1832年よりギリシア領。

[清永昭次・真下とも子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナクソス島」の意味・わかりやすい解説

ナクソス島
ナクソスとう
Nísos Náxos

ギリシア,エーゲ海南部,キクラデス諸島最大の島。東岸に沿って山地が延び,最高点 1007m。西岸に中心集落ナクソスがある。前7~6世紀白い良質の大理石を彫像用に輸出し,繁栄。前6世紀僭主リュグダミス治下にアテネの僭主ペイシストラトスと同盟。前5世紀デロス同盟に加盟。 1207~1566ベネチア領。その後は短期間ロシアに占領されたほかは 1830年までオスマン帝国領。土壌は肥沃で,水にも恵まれ,白ワイン,シトロンその他の柑橘類を産するが,主要輸出品は金剛砂。ナクソスの北でミケーネ時代の遺跡が発掘されている。面積 428km2。人口1万 4037 (1981) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ナクソス島」の解説

ナクソス島(ナクソスとう)
Naxos

エーゲ海南部のキュクラデス諸島最大の島。肥沃な平野を有し,ブドウ栽培とディオニュソス信仰で有名。前6世紀後半僭主(せんしゅ)リュグダミスのとき支配を近隣の島に及ぼす。前490年ペルシアの攻略を受け,のちデロス同盟に加入。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ナクソス島」の解説

ナクソス島
ナクソスとう
Naxos

エーゲ海にあるキクラデス諸島中最大の島
ディオニソス祭で名高い。イオニア反乱に加担し,前490年アケメネス朝軍に破壊された。戦後はデロス同盟に加わり,アテネに従属した。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のナクソス島の言及

【キクラデス[諸島]】より

…鉱物資源にめぐまれ,大理石,黒曜石,金剛砂,鉄鉱石,亜鉛,銀,マンガン,硫黄,軽石などを産する。おもな島には,アポロンとアルテミス誕生の聖地として全ギリシアの信仰を集めたデロス島,酒神ディオニュソスとクレタの王女アリアドネの神話と結びついた群島中で最大のナクソス島,ギリシアで最も美しい純白の大理石を産したパロス島,海上交通の中心地シロス島,黒曜石を産し,また《ミロのビーナス》が発見されたミロス島,白壁の家と風車の島ミコノスMíkonos,火山島ティラThíra(サントリニ),その他アンドロスÁndros,ティノスTínos(テノス),シフノスSífnos,アモルゴスAmorgós,キトノスKíthnos,イオスÍos,セリフォスSérifos,ケアKéa(ケオス),シキノスSíkinosなどがある。
[歴史]
 ギリシア,小アジア,クレタをつなぐ海のかけ橋として,航海上の要地を占め,新石器時代からすでに小アジア系の人々が住み着いた。…

【コランダム】より

…日本では福島県石川,岐阜県苗木,奈良県二上山,広島県勝光山などにコランダムが産出し,石川,苗木にサファイア,大分県木浦鉱山にルビーの産出が知られている。エメリー鉱床は,多くの場合,ボーキサイト鉱床が接触変成作用を受けたもので,ギリシア,トルコ,アメリカなどに知られているが,ギリシアのナクソス島のものが有名である。日本では大分県木浦鉱山でエメリーが採掘されている。…

※「ナクソス島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android