ナタマメ(読み)なたまめ

改訂新版 世界大百科事典 「ナタマメ」の意味・わかりやすい解説

ナタマメ (刀豆/鉈豆)
sword bean
Canavalia gladiata(Jacq.)DC.

若莢(さや)を食用とするために栽培される熱帯アジア原産のマメ科の多年草。温帯では一年生の作物となる。大きな莢の形を鉈にみたてた名で,別名タテハキ。葉身は3枚の小葉からなり,小葉は先のとがった卵形で,長さ10~18cm,幅6~14cm。葉柄は葉身部よりも短い。花は比較的大きく長さ3.5cmで白または紅色。莢は長さ15~25cm,幅3~5cmで,中に8~16個の種子(豆)がはいる。豆は長さ2.5~3.5cmで,紅色もしくは白色シロナタマメという変種)。晩春~初夏に種子をまき,支柱にからませて育て,晩夏に若莢を摘む。若莢を野菜として利用し,福神漬やかす漬,ぬかみそ漬などにする。また,花を酢漬にし,染色して料理のつまとする。完熟した豆は有毒であるが,水をなん回も換えて煮れば毒は除くことができ,これを煮豆やきんとんの原料とする。また,いってコーヒーの代用とする。茎葉は緑肥や飼料として利用できる。

 近縁種のタチナタマメ(洋刀豆)C.ensiformis(L.)DC.は半つる性の一年草で,茎は立って高さ1mほどとなる。ナタマメよりも葉柄が長く,また莢は長さ20~30cmで幅2~2.5cmと細長い。ナタマメ同様に利用される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナタマメ」の意味・わかりやすい解説

ナタマメ
なたまめ / 鉈豆
刀豆
[学] Canavalia gladiata (Jacq.) DC.

マメ科(APG分類:マメ科)の多年草。日本など温帯では霜で枯れるので、一年生となる。熱帯アジア原産で、とくにインドに多く栽培される。日本へは江戸初期に伝来した。茎はつる性で長く、3小葉からなる複葉を互生する。小葉は長さ18センチメートルに達する。夏、葉腋(ようえき)に花序をつくり、長さ3.5センチメートルと大きい蝶形(ちょうけい)の白色花または紅色花を開く。莢(さや)は肉厚で長さ約25センチメートル、幅約5センチメートル。この莢の形が鉈(なた)に似るのでナタマメの名がついた。種子は8~16個あり、長球形で長さ約3センチメートル、紅色で、白色のものもある。若莢を野菜として煮食するが、とくに若莢のスライス福神漬けにしたり、粕(かす)漬けやみそ漬けにする。花は酢漬けにし、赤色や緑色に染め、料理のつまとする。種子は、近縁のタチナタマメ同様、有毒成分であるカナバリンcanavalinを含むので、煮だして除毒し、煮豆とする。炒(い)ってコーヒーの代用ともする。春に種子を播(ま)き、秋に収穫する。

星川清親 2019年10月18日]


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百科事典マイペディア 「ナタマメ」の意味・わかりやすい解説

ナタマメ

熱帯アジア原産のマメ科のつる植物。葉は大型の3小葉からなり,夏に葉腋に淡紅紫または白色の蝶(ちょう)形花を開く。莢(さや)は20〜30cmに発育し成熟すると堅くなって10個ほどの種子を含む。近縁のタチナタマメとともに若莢を福神漬のほか,みそ漬,粕(かす)漬などに利用する。

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栄養・生化学辞典 「ナタマメ」の解説

ナタマメ

 [Canavalia gladiata].マメ目マメ科ナタマメ属の植物の種実で,さやを食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のナタマメの言及

【豆】より

…南アメリカ原産のインゲンマメはアフリカやインドでも主食的に利用される重要な豆類であるし,ボリビア原産のラッカセイは,その高い脂肪含有量のため広く食用にされ,どちらも世界の各地で栽培されている。その他にも〈もやし〉に多用されるインド原産のリョクトウ,若い豆果が野菜とされるアフリカ原産のササゲ類(ササゲ,ヤッコササゲ,ジュウロクササゲなど)や,熱帯アジア原産のナタマメやシカクマメPsophocarpus tetragonolobus(英名fourangled bean),それに加えて中央アメリカや南アメリカ原産のライマメPhaseolus lunatus(英名lima bean),ベニバナインゲン,インド原産のヒヨコマメフジマメ,アフリカ原産のキマメなど,多数の種が栽植され,利用されている。これら熱帯系の豆類のうちのいくつかは,温帯圏での夏作作物となっており,日本でも栽培されている。…

※「ナタマメ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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