ナフチルアミン

化学辞典 第2版 「ナフチルアミン」の解説

ナフチルアミン
ナフチルアミン
naphthylamine

naphthaleneamine.C10H9N(143.19).C10H7NH2アミノナフタレンともいう.1-および2-ナフチルアミンの2種類の異性体がある.1-ナフチルアミンは1-ニトロナフタレン還元してつくられる.昇華性の針状晶.融点50 ℃,沸点301 ℃(101 kPa).Ka 9.9×10-11(25 ℃).1.1229.1.6703.エタノールエーテルなどに可溶.λmax 242,320 nm(log ε 4.27,3.71).亜硝酸の光度定量試薬.膀胱悪性腫瘍の原因となる.LD50 779 mg/kg(ラット経口).2-ナフチルアミンは2-ナフトールアンモニア亜硫酸アンモニウムと加熱反応させるブヒェラー反応によってつくられる.結晶.融点113 ℃,沸点294 ℃.1.061.1.6493.K 2.0×10-10(25 ℃).熱水に可溶.λmax 236,280,292,340 nm(log ε 4.78,3.82,3.73,3.28).皮膚に触れると水疱を生じる.LD50 724 mg/kg(ラット,経口).いずれも青色の蛍光を発し,アゾ染料中間体である.発がん性がある.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナフチルアミン」の意味・わかりやすい解説

ナフチルアミン
なふちるあみん
naphthylamine

芳香族アミンの一つ。ナフタレンアミノ基-NH2置換体。アミノナフタレン、ナフタレンアミンなどともいう。アミノ基の位置により2種の異性体がある。

(1)1-ナフチルアミン α(アルファ)-ナフチルアミンともいう。無色の結晶。空気にさらすと赤紫色に変化する。1-ニトロナフタレンを鉄と塩酸で還元して合成する。水にはほとんど溶けないが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルにはよく溶ける。染料の原料として利用されている。発癌(はつがん)性物質である。

(2)2-ナフチルアミン β(ベータ)-ナフチルアミンともいう。融点110.1~110.2℃、沸点306.1℃。無色の結晶。空気中では紫赤色に変化する。2-ナフトールにアンモニアと亜硫酸アンモニウムを加圧下、加熱して反応させると得られる(ブッヘラー反応)。水蒸気蒸留を受け、冷水にはほとんど溶けないが、熱水には溶ける。エタノール、エーテルにもよく溶ける。染料の合成に利用される。発癌性物質である。

[務台 潔]

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百科事典マイペディア 「ナフチルアミン」の意味・わかりやすい解説

ナフチルアミン

ナフタレンの第一アミン。化学式はC1(/0)H7NH2。α‐,β‐の2異性体がある。α‐(または1−)ナフチルアミンは融点49.2〜49.3℃,沸点299.4〜299.7℃。水に難溶,エチルアルコールに易溶。亜硝酸によりジアゾニウム塩をつくる。α‐ニトロナフタレンの還元により得られる。β‐(または2−)ナフチルアミンは融点110.1℃,沸点306.1℃。熱水に可溶。β‐ナフトールとアンモニア,亜硫酸アンモニウムを加熱して得る。いずれもアゾ染料の原料として重要。ともに強い発癌性がある。(図)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナフチルアミン」の意味・わかりやすい解説

ナフチルアミン
naphthylamine

化学式 C10H7NH2 。α-ナフチルアミンとβ-ナフチルアミンの2種がある。α体は融点 50℃,亜硝酸の発色定量試薬として用いられる。β体は融点 113℃。いずれのナフチルアミンも発癌性があるといわれる。α体,β体ともに染料中間体として重要である。

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