日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナメコ」の意味・わかりやすい解説
ナメコ
なめこ / 滑子
[学] Pholiota nameko (T. Ito) S. Ito et Imai
担子菌類、マツタケ目モエギタケ科の食用キノコ。傘は初め半球状で栗(くり)褐色、のち開いて扁平(へんぺい)になり黄褐色。径3~8センチメートル。ひだは初め淡黄色で、のち淡褐色になり、傘が開かないうちは下面に粘液がしみて半透明の薄い膜が張って、ひだを隠す。茎の径は2~8センチメートル。キノコ全体は著しい粘液で覆われる。胞子紋は肉桂(にっけい)色。天然のナメコは10月中・下旬からブナ林に多く群生する。太平洋戦争前は、とくに山形県、福島県のものが高級食菌として珍重された。しかし現在では各地でナメコ栽培が盛んなため、広く食卓にのせられるようになっている。
[今関六也]
栽培
かつての栽培は、ブナや各種広葉樹の切り株に種菌を植え込んで行ったが、近年では箱栽培という特殊な栽培法が全国に広まっている。これは、鮮魚輸送用などの深さ8センチメートルくらいの木箱を用いる方法で、培養基は鋸(のこ)くずと10%の米糠(こめぬか)を混ぜて水でこね、蒸気殺菌をしたものを用いる。木箱にポリエチレン布、または耐熱性のハイゼックス布を敷いて鋸くず培養基を詰め、種菌を接種したのち、ていねいに培養基を包む。3~4か月で菌糸は全体に発育し、やがてキノコが発生する。アオカビなどの雑菌が混入しやすいので、厳重な殺菌と慎重な取扱いが必要である。
[今関六也]
調理
表面を覆っている粘質物のなめらかさと歯ざわりが身上である。生(なま)は袋入りで出回り、軽くゆでて用いる。缶詰や瓶詰は加熱殺菌されているためそのまま使う。みそ汁、おろし和(あ)え、雑炊(ぞうすい)、麺(めん)類などに用いる。
[河野友美・大滝 緑]
『庄司当著『ナメコ栽培の実際』(1981・農山漁村文化協会)』▽『衣川堅二郎・小川真編『きのこハンドブック』(2000・朝倉書店)』