改訂新版 世界大百科事典 「ナンキンハゼ」の意味・わかりやすい解説
ナンキンハゼ (南京黄櫨)
Chinese tallow-tree
Sapium sebiferum (L.) Roxb.
トウダイグサ科の落葉中高木で,高さ10m,直径35cmになる。樹皮は灰褐色で赤褐色の皮目がある。葉は互生し,葉柄は2~6cmで帯赤色,葉身は長さ4~8cm,幅3~6cmのひし状卵形で先が尾状に伸び,全縁,無毛,やや革質。葉柄頂部に2腺点がある。花は黄色の小花で,6~7月,枝端に生じた総状花序につき,花序の上部は雄花からなり,基部に数個の雌花がある。果実は径約1.5cmの扁球形の蒴果(さくか)で3室あり,11月ころ熟すと裂開して3個の種子を出す。種子は長さ約7mmの広卵形で,白色蠟状の脂肪物質におおわれる。中国大陸の中南部の暖帯~亜熱帯原産で,台湾にも広く野生状でみられる。日本には江戸時代に渡来し,暖地に植えられ,九州の一部では野生化している。種子をおおう脂肪層や種子を絞って得られる油脂を,ろうそく,セッケン,灯用,塗料,薬用などに用い,絞りかすは窒素に富むので肥料とする。根皮や茎皮を乾かしたものを,漢方で烏臼(うきゆう)といい,利尿薬に用いる。新緑や秋の紅葉が美しいので庭木,公園樹,街路樹に用いられ,盆栽にもされる。繁殖は実生によることが普通で,種子は湿砂にまぜて冷暗所に保存し,3~4月にまく。とくに土壌を選ばないが,排水のよい肥沃土壌で生長がきわめて早く,陽光を好む。
執筆者:緒方 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報