翻訳|norm
岩石の化学組成をあらかじめ定められているノルム鉱物(標準鉱物)の重量比で表したもの。ノルム鉱物は火成岩中によく出現する鉱物のなかで比較的化学組成が単純なものを,微量成分などを除いた簡単な形で表したものである。それらを,化学分析の結果得られた岩石の総化学組成をもとに定められた規則に従って順次計算していく。この方法は,1902年にアメリカの岩石学者クロスW.Cross,イディングズJ.P.Iddings,ピアソンL.V.Pirsson,ワシントンH.S.Washingtonの4人により,火成岩をノルムをもとに分類する目的で提案されたもので,4人の頭文字をとってCIPWノルムと呼ばれている。しかし,ノルムによる火成岩の分類法は現在使用されていない。
ノルム鉱物のうち,SiO2とAl2O3を特徴とする一群のものをサリックsalic鉱物と呼ぶ(なかには必ずしもSiやAlを含まないものもある)。おもなものは,石英SiO2,コランダムAl2O3,長石(正長石KAlSi3O8,アルバイトNaAlSi3O8,アノーサイトCaAl2Si2O8),準長石(ネフェリンNaAlSiO4,リューサイトKAlSi2O6,カリオフィライトKAlSiO4)などである。一方,MgO,FeO,CaOを特徴とする一群のものをフェミックfemic鉱物と呼ぶ(なかにはそれらを含まないものもある)。おもなものは,カンラン石(フォルステライトMg2SiO4,フェアライトFe2SiO4),透輝石(ウォラストナイトCaSiO3,エンスタタイトMgSiO3,フェロシライトFeSiO3),ハイパーシン(エンスタタイト,フェロシライト),磁鉄鉱Fe3O4,イルメナイトFeTiO3,リン灰石3Ca3(PO4)2・CaF2などである。ノルム鉱物には角セン石や雲母などのように天然の岩石によく含まれている鉱物が含まれていなかったり,また天然の岩石中にはノルム鉱物の成分でないものが固溶体として含まれていたり,ガラスが含まれていたりするので,ノルム鉱物組成と実際の鉱物組成(モードmodeと呼ばれる)とが一致しないのがふつうである。しかし,岩石の化学的性質(例えば,シリカに対する飽和・不飽和の程度やアルカリの過剰など)を知り,また,他の岩石との化学組成の比較をするのにきわめて有用である。
執筆者:久城 育夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
で定義する。 x・x は x と x の内積である。これを座標を用いて書直せば,
となる。 x1,x2,…,xn はベクトル x の成分である。このノルムの定義は,n=2 および n=3 の場合には,ピタゴラスの定理によって導いた,平面上および空間内の直観的大きさの概念と一致する。すなわち,常識的な大きさの考え方を拡張したものである。ノルムには次の諸性質がある。 (1) x・x≧0 だから右辺の平方根は常に存在し,∥x∥≧0 である。 x≠0 ならば ∥x∥≠0 である。すなわち ∥x∥=0 となるのは x=0 のときに限る。 (2) a をスカラー,|a| を a の絶対値とするとき,∥ax∥=|a|・∥x∥ である。 (3) また2つのベクトルを x ,y とするとき,∥x+y∥≦∥x∥+∥y∥ である。これは三角不等式として知られている。このような性質は,ピタゴラスの定理による長さ以外にも,∥x∥1=|x1|+|x2+…+|xn| とか ∥x∥∞= max {|x1|,|x2|,…,|xn|} でも満足する。それで,これらの場合も,一般にノルムという。さらに
で距離を定義すると,ノルムの定義された n 次元ベクトル空間は,距離空間になる。ノルムは無限次元のベクトル空間である関数空間にも定義することができる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…
【バナッハ空間論】
バナッハ空間Xからバナッハ空間Yの中への作用素Tが, T(αx+βy)=αTx+βTy (x,y∈X;α,βは複素数) を満たすとき,Tを線形作用素という。また正数γが存在して∥Tx∥≦γ∥Tx∥が成り立つときTは有界であるといい,このようなγの下限を∥T∥と書いて,作用素Tのノルムnormという。線形作用素Tが連続,すなわち,
を満たすこととTが有界なこととは同等である。…
…また
をKに共役な体という。αに対して,
をそれぞれ,αのトレースtrace,ノルムnormという。 代数体の重要な例として,二次体,円分体がある。…
※「ノルム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
[名](スル)二つ以上のものが並び立つこと。「立候補者が―する」「―政権」[類語]両立・併存・同居・共存・並立・鼎立ていりつ...