関数f(x)を微分するという演算はf(x)にその導関数f′(x)を対応させることであり,また0≦y≦x≦1なる2変数(x,y)の関数K(x,y)が与えられたとき,区間[0,1]の上の関数fに対して,
なる関数gを対応させると,これも関数から関数への対応(写像)である。このように,微分・積分などの演算を含む関数から関数への対応を統一的に扱うのが,現代の解析学の一つの重要な特徴である。そのために,ある条件をみたす関数の全体を一つの集合と考え,個々の関数をその集合の要素として扱うとき,その集合を関数空間という。通常,関数空間においては距離を定義して収束を考える。このような研究方法は,20世紀に入ってから,フレッシェM.Fréchet,リースF.Rieszらによって始められたものである。以下に重要な関数空間の例を挙げる。
(1)C:区間[0,1]で定義された連続関数f(x)の全体をCとし,f,g∈Cに対して,距離を,と定義する。はfn(x)がf(x)に区間[0,1]の上で一様収束することである。
(2)Cr:区間[0,1]上で連続なr階導関数をもつ関数の全体をCrとし,f,g∈Crに対して距離をf⁽0⁾(x)=f(x)として,と定義する。初めに例にあげたf→f′なる写像は,C1からCへの連続写像である。
(3)Lp(p≧1):区間(0,1)で定義された可測関数fで,|f(x)|pがルベーグ積分可能であるものの全体をLpとし,距離を,と定義する。
のとき,関数fnが関数fに(p次)平均収束するという。(1)式においてK(x,y)が有界可測関数ならば,(1)式で定義される写像f→gはLpからLpの中への連続写像である。p=2のとき,すなわちL2においては内積,が定義され,L2はヒルベルト空間になる。
このほかにも,いろいろの関数空間が考えられ,それらに関して,偏微分方程式などに応用されるすぐれた理論が構成されて,現在も盛んに発展しつつある。
執筆者:伊藤 清三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
閉区間[a, b]上の連続関数全体の集合をC[a, b]で表すと、C[a, b]は普通の和や定数倍に関しベクトル空間になる。さらにfのノルムを‖f‖で表し
により定義すると、ノルムは絶対値と同様な性質を満たす。‖f-g‖により、C[a, b]の2点f、gの距離を定義すると、C[a, b]はこの距離により距離空間となり、しかも完備になる。したがって、C[a, b]はバナッハ空間となり、関数解析が使える。このように、関数が要素となるノルムの定義されたベクトル空間を関数空間という。
C[a, b]のほかに、
が(ルベーグ積分の意味で)有限になる関数の全体をL2(a, b)で表すと、この要素f、gに、内積
が定義されて、ヒルベルト空間になる。
[洲之内治男]
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