ハッサク(読み)はっさく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハッサク」の意味・わかりやすい解説

ハッサク
はっさく / 八朔
[学] Citrus hassaku hort. ex Tanaka

ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑中高木。広島県尾道(おのみち)市因島田熊町(いんのしまたくまちょう)恵日山浄土寺の境内で1860年(万延1)に発見された偶発実生(みしょう)。直立性で枝はまばらにつき翼葉をもつ。5月に開花。自家不結実性のためナツミカンまたはヒュウガナツを授粉用に混植する。果実扁球(へんきゅう)形で約400グラム、果面は橙黄(とうこう)色でざらざらし、果皮は厚さ1センチメートル、剥皮(はくひ)はやや困難。瓤嚢(じょうのう)数(袋数)は12個内外で、白色の単胚(たんぱい)種子を20~40個もつ。砂瓤(さじょう)はやや堅く、甘・酸味が適度で、わずかに苦味があり、風味がよい。12月下旬から翌年の1月に収穫し、3~4月を最盛期として1~5月に出荷する。耐寒性は中程度、潰瘍(かいよう)病やその他の病虫害には強いほうであるが、トリステザウイルスによる萎縮(いしゅく)病に弱い。

 2015年(平成27)の栽培面積は1668ヘクタール、収穫量は温州(うんしゅう)ミカン、シラヌヒ(デコポン)、イヨカン、ナツミカンに次ぎ5位で、3万6073トンである。和歌山、広島、愛媛徳島の諸県に多い。八朔(はっさく)(旧暦8月1日)のころから食べられるために名づけられたというが、そのころは未熟である。

[飯塚宗夫 2020年10月16日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ハッサク」の意味・わかりやすい解説

ハッサク (八朔)
Citrus hassaku Hort.ex Tanaka

ブンタン類縁のかんきつ類で,和名は陰暦8月1日(八朔)ごろから食べられることにちなむといわれるが,秋ではまだ食味不良である。常緑高木となり樹勢は強い。樹体の耐寒性もかなり強く,栽培は容易。花は総状花序を成し,白色5弁。5月に咲く。自家不和合性が強い。単為結果もするが,授粉樹があるほうがよい。果実は橙黄色,扁球形で約350g。果肉はやや硬い。種子数約30粒。白色単胚。変異系統として,果皮の紅が濃い紅八朔,色着きと味が早生化した早生八朔がある。1860年ごろ,広島県因島の浄土寺境内で偶発実生として発見された。明治時代後期から広島県に普及し始め,昭和初期には市場価値が認められるようになり,戦後全国的に増植された。生産量は約7万tで,ウンシュウミカンを除いたかんきつ類ではイヨカン,ナツミカンに次いで多い(1995)。主産県は和歌山,広島,愛媛,徳島。日本特産で外国では栽培されていない。ほとんど生食にされる。寒害(落果,凍結による苦み,す上がりの発生)回避のため12月下旬に収穫され,貯蔵後1~5月に出荷される。3月まで樹上におくと味が向上する。イオン交換樹脂による苦味除去法も開発され,一部果汁用にむけられている。苦味成分のナリンギンnaringinを含む。
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百科事典マイペディア 「ハッサク」の意味・わかりやすい解説

ハッサク(八朔)【ハッサク】

日本特産のミカン科の小高木。名は八朔のころから果実が食べられるということにちなむ。葉は大型で翼があり,花は白色。果実は大型でだいだい黄色,果皮は厚い。甘く風味はよいが肉質はあらい。普通,12〜1月に収穫。

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栄養・生化学辞典 「ハッサク」の解説

ハッサク

 [Citrus hassaku].ムクロジ目ミカン科ミカン属に属する柑橘類の一つ.生食する.

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世界大百科事典(旧版)内のハッサクの言及

【かんきつ類(柑橘類)】より

… ミカン類はその利用を中心に熟期(可食期)による分類,産業的重要度による分類,用途による分類もされる。熟期ではウンシュウミカン(以下ウンシュウ)のように秋から正月ころに食用にされる早生種,ハッサクのように2月から4月ころに食用にされる中生種,ナツミカンのように4月以降に食用にされる晩生種と3群に大別される。しかし,早生種のウンシュウやネーブルオレンジ(以下ネーブル)でも3~4月ころまで貯蔵して出荷されることがある。…

※「ハッサク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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