翻訳|biorhythm
生物リズムともいう。広義には生体が示すすべてのリズム(周期的変動)を指すが,狭義には,睡眠-覚醒,体温,尿量,代謝,ホルモン分泌,月経など,生体に備わったとくに自律性をもつ内因性のリズムをいう。約24時間の概日リズムcircadian rhythmをはじめとして,表のようなリズムがある。生体にはこれらのリズムをつかさどる生物時計があって,環境から刺激を受けて徐々にリズムを調整するが,一方,固有のリズムがあまり乱されないように自律的にも働く。外からリズムを規制する因子を同調因子(時間規制因子synchronizer。ドイツ語ではZeitgeber)といい,外からの刺激をすべて取り去ったときにみられるリズムを自由継続性リズムfree-running rhythmという。
生体リズムのペースメーカーであるおおもとの発振器は親時計といわれるが,その親時計は外部からの刺激を受け入れてリズムを調節し,そのリズムは神経やホルモンなどの伝達系を介して,これまたある程度の自律性を備えた複数の子時計を駆動する,そして,生体の統一的なリズムを形成すると考えられる(ミルズJ.N.Millsの親時計説)。たとえば,ラットなどの齧歯(げつし)類では,視床下部の中央底部にある視交叉(しこうさ)上核という小さな核が親時計で,これが視覚刺激を同調因子として生体のリズムを支配しているから,これを破壊すると睡眠-覚醒,飲水行動,車回し運動,血漿コルチコステロンなどの概日リズムが消失する。しかし,体温のリズムは消失しないことから,最近,哺乳類など高等動物では親時計は一つではなく複数と考えられるようになった(多変動系説)。
ヒトでは多くの発振器が協調して働いており,また昼夜だけでなく,社会的な要因が大きな同調因子となっている。ジェット機によって昼夜が逆になるような時差のある国に旅行すると,生体のリズムはその自律性によって急には環境と同調しえないため,時差ぼけ(非同調症候群)が発現する。時差ぼけから回復するには,時差1時間につき1日かかるといわれているが,生活のリズムを速めるより遅らせるほうが容易であり,東回りより西回り旅行のほうが早く回復しやすい。
執筆者:石黒 健夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生物体内に生じる一定の周期をもった変化を総称してバイオリズムという。このうち、おおむね24時間を一周期として生じるものを概日(がいじつ)リズム(サーカディアンリズムcircadian rhythm)とよび、とくに動物行動を探る研究分野においては重要とされる。概日リズムより短い周期を示すもの(心臓の拍動など)をウルトラディアンリズムultradian rhythm、概日リズムより長い周期を示すもの(月経周期など)をインフラディアンリズムinfradian rhythmとよぶ。
人間の場合、心臓の拍動一拍一拍のリズムは約1秒前後の周期を示すが、睡眠などでは1日を単位として考えられる。また、その睡眠時間においても深い眠りと浅い眠りがあるし、生後まもなくは一日中寝ているが、成長に伴って睡眠時間は短くなり、成人では6~8時間に短縮される。人間では時計を見ながら行動を調節し、社会生活に適応していくが、動物の場合でも時間の長さを調節するものが体内にあるとする考えがあり、これを体内時計とか生物時計とよんでいる。人間の場合は、たとえば個人によって心臓の拍動数や睡眠時間が異なるように、その生体リズムは画一的ではない。しかし、その人にあった生体リズムをうまく生活に適合させることは、エネルギー代謝などの生理調節機構を順調に働かせ、健康を管理するうえではたいせつなこととなる。飛行機などで時差のある国へ旅行したとき、その場所の日照時間や生活時間に順応できず、体調を崩すのは、生体リズムが乱れたためである。また、昆虫や動物を使った実験では、光が目や視床を通して神経系へ深くかかわり、個体を維持するリズムだけでなく生殖のリズムにも影響を与えることが知られている。
[小野三嗣]
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