改訂新版 世界大百科事典 「バゼドー」の意味・わかりやすい解説
バゼドー
Johann Bernhard Basedow
生没年:1724-90
ドイツの教育家,汎愛派の創始者。ハンブルクに生まれ,ライプチヒ大学で神学を修めた後,家庭教師,リッター・アカデミーやギムナジウムの教師を経験したが,1768年,彼を一躍有名にした《学校と学問および公共福祉へのそれらの影響に関する博愛家および資産家への提言》を公表,次いで70年《父母のための方法書》を刊行した。彼はそれらを通して暗記主義的な当時の学校教育を批判し,教育内容と教授方法の改善の必要を訴えた。アンハルト公レオポルドの援助を得て,74年デッサウに教育改革実現のための実験学校として汎愛学校Philanthropinumを創設した。〈人類愛の学校〉という意味での命名である。この学校は汎愛派のメッカとして一時名声を博したが,バゼドーの指導力の欠如によりしだいに衰退し,93年にはその歴史を閉じた。バゼドーの思想は一般に啓蒙的合理主義と市民的功利主義に基づいており,教育思想史上の系譜としてはロックとルソーからの影響が大きいといわれているが,種々の点で差異もみられる。彼の教育思想は,学校教育の無宗派性と国家管理の主張,知育に比しての訓育の重視,教材選択原理としての生活実用性の強調,教授方法原理としての直観性や自己活動性の重視などによって特色づけられる。18世紀後半のドイツにおいて教育問題に社会一般の関心を大きく向けさせた点にバゼドーの顕著な功績があった。
執筆者:平野 正久
バゼドー
Karl Adolph von Basedow
生没年:1799-1854
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報