バージャー病(読み)バージャービョウ(英語表記)Buerger's disease

デジタル大辞泉 「バージャー病」の意味・読み・例文・類語

バージャー‐びょう〔‐ビヤウ〕【バージャー病】

四肢の血管内に血栓などができて血流が途絶え、その先の組織が壊死えししてしまう病気。原因不明。指定難病の一つ。米国の外科医バージャー(L.Burger)が報告。閉塞性血栓性血管炎特発性脱疽ビュルガー病

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精選版 日本国語大辞典 「バージャー病」の意味・読み・例文・類語

バージャー‐びょう‥ビャウ【バージャー病】

  1. 〘 名詞 〙 ( アメリカの医師 Leo Buerger の名から ) 四肢主幹動脈に起こる慢性閉塞性血栓血管炎局所疼痛、間歇跛行、局所の壊死などが見られる。青壮年男性に多い。特定疾患の一つ。ビュルガー病、特発性脱疽(だっそ)ともいう。

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六訂版 家庭医学大全科 「バージャー病」の解説

バージャー病
バージャーびょう
Buerger's disease
(循環器の病気)

どんな病気か

 四肢(主として下肢)の末梢動脈の内膜の炎症により動脈の閉塞を来し、血流障害が生じる病気で、閉塞性血栓血管炎(へいそくせいけっせんけっかんえん)とも呼ばれます。最初の報告者の名前からバージャー病(英語読み)、あるいはビュルガー病(ドイツ語読み)とも呼ばれています。

 患者数は、国内で約1万人と推計されています。男女比は10対1と男性が多く、20~40歳を中心に青・壮年に多く発症します。動脈硬化によって下肢の動脈が詰まる閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)も同じような症状を来しますが、閉塞性動脈硬化症は高齢者に多く、40歳以下の若年者にはほとんど発症しません。

 特定疾患であり、医療費は公費負担助成の対象です。

原因は何か

 原因は不明ですが、発症には喫煙が深く関係しています。患者の9割に喫煙歴が認められ、受動喫煙周囲の喫煙者によって間接的に喫煙状態になること)を含めると、ほぼ全例が喫煙と関係があると考えられています。

症状の現れ方

 血流障害が軽度のときは、下肢の冷感やしびれが認められ、高度になるにしたがって間欠性跛行(かんけつせいはこう)(長い距離を歩くと足が痛くなり、ひと休みするとおさまって再び歩くことができる)や安静時の痛みが現れます。血流障害がさらに高度になると、難治性の潰瘍を生じ、壊死(えし)に至ります。

 また、手足の静脈にも炎症を起こし、静脈に沿って赤くはれたり、痛みが生じることがあります(遊走性静脈炎(ゆうそうせいじょうみゃくえん))。

検査と診断

 閉塞した部位より先の動脈の拍動が触れなくなります。足関節と上腕の血圧比の計測(足関節/上腕血圧比)が、下肢虚血(きょけつ)の重症度の判定に役立ちます。確定診断には血管造影検査が必要になります。血液検査では特徴的な所見はありません。

治療の方法

 まずは禁煙を厳守することが大切です。そして手足はいつも清潔にして、寒い時期には保温に注意を払うことも大切です。履き物は足に合ったものを履くようにして靴ずれを起こさないように注意します。散歩などの適度な運動はおすすめです。

 薬物療法としては、血液の循環を改善して血栓を予防するために、血管拡張薬や抗血小板薬が用いられます。重症例に対しては、可能であればバイパス手術などの血行再建を行います。バイパス手術が適さない場合は、血管の拡張を目的に交感神経節ブロックが行われています。

 壊死が進行して各種の治療が無効な場合には、指趾の切断が必要になります。

病気の経過

 直接、生命に関係するような大切な臓器(心臓・脳・内臓など)の動脈を侵すことはありません。生命予後も同年代の健常人と変わりありませんが、指趾の切断を必要とすることもあり、生活の質(QOL)を脅かすことが少なくありません。

 早期の診断と適切な治療、禁煙の厳守により、病気の重症化を防ぐことができます。

池田 宇一

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家庭医学館 「バージャー病」の解説

ばーじゃーびょうへいそくせいけっせんけっかんえん【バージャー病(閉塞性血栓血管炎) Buerger Disease(Thromboangiitis Obliterans, TAO)】

[どんな病気か]
 四肢(しし)(手足)の動脈および静脈に炎症がおこり、そこに血栓(けっせん)(血液のかたまり)ができて血管の内腔(ないくう)をふさいでしまう病気です。おもに20~40歳代のたばこを吸う男性にみられます。
[原因]
 不明ですが、肉体を使う労働者により多く発生していることから、外力によって血管に障害がおこり、さらに、たばこによる血管内皮(けっかんないひ)(血管の最内層)の傷害や血液凝固能亢進(けつえきぎょうこのうこうしん)(血液がかたまりやすくなること)が加わって、血栓が形成されるのではないかと考えられています。最近では、免疫反応異常(めんえきはんのういじょう)の1つである自己免疫反応が関与して、血管炎をもたらしていると考えられています。
 同じように四肢の動脈を閉塞する病気に閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)(「閉塞性動脈硬化症」)があります。この病気が比較的太い動脈におこるのに対して、バージャー病は末梢(まっしょう)(心臓から遠いところ)の細い血管に閉塞がおこります。とくに微小循環障害(びしょうじゅんかんしょうがい)(毛細血管(もうさいけっかん)レベルの細い血管の異常)が強いのが特徴です。
 かつてバージャー病の患者さんの数が慢性動脈閉塞症の患者さん全体の過半数を占めていた時期がありましたが、最近は年々、その数が減少しています。逆に、食生活の欧米化にともない、閉塞性動脈硬化症は増加傾向にあり、比率が大きく逆転しています。
[症状]
 皮膚は虚血(きょけつ)(血液不足状態)のために蒼白(そうはく)となり、冷感をともないます。時間とともにうっ血(血液がたまった状態)し、発赤(ほっせき)やチアノーゼ(皮膚が紫色になる現象)が現われます。慢性化すると、皮膚は赤紫色(バージャー色)になることが多くなります。
 筋肉の虚血症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)をもたらします。これは、歩くと足が痛みますが、立ち止まったり座ったりして休憩すると数分で症状がなくなるものです。虚血が進むと、じっとしていても痛むようになり(安静時痛)、さらに進むと、栄養障害のために、手足に潰瘍(かいよう)や壊死(えし)が生じます。バージャー病の場合は、閉塞性動脈硬化症よりも早く潰瘍と壊死が出現するといわれています。
[検査と診断]
 循環器科を受診します。血管を専門に扱う血管内科や血管外科がある病院では、そちらを受診します。
 検査では、手足の脈に触れ、血圧を測ることで、動脈の閉塞部位が推定されます。動脈の閉塞部位を確定するためには血管造影(けっかんぞうえい)(造影剤という放射線に反応する薬をカテーテルで血管内に入れてX線撮影する検査法)が行なわれます。
[治療]
 閉塞性動脈硬化症の治療と同様、内科的、外科的治療が単独または組み合わせて行なわれます。しかし、なによりも禁煙を守ることが重要です。禁煙を守れないと、いかなる治療を行なっても効き目がなく、再発をくり返すからです。
 しびれや冷感に対しては、手足を保護・保温し、血管拡張作用があり血小板凝集(けっしょうばんぎょうしゅう)を抑えるプロスタグランジン製剤などが内服されます。
 間欠性跛行に対しては、内服剤に加え、歩行を主体とする運動療法が行なわれます。
 安静時痛や潰瘍がある場合は、内服剤を点滴で使用し、可能ならば、血管がつまった部分をカテーテルという細い管を通して広げるか、つまった部分をバイパス(迂回(うかい)して連絡)する手術が行なわれます。ただし、閉塞性動脈硬化症に比べ、その成績はよくありません。
[日常生活の注意]
 とにかく禁煙することです。そして、手足を保護して、直接寒さにさらしたり、傷をつくったりしないようにすることが重要です。強い痛みや潰瘍がない場合は、血液の循環をよくするため、適度な運動をするのもよいことです。

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改訂新版 世界大百科事典 「バージャー病」の意味・わかりやすい解説

バージャー病 (バージャーびょう)
Buerger's disease

はっきりした原因がないのに手足の先に治りにくい傷ができ,ときには手足の一部が腐ってくる状態で,特発性脱疽あるいは単に脱疽とも呼ばれる。20~40歳の青壮年の男子に多い。下肢の動脈,とくにひざ以下の動脈が原因不明の炎症によって壁が厚くなり,その場所で血液が固まって内腔が完全につまるために起こる(そのため閉塞性血栓血管炎ともいわれる)。動脈がつまると,手や足の栄養が悪くなり,ふつうは問題にならないようなわずかな刺激でも傷ができ,血液の循環が悪いので治りにくい。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バージャー病」の意味・わかりやすい解説

バージャー病
ばーじゃーびょう

ビュルガー病

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