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閉塞性動脈硬化症 ヘイソクセイドウミャクコウカショウ

デジタル大辞泉の解説

へいそくせい‐どうみゃくこうかしょう〔‐ドウミヤクカウクワシヤウ〕【閉塞性動脈硬化症】

腹部大動脈・腸骨動脈・大腿(だいたい)動脈など四肢に血液を供給する血管で動脈硬化が進行し、血管が閉塞する病気。血流が不十分になるため、手足にしびれ・痛み・冷えを感じる。治療せずに放置すると、やがて歩行が困難になり、重症化すると手足に潰瘍(かいよう)ができ壊死(えし)することもある。ASO(arteriosclerosis obliterans)。

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家庭医学館の解説

へいそくせいどうみゃくこうかしょう【閉塞性動脈硬化症 Arteriosclerosis Obliterans】

[どんな病気か]
 動脈硬化(どうみゃくこうか)によって動脈の内腔(ないくう)が細くなり、その動脈がうけもっている領域の血流が悪化するものです。
 障害される場所は通常、腹部大動脈(ふくぶだいどうみゃく)とそれに続く下肢(かし)の動脈(どうみゃく)です。動脈硬化のなかでも粥状硬化(じゅくじょうこうか)といわれる変化がおこり、動脈が慢性に狭細化していきます。
 50~70歳の男性に好発し、女性は、この病気全体の8~10%を占めるにすぎません。また、ヘビースモーカーや糖尿病のある人に好発します。下肢の血流が障害されるため、症状は足に出ますが、3年経過すると、約半数の人が状態を悪化させます。
 細くなる動脈の範囲は、通常短く、一部で動脈内径が大きくなり、動脈瘤(どうみゃくりゅう)を併発する場合もみられます。
 この病気の基本は動脈硬化なので、他の動脈硬化性の病気をしばしば併発します。心臓の動脈硬化では狭心症(きょうしんしょう)・心筋梗塞(しんきんこうそく)を、脳の動脈硬化では脳梗塞(のうこうそく)を、腹部大動脈の動脈硬化では腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)をおこします。それぞれ重度かつ致命的な病気です。
 閉塞性動脈硬化症は、しばしば以上のような疾患を合併します。硬化症自体も難治性、進行性で患者さんを苦しめることが多く、最終的には合併症によって死亡してしまいます。60歳以下で発病した場合、5年生存する率は73%といわれています。
[症状]
 下肢、とくに足先の冷たい感じやしびれが最初におこります。足先を触れると冷たく、その皮膚の色は蒼白(そうはく)または紫色で、足背の脈が弱くなったり、脈が触れないこともあります。左右の足に同時におこることはありませんから、両足を比べると、その差がはっきりわかります。
 症状はゆっくり進行し、そのうち下肢の筋肉が血行障害で痛むようになります。とくに筋肉を使うと血行障害がおこりやすくなるため、歩行中に下肢が痛み、歩けなくなることもあります。立ち止まって休むと血行障害が改善されて痛みがとれて歩けるようになりますが、しばらく歩くと再び痛みだします。この症状を間欠性跛行(かんけつせいはこう)といい、この病気の特徴の1つです(ただし、背骨や下肢の神経障害でも似た状態になります。受診して区別してもらう必要があります)。動脈の狭細化が進むとさらに血行障害の程度が増し、歩ける距離も短くなっていきます。
 血液循環が悪くなり、足先の皮膚が傷つくことが多くなると、皮膚が破れ、黒くて深い傷となり、潰瘍(かいよう)に発展することがあります。こうなると、激しい痛みがあるうえ、きわめて治りにくくなり、傷も趾先(しせん)(足の指先)から足部、下肢(かし)へと拡大します。ときには皮下組織や筋肉まで脱落し、骨が露出することもあります。この状態が下肢壊疽(かしえそ)です。
 壊疽になると、強い痛みが続き、発熱します。放置しておくと全身が衰弱して死に至ります。
 この病気の症状の程度は、フォンテインの分類によって分けられています(表「閉塞性動脈硬化症の重症度分類(フォンテイン分類)」)。
[検査と診断]
 ①下肢の血行障害があること、②動脈硬化による動脈狭細化の部位と程度が明らかであること、③動脈硬化を促進するような因子や動脈硬化に基づく他の臓器の合併症があるかどうかで、つきます。進行性の病気ですから、早期に診断して早く対策をたてることがたいせつです。
 なお、下肢の血行障害は、足先の冷感、皮膚の変色、下腿の脈拍微弱、下肢血圧の低下などで判定されます。
 検査は、脈波計で障害肢の脈拍の高さ(低くなる)と皮膚サーモグラフィーで下肢の皮膚温(他の部位と比べ低下する)を調べます。動脈硬化の部位と動脈狭細化の程度についてはCTやMRI、さらにDSAや血管造影によって動脈を撮影し、下肢動脈を詳しく調べて判定されます。
 合併症の診断は、心臓や脳などにおけるそれぞれの疾患についての診断と同時に行なわれます。ただし、足が痛むために心臓の運動負荷試験はできませんから、薬剤による反応試験を行なって判定します。
[治療]
 3通りの治療法があります。第1は薬で血行を改善する内科治療法、第2は人工血管を使用してバイパス(迂回路(うかいろ))をつくり、動脈狭細化部位の前後の血行を再建する方法、第3は、壊疽の強い場合、下肢を切断してしまう外科治療法です。
 内科治療は、症状がフォンテイン分類でⅠ度と軽く、しばらく薬物治療で経過観察できるゆとりのある場合と、動脈硬化が下腿の細い動脈でおこっており、バイパス手術が適当でない場合とにかぎられます。このときは足先の保温や保護がたいせつで、皮膚に傷をつけないよう細心の注意を払います。
 薬はアルプロスタジル剤を注射や飲み薬で使用し、血管を拡張し血行を促進します。また動脈の細い部分で血栓(けっせん)が発生し、動脈を閉じないように、血栓予防薬を併用します。
 手術が可能であれば、積極的に動脈バイパス術(迂回路形成術(うかいろけいせいじゅつ))を行ないます。フォンテイン分類でⅡ度またはⅢ度の状態が対象となります。
 外科治療は、リスクが少ないうえに下肢の血行障害に対する効果が大きく、症状の改善や進行の停止が期待できます。ただし、虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)や大動脈瘤の合併がある場合は、通常これらの治療を先に行ないます。
 下肢壊疽が進行し、フォンテイン分類がⅣ度になると、全身状態を悪化させないため、やむを得ず下肢切断(かしせつだん)が行なわれます。ただし最近は、動脈硬化した部分を削り取るアテレクトミーや、血管内で風船をふくらませ、細くなった部位を拡張する経皮的血管拡張術(けいひてきけっかんかくちょうじゅつ)も行なわれるようになっています。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

閉塞性動脈硬化症
へいそくせいどうみゃくこうかしょう

主として四肢の主幹動脈に粥(じゅく)状硬化性変化をおこし、狭窄(きょうさく)あるいは閉塞を生じて末梢(まっしょう)部に種々の虚血症状がみられる疾患で、ASO(arteriosclerosis obliterans)と略称される。虚血症状は、蒼白(そうはく)、冷感、しびれ(フォンテインFontaine重症度分類第期)に始まり、間欠性跛行(はこう)(同第期)、安静時痛、潰瘍(かいよう)(同第期)、壊死(えし)(同第期)に至るものまで種々の程度のものがある。全身の動脈硬化症の一つの現れであるとされている。
 治療は、動脈硬化症の一般治療のほかに、薬物療法として抗凝固療法(ワルファリン、ヘパリンなど)や抗血小板療法(アスピリンなど)、血管拡張剤(プロスタグランジンE1など)の投与が行われる。また、外科療法としてバイパス移植などの血行再建術、交感神経節切除術、四肢切断術などがより積極的な治療として行われることもある。[木村和文]

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世界大百科事典内の閉塞性動脈硬化症の言及

【血管雑音】より

…また,大きな動脈瘤の場合には,拡張期にも雑音を聴取できることがある。閉塞性動脈硬化症や大動脈炎症候群(高安病)でも,血管に限局的な狭窄がある場合,その部位で収縮期雑音が聴取される。前者では,頸動脈,大腿動脈,腸骨動脈などが好発部位で,大動脈で聴取されることもある。…

※「閉塞性動脈硬化症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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