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皮膚や粘膜が暗紫色となった状態をいう。英語名,ドイツ語名ともdark blueを意味するギリシア語のキュアノスkyanosに由来する。口唇,爪床,ほお,耳たぶ,鼻にみられることが多い。
皮膚や粘膜の毛細血管内に,酸素と結合していないヘモグロビン量が,血液100ml当り5gを超えた場合に出現する。これは,酸素飽和度にして約66%となる。赤血球数の増加があると,より高い酸素飽和度でチアノーゼが現れ,逆に貧血があると,酸素飽和度がより低くてもチアノーゼは現れにくくなる。
中心性チアノーゼは,心疾患,肺疾患,ヘモグロビン異常によって,体動脈血の酸素飽和度が低下し,その結果,毛細血管血の酸素不飽和を生じてチアノーゼを示す場合である。心疾患,肺疾患では,静脈血が肺を通らずに左心系にバイパスしたり,肺全体の換気量が不足していたり,部分的に換気の不足した肺胞があって,静脈血の動脈血化が不十分な場合に起こる。ヘモグロビンの異常としては,2価の鉄のかわりに3価の鉄を含み酸素を運搬できないメトヘモグロビンの存在によって,著しいチアノーゼを呈する。このようなメトヘモグロビン血症は,先天性異常として生ずるほか,フェナセチン,アセトアニリド,クロロキンなどの中毒によっても生ずる。末梢性チアノーゼは,体動脈血の酸素飽和度は正常に保たれているが,粘膜や皮膚での血流が著しく減少するために,毛細血管血の組織に奪われる酸素量が増加するため,毛細血管血の酸素飽和度が低下してチアノーゼを示すものであり,中心部(口腔粘膜や結膜)では軽く,指先など末梢にいくにしたがって著しくなる。粘膜や皮膚の血流減少は,血管の局所的痙攣(けいれん),末梢静脈の閉塞,圧迫など局所的な場合と,心筋梗塞(こうそく),僧帽弁狭窄など心拍出量低下を伴った全身的な血流減少による広範囲の場合とがある。
執筆者:白石 透
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口唇や爪床(そうしょう)など皮膚や粘膜が暗青色を呈する状態をいい、心肺疾患の症状の一つとして、また重篤疾患の予後を示す指標として重要視される。この現象は、酸素と結合していない還元ヘモグロビン量が血液100ミリリットル当り5グラム以上に増加すると生じるとされ、一般に血中の酸素濃度の低下を意味している。この場合、二酸化炭素濃度は上昇していることが多い。また、口唇や爪床をはじめ、耳たぶ、四肢先端、粘膜などの皮膚組織の薄いところでもっともよく認められる。
チアノーゼは、原因となる病態から中心性と末梢(まっしょう)性に大別される。中心性は動脈血の酸素飽和度の低下によるもので、おもな原因として心臓疾患や呼吸器疾患などがあげられる。心臓疾患としては、心臓内の右から左(静脈から動脈)への短絡がある先天性心疾患、ファロー四徴症や肺動脈弁狭窄(きょうさく)のような肺への灌流(かんりゅう)分布異常のあるものがあり、呼吸器疾患としては、肺結核、肺炎、肺気腫(きしゅ)、気胸、胸膜炎など肺におけるガス交換障害のあるものがあげられる。末梢性は末梢の動静脈の循環不全によって生じるもので、末梢血流のうっ滞する心不全時や局所静脈の圧迫時に現れる。健康な人でも寒冷にさらされたり精神的異常緊張によっても現れることもある。しかし一般に重篤な病態時にみられることが多いので、速やかに適切な処置をとる必要がある。すなわち、原因疾患の治療のほかに、酸素吸入や強心剤などの対症療法も行われる。
[木村和文]
チアノーゼは、血液中の還元ヘモグロビンが5g/㎗以上になり、指の爪、粘膜(口唇など)が青紫色になることで気がつきます。一般に呼吸器疾患では動脈酸素飽和度が70%以下になると明らかなチアノーゼがみられ、この所見がみられたら動脈血酸素の低下が疑われます。
原因の多くは肺・心疾患ですが、中枢性と末梢性、そのほか自律神経緊張異常などに大きく分けることができます。
中枢性は肺への静脈血(肺に向かう肺動脈には静脈血液が流れている)が十分に流れないもの、肺に原因があるものでは慢性閉塞性肺疾患、肺炎、
肺は正常でも、酸素化された血液(酸素が十分含まれる血液)が酸素の低い血液と混ざってしまう病気や、酸素を運ぶヘモグロビンの異常でも起こります。たとえば動脈血と静脈血が混ざってしまうシャント(先天性心疾患、肺動静脈
末梢性は動脈硬化、血栓性静脈炎などの局所的な静脈還流、また動脈血の供給の障害です。
気をつけなければならないのは、貧血があったり動脈血二酸化炭素分圧が高いとチアノーゼが出にくく、出れば明らかな低酸素血症があることを示唆しています。また、皮膚、粘膜の色は光の加減で変化するので、自然光で観察することが大切です。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…動脈血は大部分のヘモグロビンに酸素が結合して鮮紅色を呈するが,静脈血は酸素を結合していないヘモグロビンを含むので暗赤色である。心臓や肺の病気のため血液中の酸素が減ると,毛細血管には酸素を結合していないヘモグロビンが増加するので,皮膚や粘膜は青紫色の色調を帯び,チアノーゼ(青色症,紫藍症ともいう)という状態になる。(3)血液の酸性度と比重 血液の酸性度(pHで表示)はつねに一定に保たれていて,健康人ではほぼ中性(pH7.4)である。…
…これらは自覚症状,聴診,心電図,超音波心エコー図,胸部X線写真などを注意深く観察すれば診断が可能である。 先天性弁膜症のなかにはチアノーゼを示すものとして三尖弁閉鎖,肺動脈弁閉鎖,重症肺動脈弁狭窄などがあり,チアノーゼを示さないものとして,心房中隔欠損や心室中隔欠損を伴った僧帽弁閉鎖不全や,大動脈弁狭窄があり,これには大動脈縮窄や動脈管開存の心臓の奇形が合併する。しかしいずれも先天性心疾患の3%以下と発生率は少ない。…
…
[先天性心疾患の分類]
先天性心疾患はまれなものまで挙げれば非常に多くの種類があるが,日常比較的よくみられる病気の種類は10種類程度である。それらはさまざまな立場から分類されているが,従来よく行われているのは,チアノーゼを示す群(チアノーゼ性先天性心疾患)と示さない群(非チアノーゼ性先天性心疾患)に分けるものである。前者にはファロー四徴症,完全大血管転位,総肺静脈還流異常,三尖弁閉鎖,右胸心などがあり,後者には心室中隔欠損,心房中隔欠損,心内膜床欠損,動脈管開存,肺動脈狭窄,大動脈狭窄,大動脈縮窄などが含まれる。…
…先天性心疾患の一種で,チアノーゼを示す疾患の代表的なものである。1888年にフランスのファローÉtienne L.A.Fallot(1850‐1911)がこの疾患について四つの解剖学的特徴を記載して以来,彼の名が疾患名として用いられている。…
…体温が36~36.5℃に保たれるように,自動的に保育器の温度が設定される保育器もある。(2)呼吸管理 未熟児は酸素欠乏になりやすく,このときはチアノーゼといって皮膚が紫色になる。酸素不足になるといろいろな障害が起こり,死亡したり,生き延びても脳性麻痺になったりすることがあるので,チアノーゼや呼吸障害のある未熟児には酸素吸入が行われる。…
※「チアノーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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