バーンアウト症候群(読み)ばーんあうとしょうこうぐん(その他表記)Burn-Out Syndrome

知恵蔵 「バーンアウト症候群」の解説

バーンアウト症候群

仕事や子育て、スポーツ、ボランティア活動などに熱心に打ち込んでいた人が、急に無気力な状態になること。身体的にも精神的にも強い疲労感があり、無感動で表情が乏しくなるほか、イライラ感、徒労感、自己嫌悪、自己不満足感、仕事あるいはこれまで取り組んできたことへの嫌悪感、周囲の人への不信感敵意など、否定的な感情を強く持つようになる。あわせて頭痛肩こり腹痛などの身体症状を訴えることも多い。
火が燃え尽きた(Burn-Out)ことにたとえて、米国の心理学者ハーバート・フロイデンバーガーが命名した。命名当時の1970年代には、看護職や福祉職を始めとする対人援助職においてしばしばみられる心理状態とされ、献身的にケアや支援に取り組んだにもかかわらず、期待された効果あるいは成果が得られない場合に起こるとされていた。しかし現在は、対人援助職に限らず様々な職業や社会的立場にある人についてもこの言葉が用いられ、目標を達成したり、夢を実現したりといった大きなことをやり遂げた後にも起こりやすいとされるようになった。
自責感を伴わず、周囲の人を思いやる余裕をなくして時に激しい攻撃性を示すことがあるなどの点で、うつ病とは異なるとされる。国際疾病分類第10版(ICD-10)では「生活管理困難に関する問題」(Z73.0)に分類され、「身体的かつ感情的に消耗した状態」と定義されており、精神科領域の疾病や障害には入っていない。しかし、燃え尽きをきっかけにうつ病へと移行していく場合が少なくないことは知られており、また、逃避のためにアルコール薬物などにふけり、依存症へと発展していくこともある。
対処法は、心身両面で十分な休息をとること。例えば、仕事がきっかけであったなら仕事を休み、対象となる物事から少し距離をおく。不眠などがあれば、生活リズムを整える必要もある。身体活動が高まると状態が改善するという報告もあり、趣味のスポーツなどを生活の中に取り入れるのもよい。
燃え尽き症候群に陥りやすい人の傾向として、完璧主義が挙げられる。例えば、自分ができなかったことに注目するのではなく達成したことや自分にできることを評価し認める、100%の結果にこだわらず多少は妥協する、プロセスにも目を向けるなどして物事の捉え方を変えていくことで、リスクを軽減することができる。また、一つの物事や価値観にとらわれず、打ち込んできたもの以外にも楽しみや喜びを見つけ、いきいきとした感情を保つことが予防にも回復にも役立つ。

(石川れい子 ライター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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