改訂新版 世界大百科事典 「パイロフィライト」の意味・わかりやすい解説
パイロフィライト
pyrophyllite
含水層状アルミノケイ酸塩(フィロケイ酸塩)鉱物の一種。葉蠟(ようろう)石とも呼ぶ。化学成分はAl2Si4O10(OH)2。単斜晶系の微細葉片状結晶となるが,多くはさらに細かい結晶が集合して塊状となり,粘土鉱物の一種として取り扱われる。へき開{001}に完全,比重2.65~2.90,モース硬度1~2。白~帯褐緑色。比較的低温・低圧の熱水作用により生成される場合が多く,日本では蠟石鉱床を形成して産出することが多い。その場合は絹雲母(セリサイト),石英,少量の黄鉄鉱などを伴って生成する場合もある。アルミナ鉱物,石英などの混合量による鉱石のアルミナ含有量の多少により,それぞれ高級耐火物原料,低級耐火物原料として利用されている。またかつては筆記用具の石筆(蠟石)や原鉱石を粉砕し,水簸(すいひ)精製の後,製紙用クレーなどの粉材として利用した。高純度,緻密で色彩の美しいものは蠟石細工,印材としても珍重されている。この場合の着色は微量に含まれる異種鉱物,例えば印材として貴重な鶏血石のように,少量のシンシャ(辰砂)HgSの混在による例などがあげられる。
執筆者:湊 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報