パラメトロン(その他表記)parametron

デジタル大辞泉 「パラメトロン」の意味・読み・例文・類語

パラメトロン(parametron)

2個のフェライト磁心コイルを巻き、コンデンサーと組み合わせて、入力周波数半分の出力周波数を得る共振回路。二通りの位相が得られるので、二進法に対応させコンピューターの論理回路素子として用いた。昭和29年(1954)後藤英一発明

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精選版 日本国語大辞典 「パラメトロン」の意味・読み・例文・類語

パラメトロン

  1. 〘 名詞 〙 ( 洋語parametron ) 記憶論理演算機能を行なう回路素子装置。フェライトの透磁率非直線性を応用し励振周波数の分周波振動を起こさせる。電子計算機や電話交換器・工業用制御器などに使用。昭和二九年(一九五四)後藤英一が考案

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パラメトロン」の意味・わかりやすい解説

パラメトロン
parametron

パラメータ励振によって論理演算または記憶作用をもたせた素子。 1954年,東京大学の後藤英一によって発明された。フェライトのような磁性体にコイルを巻いて電流を通じると磁性体は磁化されるが,電流がある程度大きくなると磁化は飽和する。つまり,コイルの電流と磁化とは比例しないので,コイルのリアクタンスが電流によって変化する (非線形リアクタンス) 。磁性体に2つのコイルを巻き,一方に一定周波数の交流を流してコイルのリアクタンスを変化させる (回路の定数パラメータを変化させるので,これをパラメータ励振という) 。そして,他方のコイルにはコンデンサをつなぎ,その共振周波数をリアクタンスの変化する周波数の半分に同調させると,その周波数で発振する。発振の位相に2種類あり,どちらが実際に発振するかは,発振初期に同調コイルに存在するわずかな交流電流によって決められ,いったんある位相の発振が起れば,励振を切らないかぎりその位相の発振が持続する。これが記憶作用の原理である。また,励振の初期に外部から小さな信号を入れると,その信号に応じた位相の発振が生じる。つまり,電子管トランジスタのような増幅作用もあり,1つの素子で多数個の素子の制御が可能なので論理演算素子をつくることができる。半導体集積回路が出現するまでは,素子1個あたりの費用が少なかったので,パラメトロンを用いた電子計算機がつくられたが,演算速度は遅く,現在ではほとんど使われていない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パラメトロン」の意味・わかりやすい解説

パラメトロン
ぱらめとろん
parametron

東京大学の後藤英一により1954年(昭和29)に発明された磁気コアを利用したコンピュータの記憶・論理素子。当時の電子管式計算機では電子管の寿命が短すぎたため、これにかわって登場し、パラメトロン式計算機として利用された。しかし動作が遅いためトランジスタにかえられた。

 パラメトロンはパラメーター励振を用いる。パラメーター励振とは、電気回路定数を外部信号で変化させ、振動系の固有振動を変化させることによりしだいに振幅を増大させる励振法である。これをインダクタンスとコンデンサーの共振回路に適用したのがパラメトロンである。パラメトロンはフェライトの磁心に二組のコイルを巻き、100キロヘルツ程度の励振電流を流すと、二次側では1/2周波数の共振電流が流れるが、この電流の位相が0かπのいずれかになるパラメーター励振現象を利用して記憶や論理演算が行われる。

[岩田倫典]

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百科事典マイペディア 「パラメトロン」の意味・わかりやすい解説

パラメトロン

フェライトの環状磁心にコイルとコンデンサーを組み合わせた共振回路をもつ電気回路素子。パラメーター励振現象(パラメトリック増幅)を利用,インダクタンスを一定周波数で変化させ,2分の1の分周波を発生させる。分周波は0°または180°の2種の位相をもつのでこれで二進数字を表示,記憶・論理演算の機能を行わせ,コンピューターや電子交換機などに利用する。構造が簡単で信頼度が高い。1954年後藤英一が考案。
→関連項目後藤英一分周

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世界大百科事典(旧版)内のパラメトロンの言及

【コンピューター産業】より


[日本のコンピューター産業]
 日本でのコンピューター研究は,1952‐53年ころから一部の研究者の間で行われるようになった。54年に後藤英一が真空管より性能のよいパラメトロンを発明し,研究はパラメトロン式とトランジスター式が並行して進められた。前者によるコンピューターに57年開発の武蔵野I号,後者に56年開発のETL・マークIII,57年完成のETL・マークIVがある。…

※「パラメトロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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