パーソナリティー障害(読み)パーソナリティーショウガイ

  • (こころの病気)
  • Personality disorder
  • パーソナリティーしょうがい〔シヤウガイ〕

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

かつて「人格障害」とも言われた精神障害。アメリカの精神医学会の診断基準では、妄想性、境界性、自己愛性、反社会性など、10種類のタイプがある。診断基準は、(1)物事見方や考え方、人とのかかわり方などが極端に偏っている(2)柔軟性のない振る舞いが広範囲にみられる(3)本人に著しい苦痛と社会・職業的な困難がある(4)長期間続いている――などとされる。原因は不明だが、遅くとも思春期から成人期の早いうちには、兆候が見受けられるという。 2008年に茨城県土浦市のJR荒川沖駅で起きた9人連続殺傷事件で、殺人罪に問われた男(13年に死刑執行)は「自己愛性パーソナリティー障害」と診断されたが、完全責任能力が認定された。

(2017-02-24 朝日新聞 夕刊 1社会)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

周囲の多くの人とは異なる、正常範囲から逸脱した偏った性格傾向や反応、および、持続的で反復する行動様式を示し、そのために本人は苦痛を感じ、周囲に迷惑やときに危害を及ぼすこともあって、社会生活能力が損なわれる精神障害。周囲の環境に適応できないことから、対人関係を柔軟に保てずトラブルを生じる、情緒の不安定さから衝動的な行動をコントロールできない、あるいは強迫観念から引きこもる、などの症状がみられる。かつて人格障害の訳語があてられたこともあったが、正確ではなく現在ではこの用語が使われている。アメリカの精神医学会の『精神障害の診断と統計の手引き(DSM)』には次の3群10類型(世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)では8類型)が記載されている。
〔1〕A群(認知に偏りがあり、奇妙で風変わりな行動を伴う)
(1)妄想性パーソナリティー障害(他人の言動や行為に対して極度な不信感や猜疑(さいぎ)心を示す)
(2)統合失調質パーソナリティー障害(他者への関心あるいはかかわろうとする欲求に乏しく社交性がない)
(3)統合失調型パーソナリティー障害(非現実的で奇異な考えや言動がみられ、他人とのかかわりも少なく妄想癖あるいは被害妄想の傾向を示す)
〔2〕B群(感情や対人関係が不安定で、演技的で移り気な行動を伴う)
(1)境界性パーソナリティー障害(対人関係のトラブルが多く、感情のコントロールがきかず衝動的あるいは攻撃的な行為を示し、見捨てられることに対する不安や孤独感が強い)
(2)自己愛性パーソナリティー障害(自分は優れた特別な存在だという自己意識にとらわれ、他人を無視して尊大な態度を示し、かつ自己評価にこだわる)
(3)反(非)社会性パーソナリティー障害(社会的規範を守る意識に乏しく、衝動的な行動を示し、うそをついて平気で人をだます)
(4)演技性パーソナリティー障害(他者からの注目を集めようとして演技的な行動を示し、外見にも極端にこだわる)
〔3〕C群(内向的で不安や恐怖を伴う)
(1)依存性パーソナリティー障害(他者に対する依存性が高く、自分で決断することがむずかしく他者の意見に反論もできず、放っておかれる孤独に耐えられない)
(2)強迫性パーソナリティー障害(一定の秩序や流儀を保つことへのこだわりが強いために、融通のきかない完璧(かんぺき)主義がかえって生活に支障をきたす)
(3)回避性(不安性)パーソナリティー障害(不安や緊張および恐怖を感じ、人間関係を回避する)
 パーソナリティー障害の原因は、まだ十分に明らかになっていないが、発達期の養育環境などと関連があると考えられている。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科の解説

 パーソナリティー障害とは、人が生まれもっている性質(生物学的素因)と環境とにより形成され、思春期以降に次第に明らかになってくる人格の傾向のうち、本人あるいは周囲がその人格傾向により社会生活上の著しい困難を来してしまう病態をいいます。

 この障害は一般の精神疾患に伴って存在することも多く、うつ病摂食(せっしょく)障害などにしばしば伴うことがあります。今日、DSMⅣ­TRというアメリカ精神医学会の分類では表12に提示するような10種類のパーソナリティー障害が分類されています。これらを眺めてみますと、クラスターA群は一般に統合失調症(とうごうしっちょうしょう)の周辺領域の病態で風変わりにみえる人たちを、クラスターB群は衝動や情緒の表現の問題をもち風変わりにみえる人たちを、クラスターC群は対人関係や社会といったものを含めた外界に強い不安や恐怖を感じており、どちらかといえば私たちが本来もっている性質の一部が極端に強調された形式で常に表出される群として分類しています。

 ただし、これらは研究上や治療上の必要から仮定された概念であり、現在の分類や診断基準が正しいか否かについてはさまざまな議論があります。また、文化社会的な背景が異なると妥当性には疑問をもたざるをえないものもあります。たとえば、回避性(かいひせい)パーソナリティー障害は日本人の一般的性向と似ているため、日本人ではあてはまりやすいことが知られています。

小野 和哉


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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