ヒガイ(英語表記)Sarcocheilichthys variegatus

改訂新版 世界大百科事典 「ヒガイ」の意味・わかりやすい解説

ヒガイ (鰉)
Sarcocheilichthys variegatus

コイ目コイ科の淡水魚。国字の鰉は明治天皇が賞味したのにちなんだといわれる。細長い紡錘形で,やや側扁する。日本特産種で天然の分布は愛知県以西の本州と九州北部であったが,移殖により現在では関東地方の利根川水系,長野県の諏訪湖および東北地方の北上川などにも繁殖している。湖や流れの緩やかな川の砂れき底にすむ。餌は底生の小動物。産卵期は4~6月。繁殖期の雄は,婚姻色と追星(おいぼし)を現し,雌には産卵管を生じ,それをドブガイ,マルドブガイ,イシガイなどの生きた二枚貝の外套がいとう)腔(左右の外套膜の隙間)にさし込み産卵する習性がある。琵琶湖のヒガイには形態および色彩の変異が多く,地元の漁業者はトウマル(頭丸),ツラナガ(顔長)およびアブラヒガイ(油鰉)などに分けて呼んでいる。主として焼いて食用に供する。かつて京都では川魚料理によく使われていた。骨が硬いが美味。朝鮮半島からアジア大陸の東部一帯にかけて近縁別種が数種分布している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒガイ」の意味・わかりやすい解説

ヒガイ(淡水魚)
ひがい / 鰉
[学] Sarcocheilichthys variegatus

硬骨魚綱コイ目コイ科に属する淡水魚。日本名の字は、明治天皇が好まれたことに由来する。サクラバエ、ヤナギバエともよばれる。愛知県以西の本州太平洋側と九州北部に天然分布していたが、近年は北海道と琉球(りゅうきゅう)諸島を除く日本各地に広がっている。朝鮮半島、中国大陸、台湾島にも分布する。全長10~15センチメートル程度であるが、まれに25センチメートルに達する。体は細長く、背びれを斜めに横断する黒斑(こくはん)がある。湖や池、川の中・下流域に生息し、ユスリカトビケラ巻き貝などの小動物を摂食している。春から夏の産卵期には、雌は長さ約1センチメートルの産卵管を出し、それを二枚貝の吸水管に入れて、外套膜(がいとうまく)に卵を産み付ける。同時に雄も吸水管付近で放精し、受精させる。

 琵琶湖(びわこ)産ヒガイには、外形や色斑の異なる種々の型があり、トウマル(頭丸)、ツラナガ(面長)、アブラヒガイ(油鰉)などとよばれている。最近、アブラヒガイのみを別種S. biwaensisとし、琵琶湖産のほかの型と河川産はヒガイの別亜種とする考えが提案された。美味であるが、骨の硬いのが難点である。

[水野信彦]


ヒガイ(巻き貝)
ひがい / 杼貝
elongated egg cowry
[学] Volva volva habei

軟体動物門腹足綱ウミウサギガイ科の巻き貝。房総半島以南、台湾付近までの水深10~100メートルの砂泥底や岩礁底にすむ。殻高95ミリメートル、殻径25ミリメートル、殻は内巻きで、前溝も後溝も管状に伸び、織物を織るのに用いた道具の一つで紡錘形をした「杼(ひ)」を連想させる。殻は淡紅色であるが、生時は、黒色の縁で囲まれた小斑(はん)と低い突起のある黄褐色の外套(がいとう)膜に覆われている。本亜種より南方に分布する型は、前溝、後溝ともに長く先端が紅色をした、ツマベニヒガイV. v. volvaとよばれる亜種である。

[奥谷喬司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒガイ」の意味・わかりやすい解説

ヒガイ
Volva habei; shuttlecock shell; elongated egg cowrie

軟体動物門腹足綱ウミウサギ科。殻長 9.5cm,殻幅 2.5cm。殻は紡錘形で上下 (前後) に細長く嘴状突起があり,内巻きで螺層は現れず体層のみである。殻表は淡桃色で光沢があり,細い螺溝が上下方ほど明らかで密になる。殻口は細長く,外唇縁は厚くなる。軟体は白色で黒色眼斑が密にあり,外套で殻をおおう。外套表面は褐色地に多数の乳白色円斑があり,それぞれの円斑の中心に乳白色の突起をもつ。房総半島から九州の水深 10~50mの砂底にすむ。近縁種ツマベニヒガイ V.volvaは,前後水管が非常に長くて先端は黄橙色になり,外套表面は乳白色で,褐色円斑の中心に黒褐色の突起をもつことで区別できる。四国から熱帯太平洋に分布する。

ヒガイ

「カワヒガイ」のページをご覧ください。

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普及版 字通 「ヒガイ」の読み・字形・画数・意味

】ひがい

牛の胃と牛の

字通「」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「ヒガイ」の意味・わかりやすい解説

ヒガイ

コイ科の魚。地方名サクラバエ,メアカ,アカメなど。雄は暗灰色,背びれは灰色。雌は黄味が強く体側に黒色縦帯がある。全長20cm。愛知県以西の本州と九州北部の原産だが,現在は関東地方の河川・湖沼,諏訪湖,北上川などにも移殖され,ふえている。砂底にすみ,底生小動物を捕食。カラスガイなど二枚貝の外套(がいとう)腔に産卵する。骨が堅いが美味。明治天皇が愛好したので鰉の字を当てる。

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世界大百科事典(旧版)内のヒガイの言及

【川魚料理】より

…河川,湖沼などにすむ淡水魚を材料とする料理。コイ,フナ,アユ,ウナギ,ドジョウ,ナマズ,モロコ,ハヤ,ワカサギ,ヒガイ,カジカ,ヤマメ,イワナ,マスなどが多く使われる。近世以前,京都が日本の中心であった時代には,その地理的条件からも川魚が珍重された。…

※「ヒガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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