日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒムラー」の意味・わかりやすい解説
ヒムラー
ひむらー
Heinrich Himmler
(1900―1945)
ナチス・ドイツの政治家。小市民出身で第一次世界大戦に志願兵として参加、戦後ミュンヘン大学で農芸化学を学ぶ。1923年のヒトラー一揆(いっき)には右翼団体の一員として参加、一揆失敗後ナチス党に入り、G・シュトラッサーに協力した。1929年SS(エスエス)(親衛隊)隊長になると、彼はこれを党内警察組織に発展させ、その権力的地位を固めた。1934年6月のレーム事件ではヒトラーに協力し、親衛隊をSA(エスアー)(突撃隊)にかわる地位につけ、1936年全ドイツの警察を掌中に収め、親衛隊と警察をてこに党と国家を裏面から支配するに至った。1939年「ドイツ民族性強化委員」となり、東欧、南東欧のゲルマン化政策の一環としてユダヤ人の大量虐殺を組織的に行った。1943年内相となる。ナチス・ドイツの敗北を前に、パルチザン部隊を組織する一方、英米への片面降伏を画策するが、ヒトラーの怒りを買い、全官職を剥奪(はくだつ)され、党から除名された。1945年5月、イギリス軍に逮捕され、自殺した。
[吉田輝夫]