日本大百科全書(ニッポニカ) 「てこ」の意味・わかりやすい解説
てこ
てこ / 梃子
棒を一つの点で支え、その点を中心として自由に回転できるようにしたもの。小さな力を大きな力に変えたり、小さな移動距離を大きな移動距離に変えたりする目的で使われる。大きな石やレールのような重いものを動かす作業に役だつほか、鋏(はさみ)、ペンチ、滑車などの日常の道具によく応用されている。
てこを支える点を支点、力を加える点を力点、物体に力が作用する点を作用点という。支点から力点までの長さをa、支点から作用点までの長さをbとし、力の大きさをF、物体に働く力をWとすると、a×F=b×Wという関係があるときに、てこがつり合う。したがって、aがbより大きければ、加えた力Fよりも大きな力Wを物体に加えることができる。支点・力点・作用点の3点の位置関係によって、てこの働きは3種類に分けられる。一つは力点と作用点が支点の両側にある場合で、釘(くぎ)抜き、ペンチなどに応用されている。二つ目は支点と力点がてこの両端にあり、作用点が中間にある場合で、栓抜き、缶切りなどに応用されている。三つ目は支点と作用点が両端にあり、力点が中間にある場合で、物体に加えられる力は力点に加えた力よりも小さくなるが、移動距離が拡大されるので微小な動きを観察しやすくなる。天秤(てんびん)の目盛りを読むための指針やピンセットなどはこのようなてこの働きを応用している。
てこを使って物体を動かす場合に、物体に加えられる力Wが力Fの2倍ならば、物体を動かす距離は半分になるので、力と移動距離の積で決められる仕事の量は、どちらの量も同じである。
[石川光男]