フィジカルアセスメント(読み)ふぃじかるあせすめんと(英語表記)physical assessment

日本大百科全書(ニッポニカ)「フィジカルアセスメント」の解説

フィジカルアセスメント
ふぃじかるあせすめんと
physical assessment

患者や対象者の身体状態に関する情報を集め、その情報を専門知識に基づき解釈・分析し、身体状態に関する異常や問題があるかどうか、異常・問題があるのであれば何が原因でどのような問題なのかを評価・判断すること。日本語では「身体審査」「身体診察」等と訳されることもあるが、「フィジカルアセスメント」と片仮名表記で使われることが多い。フィジカルアセスメントは、医師をはじめとして広く医療・介護専門職者の間で必要となる技術であるが、とくに患者・対象者にもっとも身近にかかわる存在である看護師には日常的に求められる技術である。

[横山美樹 2021年9月17日]

看護領域におけるフィジカルアセスメント

看護において系統的なフィジカルアセスメントが導入されたのは、アメリカが最初である。アメリカでも1960年代までは医師のみがフィジカルアセスメントを行っていたが、1970年代におけるナース・プラクティショナーの出現により、看護領域でもフィジカルアセスメントが行われるようになり、看護基礎教育(学部での教育)で系統的なフィジカルアセスメント教育が行われるようになった。

 日本では2000年(平成12)ころから一部の看護系大学で系統的なフィジカルアセスメント教育が導入されたが、内容や教育にかける時間数等は教育機関によりかなり差がある状況であった。しかしながら、2009年の看護基礎教育のカリキュラム改正において「フィジカルアセスメント技術は看護師に欠かせない能力として教育内容に含める」と明記され、その後の看護基礎教育課程に正式に含まれることとなり、現在に至っている。

[横山美樹 2021年9月17日]

フィジカルアセスメントの技法

フィジカルアセスメントを行うための情報収集手段には、対象者自身の訴え等を直接聞く「問診(インタビュー)」に加え、客観的な情報収集手段として「視診観察によって情報を得ること)」、「触診(手で触れて情報を得ること)」、「打診(身体表面をたたくことで得られる音、手の感覚から情報を得ること)」、「聴診聴診器を使って呼吸音や心音、蠕動(ぜんどう)音等から情報を得ること)」の四つの技術があり、これら四つの技術を総称して「フィジカルイグザミネーション」とよぶ。

 フィジカルアセスメントには、「頭の先からつまさきまで」全身状態を確認する“head to toe”のアセスメントと、対象者の状態に応じた部分的な(焦点的な)アセスメントがある。

 医師は医学診断のためにフィジカルアセスメントを行うが、最初の診察では全身状態のアセスメントが必要であるため、「頭の先からつまさきまで」の詳細なフィジカルアセスメントを行い、その後は対象の状態に応じ、問題となる身体部位に関する焦点的なアセスメントを行う。

 他方、看護師の独自の機能は「日常生活行動の援助」であるため、看護師はフィジカルアセスメントの結果から、身体状態の異常や問題によって日常生活にどのような影響があるのか、その結果どのような看護援助が必要なのかという視点でアセスメントを行っており、医師の視点とは異なっている。

 また、たとえばリハビリテーションの専門職である理学療法士は、対象者の運動機能にかかわる全身の関節の動きや筋力等に関して焦点的にアセスメントを行い、言語療法士は話すことや嚥下(えんげ)機能に関与する脳神経系や、口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)に関して焦点的にアセスメントを行っている。つまり、それぞれの医療職者は、自身の職務を遂行するために必要なフィジカルアセスメントを行い、その結果を生かして対象に必要な援助を実施することから、フィジカルアセスメントはすべての医療専門職者にとって基本の技術であるといえる。

[横山美樹 2021年9月17日]

在宅医療とフィジカルアセスメント

少子高齢化の進む日本では地域包括ケアシステムが推進されており、医療の場は病院だけではなく在宅へ広がっている。病院には医師が常駐しており、X線心電図等の検査機材も使えるため、何か問題が起こった場合にも対象者の身体状態をすぐに調べることが可能であるが、在宅では医師の訪問や医療機材が限られるなかで、対象者の身体状態の危険な変化を早期発見することが求められる。その点でも訪問看護・介護にかかわる医療職者、とくに訪問看護師のフィジカルアセスメント能力が求められているといえる。

[横山美樹 2021年9月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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