胸壁や腹壁をたたいて,その際に生じる響きから肺の病巣の広がりや性質,心臓の大きさ,肺と肝臓の境界,腸内のガスの有無などを知る診断法。医学における打診の応用は1761年J.L.アウエンブルッガーによって始められた。宿屋の主人であった彼の父親が,樽(たる)に酒がどのくらい残っているかを知るために,ときどき樽をたたいていたことがヒントになったといわれている。彼の発案した方法は,片手の指で胸壁を直接たたくものであったが,現在行われている打診法では,通常,左中指の末節の腹面を打診を行う部位の体表に密着させ,その末節の根もとを右中指の先端で速やかに垂直にたたく。
打診に際して発する音と体表に密着した左中指に感じる振動の性質は,その直下にあるものの密度を反映する。空気の入った肺は空気のない臓器に比べて軽く,密度は小さい。したがって,肺内に空気の入らない部分が生じる肺炎や肺腫瘍,無気肺,胸水貯留などでは,健康な肺の部分に比べて打診音は短く,鈍く(濁音)聞こえる。同じようにして,肺と心臓の境や,肺と肝臓の境などもわかる。大きな空洞があったり,通常の肺よりたくさんの空気を含む肺気腫やガスをためた腸管などの打診音は,大きく,長く持続して,よく響く音(鼓音)となる。
打診は,たたく強さによって強打診,中打診,弱打診に分けられ,通常行われる中打診では,深さ約5cm,表面4~6cm2の,弱打診では深さ約4cm,表面3cm2の範囲の病巣の状態を反映するといわれ,また胸壁から深さ5cm以上,直径2~3cm以下の小さな病巣は,打診では検出できないとされている。
かつてX線検査が普及していなかった時代には,打診は診断技術のうえできわめて重要な地位を占めており,さまざまな打診手技や特殊なサインが駆使されていた。今日では,熟練を要し,医師の主観混入がまぬかれない打診の地位は低下しているが,診断技術の基本としての重要性は変わっていない。
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執筆者:工藤 翔二
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…打楽器。楽器学上は膜鳴楽器に属する太鼓類と,体鳴楽器に属するマラカスや拍子木などの類との総称で,一般に音程を要求されず,リズムを奏するのに使用する楽器をいう。ただしクラシック音楽界では,マリンバなど旋律を奏するもの(いわゆる旋律打楽器)を含むのが普通。ジャズ,ポピュラー音楽では,多くの場合ドラム・セット以外の打楽器を指し,事実上,コンガ,マラカス,グイロ,ボンゴなど,いわゆるラテン・パーカッションとほとんど同義である。…
…内科系の診療科目として,内科,小児科,精神科,消化器内科,循環器内科,呼吸器内科,神経内科などがあり,外科系の診療科目として,外科,眼科,耳鼻咽喉科,口腔外科,産婦人科,泌尿器科,皮膚科,整形外科,脳外科,胸部外科,放射線科などがある。
【診断】
診断とは,患者が訴えるいろいろな病気の症状を,医師が以下のような問診,視診,触診,打診,聴診,および種々の臨床検査によって病気を見きわめることである。診断は,その病気が何病であるかをきめるだけでは完全ではない。…
※「打診」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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