フウセンタケ(読み)ふうせんたけ

改訂新版 世界大百科事典 「フウセンタケ」の意味・わかりやすい解説

フウセンタケ (風船茸)

担子菌類フウセンタケ科フウセンタケ属Cortinariusキノコ気球の下にゴンドラをつるしたような形の一群のキノコ。ムラサキフウセンタケ,コガネフウセンタケ,フウセンタケなど,典型的なフウセンタケは,まんじゅう形のかさで,茎の根もとはそろばん珠(だま)形にふくらみ,かさの縁と茎の根もとの間をクモの糸のような繊維がつなぐ。これは不完全なつばである。この属は種類がきわめて多く,形もフウセンタケとはいえないほどさまざまで,円柱状の茎をもつキノコの方がむしろ多いが,つねに共通なのはクモ糸状の不完全なつばがあること,胞子褐色でその表面がいぼいぼで覆われることである。種類が多いこと,形に変化が多いことなどのため分類はきわめて困難で,日本の研究は著しくおくれている。日本産だけでも100種をはるかに超えるが,大部分はまだ名がない。

 食用菌は少なくなく,アブラシメジC.elatior Fr.,ヌメリササタケC.pseudosalor Lange,フウセンタケC.purpurascens (Fr.) Fr.などはひろく食用にされる。これらの3種はともにかさと茎の表面は強い粘質物で覆われ,茎は円柱状で長く,クモ糸膜は茎の上部とかさの縁との間にはる。アブラシメジのかさははじめ半球状のち平らに開き,泥褐色,周辺部に放射状にならぶ溝線があるが,ヌメリササタケは溝線を欠く。茎は淡青紫をおびた白色。ともに全国に分布し,秋,ブナ林にとくに多い。

 毒キノコとしてはハツゴロウタケC.venenosus Kawam.が記録されているが,正体は不明である。ヨーロッパには致命的猛毒菌として2種が知られているが,日本では不明である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フウセンタケ」の意味・わかりやすい解説

フウセンタケ
ふうせんたけ / 風船茸
[学] Cortinarius

担子菌類、マツタケ目フウセンタケ科フウセンタケ属のキノコの総称。かつてフウセンタケとされた種名は、現在ではカワムラフウセンタケC. purpurascens Fr.とよばれている。カワムラフウセンタケの食毒は不明。若いキノコは、傘が半球状、茎は太く、根元はそろばん玉状に膨らむ。傘の縁(へり)と茎の膨らみとの間には、真綿を薄く引き伸ばしたようなくもの巣状の繊維(クモ膜)が張る。この形がゴンドラをつるす軽気球に似ることから以前はフウセンタケと名づけられた。傘は暗褐色で粘性、肉は紫色ひだも初めは紫色だが、胞子が成熟すると銹(さび)色となる。胞子は楕円(だえん)形でいぼいぼを帯び、8~10マイクロメートル×5~6マイクロメートル。胞子紋は銹色。カワムラフウセンタケは、マツ科の針葉樹林に生える菌根菌であり、北半球に広く分布するが、日本ではみつけにくい場合もある。

 フウセンタケ属は種類が多く、欧米では500種以上が知られている。日本では60種ほど記録されているが、大半はまだ研究が進んでいない。フウセンタケ属の特徴は、クモ膜があることと、胞子の形態にある。キノコの形はカワムラフウセンタケ形でないものも多い。アブラシメジとその仲間は円柱形の茎をもち、根元は膨らまず、傘も茎も粘液で覆われる。しかし、形がアブラシメジに似るものでも、粘質を帯びない種類も多い。アブラシメジのような優れた食菌もある反面、海外からは致命的な猛毒種の報告もあり、今後の研究がまたれる。

[今関六也]


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