フェーリング液(読み)フェーリングえき(英語表記)Fehling's solution

精選版 日本国語大辞典 「フェーリング液」の意味・読み・例文・類語

フェーリング‐えき【フェーリング液】

〘名〙 (フェーリングはFehling) 硫酸銅溶液と、ロッシェル塩水酸化ナトリウムの溶液を使用直前に混合して用いる分析試薬。糖の検出定量に広く用いられる。ドイツの化学者フェーリングが発明したもの。

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デジタル大辞泉 「フェーリング液」の意味・読み・例文・類語

フェーリング‐えき【フェーリング液】

糖の検出や定量に用いる試薬。硫酸銅溶液とロッシェル塩水酸化ナトリウム溶液を混合したもので、糖が還元されて赤色沈殿を生じる。ドイツの化学者フェーリング(Hermann Fehling[1812~1885])が発明。

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改訂新版 世界大百科事典 「フェーリング液」の意味・わかりやすい解説

フェーリング液 (フェーリングえき)
Fehling's solution

アルデヒドや還元性糖類の検出,定量に用いられる試薬。ドイツの化学者フェーリングHermann von Fehling(1812-85)が1848年に創製したもので,銅(Ⅱ)イオンの酒石酸錯塩主体とする強アルカリ性の青色溶液をいう。長時間放置すると分解して還元性物質を生じるので,あらかじめ次のA,B2液を別々に調製しておき,使用直前になって両液を等量混合して用いる。

 A液 硫酸銅CuSO4・5H2O69.315gを水に溶かして1lにしたもの。

 B液 ロッシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム)NaKC4H4O6・4H2O346gと水酸化ナトリウムNaOH100gを水に溶かして1lにし,アスベストでろ過したもの。

 フェーリング液に還元性物質を加えて穏やかに温めると,銅(Ⅱ)が還元されて銅(Ⅰ)となる。銅(Ⅰ)の錯塩の安定度は低いのでただちに溶液中の水酸イオンOH⁻と結合して水酸化銅(Ⅰ)CuOHを生じて黄色に濁る。さらにこれを煮沸すると脱水されて酸化銅(Ⅰ)Cu2Oの橙赤色沈殿を生じる。生じた酸化銅(Ⅰ)の重量分析や比色分析などにより還元性物質の定量を行うことができる。ヘキソース1分子はほぼ5原子の銅を還元する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェーリング液」の意味・わかりやすい解説

フェーリング液
ふぇーりんぐえき
Fehling's solution

アルデヒド基-CHOが還元性をもつことを利用して、アルデヒド基を検出する試薬。1848年にドイツのフェーリングが考案したのでこの名でよばれる。結晶硫酸銅(Ⅱ)35グラムを水500ミリリットルに溶かした溶液(第1液)と、酒石酸ナトリウムカリウム170グラムと水酸化ナトリウム50グラムを500ミリリットルの水に溶かした溶液(第2液)をつくり、別の瓶に保存し、使用するときに等容量をとり混合する。混合液は硫酸銅溶液より濃い青藍(せいらん)色であるが、アルデヒドを加えると、銅(Ⅱ)イオンは還元されて赤色で不溶性の酸化銅(Ⅰ)になる。したがって、液は無色になり赤色の沈殿を生ずることからアルデヒドが検出できる。この反応は、脂肪族アルデヒドや糖類では陽性であるが、芳香族アルデヒドでは陰性である。

[廣田 穰 2015年7月21日]

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化学辞典 第2版 「フェーリング液」の解説

フェーリング液
フェーリングエキ
Fehling solution

還元糖の検出,定量にもっとも広く用いられている試薬.硫酸銅溶液(CuSO4・5H2O34.6 g を水500 mL に溶かす)と酒石酸ナトリウムカリウム液(酒石酸ナトリウムカリウム173 g と水酸化ナトリウム50 g を水500 mL に溶かす)の等量を使用直前に混合してつくる.銅(Ⅱ)イオンが錯化合物として溶けている深青色のアルカリ溶液で,これに還元糖を加えて煮沸すると Cuは還元されてCu2Oの赤色沈殿を生成する.還元速度は糖の種類によって異なるが,アルドース,ケトースともに反応する.反応は化学量論的ではないが,ヘキソース 1分子はだいたい5原子の銅を還元する.この試験の感度はだいたい糖液1 mL につきグルコース約0.01 mg である.生じたCu2Oは,重量法(アリーン法),定量法(ベルトラン法),比色法(ソモジ法)などによって定量される.また,この溶液はヘミセルロースなどの多糖と不溶性の銅錯体をつくるので,それらの精製にも利用される.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェーリング液」の意味・わかりやすい解説

フェーリング液
フェーリングえき
Fehling solution

ドイツの化学者 H.フェーリングによって考案された還元糖の検出・定量用試薬。A液 (硫酸銅結晶 69.3gを水に溶かし1lとしたもの) とB液 (ロシェル塩 346gとカセイソーダ 100gを水に溶かして1lとしたもの) の等量混合物で,還元糖溶液に加えて煮沸すると酸化銅 (I) の赤色沈殿を生じる。この沈殿を重量法,容量法,比色法などにより定量すれば,糖の量を求めることができる。ただし糖以外にもこの試薬を還元する有機化合物が種々あるので,糖に対する特異試薬ではない。

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百科事典マイペディア 「フェーリング液」の意味・わかりやすい解説

フェーリング液【フェーリングえき】

アルデヒドや還元性糖類(ブドウ糖,果糖など)の検出,定量に用いられる試薬。硫酸銅水溶液と,ロッシェル塩のアルカリ性水溶液を混合した濃青色の液をいう。還元性物質を加えて放置し,少し暖めると酸化第一銅Cu2Oの赤褐色沈殿を生ずる。
→関連項目アルデヒド

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栄養・生化学辞典 「フェーリング液」の解説

フェーリング液

 糖の検出や定量に用いる試薬.硫酸銅,酒石酸カリウムナトリウム,水酸化ナトリウムの混合液で,還元性の糖によって銅イオンが還元され,亜酸化銅になる反応を利用する.

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