銅の酸化数が異なる2種の酸化銅が存在する。
化学式Cu2O。赤色固体。赤銅鉱として天然に産出する。フェーリング液(2価銅イオンのアルカリ性酒石酸ナトリウムカリウム溶液)にグルコースを加えるとCuⅡが還元されてCu2Oが赤色沈殿する。この反応は鋭敏で,糖の検出に用いられる。結晶中では酸素の体心立方格子中に4個の銅が入っていて,酸素のまわりに4個の銅原子が正四面体に配位している。これは空隙の多い構造なので実際のCu2Oでは,格子が互いに入りくんだ構造をとっている。比重6.04(25℃),融点1235℃。水素ガスにより250℃以下で還元される。硫酸に溶かすと次のような不均化反応を起こす。
Cu2O+H2SO4─→CuⅡSO4+Cu(金属)+H2O
化学式CuO。黒色固体。天然には黒銅鉱として産出する。銅粉を空気または酸素中で加熱するか,硝酸銅(Ⅱ)Cu(NO3)2や水酸化銅(Ⅱ)Cu(OH)2を700℃で加熱分解すると得られる。ひずんだ塩化ナトリウム型構造。比重6.31,融点1026℃。水素または一酸化炭素中で加熱すると250℃以下で金属銅に還元される。また酸化した銅表面を400~500℃に加熱後エチルアルコール中に入れると還元して,きれいな銅表面が得られる。水に対する溶解度3×10⁻5g/l で難溶であるが,酸には溶けやすい。アルカリにもわずかながら溶ける。窯業およびガラス工業で,緑色や青色の着色剤に,また塗料,触媒にも用いられる。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
酸素と銅の化合物。酸化数ⅠおよびⅡの化合物が知られている。
(1)酸化銅(Ⅰ) 俗に亜酸化銅とよばれる。天然には赤銅鉱として産する。酢酸銅(Ⅱ)水溶液にヒドラジンを加えてつくるか、フェーリング溶液にブドウ糖を加えて温めてつくる。赤色結晶性粉末。乾燥空気中では安定であるが、湿気があると徐々に酸化されて酸化銅(Ⅱ)となる。1000℃以上では酸化銅(Ⅱ)よりも安定。1800℃以上で酸素を失う。水に不溶。塩酸、アンモニア水に溶けて無色の溶液となるが、空気に触れると酸化されて着色する。硫酸と温めると硫酸銅(Ⅱ)と金属銅に不均化する。ガラス、エナメルなどの赤色顔料、船底塗料などに用いられる。
(2)酸化銅(Ⅱ) 天然には黒銅鉱として産出する。水酸化銅(Ⅱ)、硝酸銅(Ⅱ)、塩基性炭酸銅(Ⅱ)などを強熱するか、銅線を空気中で赤熱すると得られる。水には不溶であるが、酸には溶ける。アンモニア水、塩化アンモニウムあるいはシアン化カリウム水溶液に可溶性錯塩をつくって溶ける。また水酸化アルカリ水溶液にも溶けて濃青色溶液となる。水素気流中で熱すると250℃以下で金属銅となる。緑青色顔料としてガラスなどに使われ、塗料としても用いられる。化学では元素分析用酸化剤として用いられる。
[中原勝儼]
酸化銅(Ⅱ)
CuO
式量 79.5
融点 1236℃
沸点 ―
比重 6.31
結晶系 立方
【Ⅰ】酸化銅(Ⅰ):Cu2O(143.09).亜酸化銅ともいう.天然には赤銅鉱として産出する.銅(Ⅱ)塩のアルカリ性水溶液を,ヒドラジンなどの還元剤で注意深く処理すると黄色の酸化銅(Ⅰ)が得られる.酸化銅(Ⅱ)を熱分解すると赤色の酸化銅(Ⅰ)が得られる.製法により,黄,橙,赤,暗褐色の酸化銅(Ⅰ)が得られるが,色の変化は結晶粒子の大きさの差による.融点1232 ℃.1800 ℃ 以上で分解する.密度5.88 g cm-3.水に不溶.希硫酸に溶けて硫酸銅(Ⅱ)と銅を生じる.アンモニア水および濃厚なハロゲン化水素酸HXを加えると[Cu(NH3)2]OHおよびH[CuX2]などの無色の錯塩をつくって溶ける.ハロゲン化水素酸が希薄なときは相当するハロゲン塩CuX2にかわる.水酸化アルカリ水溶液に可溶.整流器,赤色うわぐすり,殺菌剤,船底塗料などに用いられる.[CAS 1317-39-1]【Ⅱ】酸化銅(Ⅱ):CuO(79.55).天然には黒銅鉱として産出する.銅粉を過剰な酸素中で加熱酸化するか,硝酸銅(Ⅱ)または炭酸銅(Ⅱ)の熱分解で得られる.黒色の無定形粉末.無定形な酸化銅は多量の気体を吸着する性質がある.密度6.3~6.4 g cm-3.水に不溶.1000 ℃ 以上で酸化銅(Ⅰ)と酸素に解離する.250 ℃ で水素により還元される.強力な酸化剤で有機元素分析,ガス分析に用いられる.そのほか,触媒,顔料,窯業用うわぐすり,ガラス用着色剤,電子部品用材料などに用いられる.[CAS 1317-38-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…銅の酸化数が異なる2種の酸化銅が存在する。
[酸化銅(I)]
化学式Cu2O。…
…銅の酸化数が異なる2種の酸化銅が存在する。
[酸化銅(I)]
化学式Cu2O。…
※「酸化銅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新